「情報化による地域社会の変容と
新たな政治参加形式」
(「NIRA総合政策」1995年3月号所収)
スティーヴン・アンダー
ソン
(国際大学助教授、グローバル・コミュニケーション・センター研
究員)
木村 忠正
(グローバル・コミュニケーション・センター研
究員)
情報化と地域社会(community)概念の変化
日本語で「地域」といった場合、英語では、"local
area", "local
community", "rural area" などの概念が対応するであろ
う。ここで我々は、論
題を「地域社会」(community)に限定し、情報化
がアメリカのコミュニティ
ーにどのような影響を及ぼし、コミュニティ
ーのあり方を変えてきているかを、
政治参加の文脈で考えることにした
い。というのは、インターネット利用を中
心とした新たな情報革命の波
は、アメリカにおいては新たな政治への住民参加
を促すものとして活用
しようとする試み(新たな民主化)を引き起こし、民主
党・共和党といっ
た旧来の枠組みからの変革を指向しており、現在政治的混乱
期にある日
本の現状に何らかの示唆を与えてくれるのではないかと思うからで
あ
る。
歴史的に見て、血縁関係に基づく親族のネットワークと地縁
関係に基づくロ
ーカルネットワークが、人間が生活を営むコミュニティ
ーを構成してきた。し
かし、産業化に基づく生活様式の変化と、本質的
に産業社会において発達して
きた従来のマスメディア(テレビ・ラジオ
・新聞)及び大量輸送手段(mass
transportation)は上記の意味での地
域社会を大きく変容した。企業、公教育
などの諸制度は、地縁・血縁と
は別に、それぞれの組織における一種のコミュ
ニティーを形成し、日本
においてはこの第3のコミュニティーが人々の生活に
おいて主要な生活
領域を形成してきたといってよいであろう。しかし、産業社
会は大量生
産に基づく、規格化・標準化をその構成原理としており、上記の文
脈に
おける第3のコミュニティーは個人を組織に従属させる圧力として働く機
序を内包している。日本においてよく指摘される画一化・没個性化はある意
味
において、こうした社会の構成原理そのものに規定されている、必然
的帰結で
ある。更に、こうした側面はマスメディアによる大衆社会の成
立と深く結びつ
いている。これまでのマスメディアはチャンネル数も限
られていて、一方向的
であり、情報は標準化されている。マスメディア
の役割は、いかに多くの視聴
者に同一の情報を伝えるかにかかっていた
(視聴率が重要である)。それが
「文化的同時代性」や「トレンド」と
いうものを生み出し、上記の組織におけ
るコミュニティーは、マスメディ
アにより作り出される均一化された情報環境
空間に生息することとなっ
た。
従って、産業社会においては、大衆社会の成立、つまり、大
量生産、民主化
による一般的な生活水準の向上というプラスの側面があ
ると同時に、地縁・血
縁に基づく伝統的地域社会の崩壊と個人が社会に
組み込まれることによる非人
格化を促進するマイナスの面があることも
また否定できない。
現在、広く情報化・情報革命と呼ばれている
変化は、単に技術的変化にとど
まらず、こうした社会・文化の構成原理
そのものに対する、大きな歴史的変化
と認識すべきであると、筆者たち
は考える。現在進行しつつある情報ハイウェ
ー化・情報通信網の基盤整
備と通信技術の発達は、地理的な意味でのコミュニ
ティー(地縁・血縁
・組織いずれも)とは全く別のコミュニティーを形成しつ
つある。情報
通信網が遠隔地まで整備され、インターネットのようなコンピュ
ーター
・ネットワーク網が各個人にまで到達すれば、従来の「遠隔地」「地方」
という概念が、情報に関しては崩壊することになる。実際既にアメリカにお
い
ては、既存のテレビ・ラジオといった媒体も、ケーブル・テレビ、衛
星放送の
発達によって爆発的なチャンネル数の増加、ビデオ・オン・デ
マンドなど双方
向性の導入により、同一の情報の一方向的流れから、多
様な情報が個々人の必
要に応じて取捨選択できる状況へと移行してい
る。
こうした状況は更に、情報のデジタル化・シームレス化によ
りマルチ・メディ
アを現実のものとし、従来の、印刷物(本・新聞等)
・放送(broadcasting)
(テレビ・ラジオ)・通信(common carrier)(電
話・電報等通信回線を利用す
るもの)といった媒体による区別を、不要
のものとしつつある。
この「情報革命」は、通信技術の発達なし
にはありえない。一つは、マイク
ロ・プロセッサーの存在である。1971
年のIntelによるマイクロ・プロセッサ
ーの発明以降、バイトあたりのマ
イクロ・プロセッサーの価格は驚くべきこと
に、この24年間で、1000万
分の一にまで下がってきている。そして、我々が最
