理学部化学科 研究室紹介冊子2021
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8応答性液晶ブロック共重合体によるミクロ相分離構造の光配向技術を確立しています。フォトクロミック分子であるアゾベンゼンは、直線偏光の電場面からから逃げるように垂直方向に分子配向変化を起こします(Weigert効果)。この分子配向変化と液晶性の自発的な高い配向秩序とを組み合わせると、高効率に光配向変化するフォトクロミック液晶システムが構築できます。液晶性アゾベンゼン高分子鎖を持つブロック共重合体を分子設計することで、偏光照射によるミクロ相分離シリンダー構造の三次元的な光配向制御を世界に先駆けて達成しました。[Adv. Mater, 18, 883 (2006), Chem. Mater., 19, 1540 (2007)]これらの成果は、従来法のフォトリソグラフィーによる方法とは異なり、分子の自発的な自己集合構造と自己組織化によりミクロ相分離構造の三次元的な配向制御を行うもので、新たな微細加工技術として期待されます。また、最近では,光応答性液晶の液晶温度にて直線偏光の向きを変えるだけでミクロ相分離構造がアクティブに動く分子システムにも展開し、従来の静的なナノ構造から“アクティブ”に動くナノ構造へ、リソグラフィーの概念にとどまらない新たなデバイス材料へ発展するものと期待しています。[Angew. Chem. Int. ed, 51, 5884 (2012), Macromolecules, 47, 7178-7186 (2014)]■研究背景“ソフトマテリアル”は、高分子、液晶物質(サーモトロピック液晶、リオトロピック液晶)、ゲル、コロイドなど、柔らかい物質の総称です。生体は、いわば水を含む液晶分子の集合体がダイナミックに動くことで、情報伝達や動力発現を行っています。また、液晶表示デバイスは、液晶分子が電界(外部刺激)に応答し、協同的な分子配向変化によって光機能を生み出しています。当グループでは、このような高分子や液晶物質をはじめとするソフトマテリアルに、分子配向技術を駆使することで、新たな機能を創出していくことを目指しています。有機分子や高分子を合成し(synthesis)、集め(assemble)・並べ(align or orient)、組織化(organize)し、機能(function)を作っていく研究を進め、学生の一人一人が、合成→組織化→構造解析→機能評価といった材料研究の「ひととおり」をデザインし、一貫して経験しながら研究を遂行します。分子集合体が、“並び”・“動く”ことによって発現する機能を、おもに“光”によって動くフォトクロミック分子を駆動力として設計します。ソフトマテリアルを分子(ナノスコピック)レベルからより大きな(メゾスコピック)レベルへの組織化・階層化やハイブリッド化を通じて機能を増幅、新たな機能を創発します。■ブロック共重合体のミクロ相分離 構造を光で並べる、動かすナノオーダーの規則構造を分子レベルから造り込み,自己集合と自己組織化を融合して配列・配向する研究が活発に行われています。たがいに混ざり合わない二つ以上の高分子鎖を繋げたブロック共重合体は、高分子鎖レベル(数十ナノメートル)の規則的な相分離構造(ミクロ相分離構造)を形成します。このミクロ相分離構造は、ブロック共重合体の鎖長と体積分率により界面活性剤に似たラメラ、シリンダー、スフィア構造をとることが知られています。近年、高額な設備が必要なナノリソグラフィー技術に替わる微細加工技術として、このミクロ相分離構造を配列・配向する技術が盛り上がりを見せています。我々の研究グループでは、偏光照射によりミクロ相分離構造を配列・配向する技術の開発に取り組み、光永野研究室Nagano Laboratory

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