最近のわれわれの主要な成果を簡潔にまとめると以下の通りである。
時間変動するシンクロトロンX線放射の発見
チャンドラ衛星による超新星残骸のX線観測により、シンクロトロンX線の年スケールでの時間変動という、それまでの常識を覆す新現象を発見した(Uchiyama et al. 2007; Uchiyama & Aharonian 2008)。
この現象は衝撃波統計加速に伴う乱流磁場の増幅で説明が可能であり、関連する理論研究の発展を促すことになった。
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"Extremely Fast Acceleration of Cosmic Rays in a Supernova Remnant"
Uchiyama, Y.,
Aharonian, F. A., Tanaka, T., Takahashi, T., Maeda, Y.
Nature, 449, 576-578, 2007
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"Fast Variability of Nonthermal X-ray Emission in Cassiopeia A:
Proving Electron Acceleration in Reverse-shocked Ejecta"
Uchiyama, Y.,
& Aharonian, F. A.
The Astrophysical Journal, 677, L105-L108, 2008
超新星残骸からのGeVガンマ線の発見
フェルミガンマ線宇宙望遠鏡による観測で、超新星残骸からのGeVガンマ線を初めて明確に検出し、様々なタイプの超新星残骸からのガンマ線検出を報告した (Fermi-LAT Collaboration 2009,2010,2011)。内山は国際フェルミチームの「超新星残骸グループ」のリーダーを務めている。「分子雲と相互作用する超新星残骸」が高いガンマ線光度をもち、ガンマ線スペクトルは数GeVのエネルギー付近から「柔らかく」なること(=エネルギーが高くなると放射強度がより急激に弱くなること)がわかった。また、カシオペアAのような若い超新星残骸において、超新星爆発の運動エネルギーの数パーセントが、宇宙線のエネルギーに移行していることを示した。
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"Observations of the Young Supernova Remnant RX J1713.7-3946 with the Fermi Large Area Telescope"
The Fermi-LAT Collaboration
(including Uchiyama, Y. as a corresponding author)
The Astrophysical Journal, 734, 28, 2011
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"Fermi-LAT Discovery of GeV Gamma-ray Emission from the Young Supernova Remnant Cassiopeia A"
The Fermi-LAT Collaboration
(including Uchiyama, Y. as a corresponding author)
The Astrophysical Journal, 710, L92-L97, Feb 2010
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"Fermi-LAT Discovery of Extended Gamma-ray Emission in the Direction of Supernova Remnant W51C"
The Fermi-LAT Collaboration
(including Uchiyama, Y., as a corresponding author)
The Astrophysical Journal, 706, L1-L6, 2009
超新星残骸からのパイ中間子崩壊ガンマ線放射の同定
宇宙線の主成分である陽子に起因するガンマ線放射(中性パイ中間子崩壊ガンマ線)は、パイ中間子の質量を反映した特徴的なスペクトルを持つ。われわれは、最もガンマ線光度が高い「分子雲と相互作用している超新星残骸」のスペクトルが
そのような特徴的なスペクトルを持つことを示した (Fermi-LAT Collaboration 2013)。これは宇宙線の起源が超新星残骸であることの重要な証拠の一つとなった。
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"Detection of the Characteristic Pion-Decay Signature in Supernova Remnants"
The Fermi-LAT Collaboration
(including Uchiyama, Y. as a corresponding author)
Science, 339, 807, 2013
超新星残骸からのガンマ線放射モデル(Crushed Cloud model)の提唱
R. Blandford とL. Cowie が1980年代に提唱したモデルを発展させ、分子雲と相互作用する超新星残骸からの予想外に強いGeVガンマ線放射を説明する理論モデルを提唱した (Uchiyama, Blandford et al. 2010)。これは、分子雲中に伝播する衝撃波において、放射冷却の効果により宇宙線が磁場とともに強く圧縮されることで、ガンマ線光度が高くなるというモデルであり、「Crushed Cloud model」と呼ばれるようになっている。
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"Gamma-ray Emission from Crushed Clouds in Supernova Remnants"
Uchiyama, Y., Blandford, R., Funk, S., Tajima, H., Tanaka, T.
The Astrophysical Journal, 723, L122-L126, 2010
超新星残骸の周囲の宇宙線ハローを発見
フェルミ衛星による超新星残骸W44の観測から、衝撃波から脱出した宇宙線が作る「宇宙線ハロー」を、超新星残骸の周囲にはじめて明確に捉えることに成功した (Uchiyama et al. 2012)。衝撃波加速の機構において本質的な役割を果たす、宇宙線の脱出過程の研究が可能になり、加速された宇宙線の総量や星間空間の拡散係数を推定できることを示した。
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"Fermi-LAT Discovery of GeV Gamma-ray Emission from the Vicinity of SNR W44"
Uchiyama, Y., Funk, S., Katagiri, H., Katsuta, J., Lemoine-Gourmard, M., Tajima, H., Tanaka, T., Torres, D.
The Astrophysical Journal, 749, L35, 2012
活動銀河核の相対論的ジェット
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銀河宇宙線起源の標準パラダイムとして超新星残骸におけるフェルミ加速が確立されつつある一方、
銀河系外から来る宇宙線の起源についてはまだほとんどわかっていない。ガンマ線バーストや銀河団衝撃波と並び、
銀河の中心に鎮座する超重ブラックホールが射出する相対論的ジェットは、銀河系外の宇宙線源の重要な候補である。特に母銀河を超えるスケールの大規模ジェットは、超高エネルギーに粒子を加速できる可能性がある。われわれはハッブル宇宙望遠鏡(可視光), チャンドラ衛星(X線), スピッツァー宇宙望遠鏡(赤外線) を駆使して、活動銀河核の大規模ジェットの多波長撮像観測を行った(Uchiyama et al. 2005,2006,2007)。下図にクェーサー3C273のジェットの観測結果を示す。
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この一連の研究では、クェーサージェットを赤外線で撮像することにはじめて成功した。また多波長スペクトルが2成分を持ち、その2成分ともシンクロトロン放射であるとする考えを提示した。
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"An Infrared Study of the Large-scale Jet in Quasar PKS 1136-135"
Uchiyama, Y.,
Urry, C. M., Coppi, P., Van Duyne, J., Cheung, C. C., Sambruna, R. M., Takahashi, T., Tavecchio, F., Maraschi, L.
The Astrophysical Journal, 661, 719-727, 2007
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"Shedding New Light on the 3C 273 Jet with the Spitzer Space Telescope"
Uchiyama, Y.,
Urry, C. M., Cheung, C. C., Jester, S., Van Duyne, J., Coppi, P., Sambruna, R. M., Takahashi, T., Tavecchio, F., Maraschi, L.
The Astrophysical Journal, 648, 910-921, 2006
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"Spitzer IRAC Imaging of the Relativistic Jet from Superluminal
Quasar PKS 0637-752"
Uchiyama, Y.,
Urry, C. M., Van Duyne, J., Cheung, C. C., Sambruna, R. M., Takahashi, T., Tavecchio, F., Maraschi, L.
The Astrophysical Journal, 631, L113-L116, 2005
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