も関心を持っている
のが、インターネットである。日本においても、1994年は
「インターネッ
ト元年」と呼ぶにふさわしい急激なインターネットへの関心の
増大が見
られた。インターネットは、世界最初の真の意味で自律的(自己組織
的)
なグローバル・コンピューター・ネットワークである。現在インターネッ
トは爆発的な拡大を見せており、すでに世界の154カ国を結んでいる。イン
タ
ーネットのホストの数は1994年に350万個を越えたと推計されており、
このホ
ストを利用している人々の数は2000万人にのぼると考えられてい
る。
(注1)
インターネットの最大の特徴は「リモートログイン」と呼ば
れる、ほかのホス
トへのアクセス機能である。旧来のメインフレーム型
のネットワークは中央集
権的であり、それぞれのネットワーク・データ
ベースはよくいえば自己完結し
ていたが、否定的にいえば、いわば孤立
した島のような存在であった。それに
対して、インターネットはネット
ワークのネットワークであり、インターネッ
トによってつながれている
各ホストはいわば全体が広域分散型の巨大なネット
ワークの一部となっ
ているのである。従って、ユーザーは何百・何千ものデー
タベースを自
由に検索することが可能となる。しかも、インターネット経由の
アクセ
スは他の手段よりも安いか、無料で提供されていることも少なくない。
当面、このような世界的広がりを持つコンピュータ・ネットワークは、イン
タ
ーネットの他には存在しないだろう。
情報化と政治
こうした文明の変化は政治においても重要な変化を引き起こすであろう。
現
在アメリカのみならず、産業国すべてにおいて、政治に対する不信・
疎外感が
広がっているといってよいであろう。官僚組織・政府は硬直化
し、社会の急激
な変化に対応できていないと、多くの人々は感じとって
いるように思われる。
そうした既存の政治に対する不満が、例えば、前
回の大統領選挙における、直
接民主制を主張する勢力(Ross Perot
や"Strong Democracy"を唱えるRutgers
大教授のBenjamin Barberら)の
伸張に現れている。
アメリカの政治家たちの中には、こうした政
治システムを情報化によって積
極的に変革しようとする動きが存在して
いる。現在までの所、それは2つの方
向性を持っている。一つは、政府
・行政の活動に関する情報を公開しようとす
るものであり、今一つは、
市民からの電子通信手段を利用したフィードバック
を汲み上げようとす
るものである。中央政権的な行政機構・国家において市民
は上記のよう
に地域社会から切り放されつつあったのに対し、電子空間を利用
するこ
とで、新たな対話の場、議論の場、つまり新たなコミュニティーを作り
上げようとする試みである。こうした試みは日本においてもこれから真剣に
議
論されるべきであると筆者たちは主張したい。
情報公開
政府は、教育施設やインターネットを通じて利用可能な情報源
を、地方や遠
隔地に対して提供しようとしている。コミュニティーの基
盤整備の一つとして、
高等学校・大学教育機関に対しては予算が割り当
てられている。1960年代に既
に、大学は図書館と政府関連資料のための
施設を拡充した。教育機関はコンピュ
ーター・センターを設置し、蔵書
索引をオン・ライン化した。筆者の一人は、
ニューヨーク州立大バッファ
ロー校に留学したが、その際、図書館施設の充実
ぶりには目を見張らさ
れた。例えば、日本における最大規模の大学のシステム
に比べても、検
索設備、利用時間等の面で比較にならないほど進んでいるとい
わざるを
えなかった。こうした技術の蓄積が、地方・遠隔地にインターネット
を
導入し、マルチ・メディア化するのに向けての技術提供の基盤となってい
る
のである。
最も巨大な図書館・政府関連資料源が国会図書
館(Library of Congress)
である。周知のように、国会図書館は著作権
法の下にあるすべての著作物が納
められ、そのタイトルと著者名とが、
MARVEL(gopher://marvel.loc.gov/)
WWW
している。これは百数十の連邦政府機関の活動を
報告するBBSにアクセスでき
る物で、「電脳政府」といっても良いかもし
れない。ただし、このサービスは
非常に込み合っていてなかなか実際に
はアクセスできず、むしろ現在はインタ
ーネット経由で、FTPファイルの
サイトである"FedWorld FTP"
(ftp://ftp.fedworld.gov/)か、wwwのサ
イトである"FedWorld Home
Page"(http://www.fedworld.gov/)の方がはる
かにアクセスしやすい。また、
先ほど触れた、国会図書館のMARVELにあ
るgopherのサイト
(gopher://marvel.loc.gov:70/11/federal/fedinfo/byagency/general)
からも、各種政府関連の最新情報(発表から1日か2日後)が同様に無料
で入手可
能である。
このような手段を通して、アメリカ政府
はその活動を全米はおろか、全世界
のどこででも、入手可能にする努力
を続けているのである。
上記のようなアメリカ政府の情報公開・インターネット利用
の拡大は、もち
ろん副大統領ゴアが中心となって提唱している「情報ス
ーパーハイウエイ計画」
がその支柱である。そのハイウエー構想を推進
するために、インターネットな
どのパブリックなネットワーク・通信基
盤をアメリカ政府はNII(National
Information Infrastructure・全米情
報基盤)と呼び、NII推進のためにいくつ
かの委員会を設置している。中
心となっているのは、アメリカ商務省
(Department of Commerce) 内の
NTIA (National Telecommunications and
Information Administration/
全米情報通信局)である。
(編集者注:PFFに関
する文書を参照)
が、情報革命の旗手としてもまた
知られている。Gingrichは、1994年の選挙において、「アメリカ国民との契
約(Contract with America)」という文書を、"listserv"というシステムを使っ
て、何千・何万という有権者に電子メールで送付した。また、電子会議の機能
を使い、全米の共和党議員たちの討論会を行った。民主党はクリントン政権下
において、副大統領ゴアを中心に情報ハイウエー構想を推進しようとしている
にも関わらず、昨年の選挙では共和党こそがマルチ・メディアを巧みに利用し、
大規模な勝利を得たのである。Gingrichはまた、今年にはいってスタートした
Thomas(http://thomas.loc.gov)という議会通過
法案を数時間後にはオン・ラ
インでアクセスできるようにしたインター
ネット・サービスの実現にも大きく
貢献をしている。Gingrichは「自由
なアクセス(open access)」・「情報公
開(disclosure)」を前提とした、
情報環境の整備による新たな民主主義を模索
しているのであ
る。
マルチ・メディアの発展は候補者の選挙運動のあり方を大き
く変えるであろ
う。アメリカにおいてはこれまでテレビ広告を使った相
手陣営の批判がますま
すエスカレートしている。一方、日本では旧来然
とした「どぶ板選挙」と文字
情報のみの選挙広報活動がいまだ一般的で
ある。しかし、1992年の大統領選に
おけるRoss Perotによる表やグラフ
を駆使したプレゼンテーションが有る程度
の説得力を持ち、有権者を引
きつけたのと同様に、候補者は今後、いかにマル
チ・メディア環境を使
いこなし、有権者を説得するかが鍵となってくるであろ
う。というのは、
今後の技術革新、とりわけ個人のプライバシーと秘匿性とを
守るシステ
ムの開発により、有権者は候補者それぞれの主張を自宅に居ながら
にし
て入手し、比較検討、投票することができるようになり、もはや、街頭演
説や組織力に頼る時代ではなくなってくるからである。
1993年はおそらく、こうした文脈で、つまり、政治と
コンピューター・ネッ
トワークとの関係において、画期的な年であった
といってよいだろう。1993年
6月1日にホワイトハウスは次のような声明
を発表した。
Today, we are pleased to announce that for the
first time in history,
the White House will be connected to you
via electronic mail.
Electronic mail will bring the Presidency and
this administration
closer and make it more accessible to the
people.
(本日、歴史上初めて、ホワイトハウスが、皆さんと電子メ
ールによりつなが
ることをお知らせでき、うれしく思います。電子メー
ルにより、大統領府がよ
り皆さんの身近なものとなり、親しみやすくな
ることと思います)
この知らせと、
"president@white
house.gov"
"vice.president@whitehouse.gov"
という2つの電子メール
・アドレスは瞬く間に世界中を駆けめぐった。筆者の
一人が先日メール
を送ったところ次のような返信を電子メールで受けた。
Thank you for writing to President Clinton via electronic mail.
Since June 1993, whitehouse.gov has received over 400,000
messages from people all across the country.
Because so many of you write, the President cannot personally
review each message. The mail is read by White House
Correspondence staff. Your concerns, ideas, and suggestions
are carefully recorded and communicated to the President
weekly with a representative sampling of the mail.
(電子メールをクリントン大統領に送って下さりありがとうございます。
1993年6月以来、whitehouse.govは国中の人々から40万を越えるメッセージ
を受け取っています。
これだけ多くの皆さんからのメールが届くため、大統領自身は個人的にす
べてのメッセージを読むことはできません。メールは「ホワイトハウス通
信」のスタッフが読んでいます。皆さんの関心、考え、提案などは注意深く
記録され、代表的な意見のメールとともに毎週大統領に報告されています)さらにホワイトハウスは、1994年10月20日に、"Welcome to the White
House: An Interactive Citizens' Handbook"というインターネット上のサ
ー
バを立ち上げた。現在では、ホワイトハウスのみならず、多くの連邦
政府機関
がインターネットに接続し、内外の連絡にインターネットを利
用している。政
府機関一覧
(http://www.eit.com/web/www.servers/government.html)
によると、60
近いインターネットのサイトが登録されている。
このように、ア
メリカにおいては政治に対する市民の関心と参加とを促す試
みが真剣に
行われ始めている。情報通信技術の発達は新たなコミュニティーの
形成
と、新たな草の根ネットワークを生み出す契機を内包している。問題は、
政治が現状打開のためのヴィジョンを持ち、それを実現していくための手続
き
を立案することである。上記に見たアメリカの例は、20世紀後半に起
こった政
治的無関心を、画一的・中央集権的社会構造のあり方からの帰
結と考え、情報
社会の到来は、情報への自由なアクセスを保証すること
によって、中央・地方
の境界をなくし、真の主体的個人成立の好機とと
らえている。また、情報「革
命」と言ってよいほどの通信・情報技術の
革新の速さは旧来の中央集権的で巨
大な官僚機構によっては十分に対応
できる物ではないことも共和・民主党問わ
ず、広く認識され初めている。
それに対して、日本は未だ、先だっての「いじめ」にたいする学校という組
織の硬直化した対応、先の阪神大震災発生時の対応のまずさを見るまでもなく、
情報公開に抵抗し保身的であり、緊急時に柔 軟に対応する能力を著しく欠い
ている。しかし、こうした中央集権的手法は、日本における真の市民社会の発
展はもちろんのこと、情報技術の自然な発達もまた阻害し、既に大きく広がっ
ている日米格差はこれからますます広がることになるであろうと我々は予測する。
従って、政策立案者は
情報社会における新たなコミュニティーのあり方を支
援し、育てている
行政に変化する必要があるのではないだろうか。では、具体
的にどこか
ら手を着けるべきだろうか?この小論で見てきたとおり、アメリカ
は大
学を初めとする高等教育機関に財政的援助が与えられ、現在のマルチ・メ
ディア化の推進、情報ハイウエイの敷設に大きな役割を果たしている。更に
様
々な公的機関がデータベースを構築し、しかもそれを無料で、一般に
開放しよ
うとしている。それに対して、日本においてはこれまで、高等
教育機関や公的
機関はそうした機能を果たしてこなかった。中央集権化
した官庁が主導するの
でなく、地域に根ざした高等教育機関がもっと積
極的な役割を果たしていける
よう環境を整備することがまず重要であろ
う。
おそらくアメリカにおいては、近い将来、地理
的な意味における地域社会は
もちろんのこと、組織としてのコミュニティ
ー、さらには電子化された空間に
おけるコミュニティー、そのいずれに
おいても、インターネットを中心とした
情報通信網が整備されるであろ
う。それは、上述のように、単に技術上の変化
ではなく、大きな社会文
化的変化であり、政治に関しても大きな意味を持って
いるに違いない。
しかし、まず、どのような変化が望ましいかに関して2つの
対立する立
場が存在する。
先の中間選挙において上下院を共和党は握った。
共和党は
1)政府が間違った方向に向かってきている
2)政府の政策がうまく機能していない
3)政府の負の影響をなくせば、より強い家族の絆、地域社会の活性化が生じ
る
と考え、減税、社会
福祉の削減、政府による規制の緩和については一致してい
る。しかし、
こうした目標をどう達成するかについては議論が分かれる。
Fordice知事、
Dick Armey下院議員によって代表される立場は、民主党主導の
「大きな
政府」「福祉国家」を解体すれば、古きよきアメリカが再興されると
い
う考えている。
それに対して、Newt Gingrichにより代表されるの
は、そうした昔に戻ると
いう反革命ではなく、効率的な高度技術社会へ
の革命を唱える。とりわけ、こ
の後者の立場の保守派は、高度情報化社
会においては、個々人が制度に対して
より大きな権力を得ると思われる
ことに魅力を感じている。先に紹介した
Gingrichの情報公開や電子会議
の試みは、新たな市民社会設立に向け、積極的
に電子情報化を取り入れ
ようとする試みである。
従って、民主・共和両党において、懐古
主義的なグループと、情報化推進の
グループとの間で少しずつ対立が顕
在化しており、従来の枠組みを超えた「新
たな連合(a new coalition)」
という概念が提唱されてきてもいる。
情報革命推進派にとっての
大きな課題は、「自由に国民誰もがアクセスでき
る」(open access and
universal access)ことをどのように達成するかであ
る。もしも、イン
ターネットが電話のような通信手段("common carrier")に
なるとすれ
ば、どのようにして末端機器をすべての人が手に入れることができ
るの
か。光ファイバーや異なる規格を持つネットワーク相互を接続するための
ルーターなどはまだ高価であり、ソフト開発の規格もまだ発展の途中であ
る。
この側面から言えば、アメリカに比べ国土が比較的狭く、インター
ネット利用
において後発であるが故に、日本は情報化の恩恵を社会全体
に再分配しやすい
かもしれない。しかし、そのためには日本の社会その
ものが自らを変革してい
かなければならないであろう。
注1
ある極端な推計によれば、現在の速度で利用者が拡大すれば、2001年に
はインターネットの利用者数は地球の人口を上回ることになる。インター
ネッ
ト協会、1994年。またインターネットとは何かに関してはすでに多
くの入門書
が出版されているのでそれらを参照されたい。例えば、月刊
マックライフ編
「インターネットの世界」BNN(1994)。
注2・3
インターネット上で情報を検索するためのツールが、Gopher,
WWW(World Wide Web), ftp(file transfer protocol)といったものである。
こ
の中でWWWが最も進んだ規格である。これまでのところハイパーテキス
トとい
うソフトウエアが、文字だけでなく、絵・表・画像・音声等マル
チ・メディア
に欠かせない各種の情報を統一的にアクセスする方法と考
えられている。WWW
はそうしたハイパーテキストをサポートするシステム
で、現在のインターネッ
トでは主流となっている。
WWWのデー
タを扱うために設計された、ハイパーテキスト・ビュアーである
Mosaic
ファミリー(上で述べたNetScapeはこの一族)は非常に強力である。
X-Windowが作動しているUnix用、PC上のWindows用、Mac用とそれぞれに、
Mosaicは用意されている。ハイパーテキストは現在、テキストのみならず、画
像、音声、ビデオクリップなど、コンピューターが扱うあらゆる種類の情報を
取り扱うことができるようになっている。本稿の著者達は現在、学校法人国際
大学グローバル・コミュニケーション・センターで、このWWWを使ったプロジェ
クトを担当している。グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)
は情報社会、情報産業やこれに関連する各国の政策に焦点をあてながら研究を
行っている。また当研究所は国際社会に向けて情報発信を行い、日本の政府・
産業界に積極的な政策提言を行っている。人文・社会科学系の研究機関として
は、日本で最初に独自にインターネットに接続し、現在、研究員十数名の規模
でありながら、保有するインターネットの「太さ(帯域)」は、かなり大きな
大学一校分に匹敵する環境になっている。(もっとも将来、情報スーパーハイ
ウェーが真の姿を現した暁には、この程度の帯域――具体的には768k――は、
一人分の使用量にも満たないであろう。
注4
参考までに
NTIA NII Officeの住所等は、15th Street and Constitution
Avenue, Washington, D.C. 20230
Fax. 202-482-1840
E-mail
nii@ntia.doc.gov
(参照文献)
公文俊平 1994 「アメリカの
情報革命」 NECクリエイティブ