理学部化学科 研究室紹介冊子2021
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15最近では、コンピュータを使った計算化学の研究は、実験系の研究室でも小型の計算サーバを使って行われています。これは、方法論やプログラムの改良と共にCPUの高速化・多コア化などが進んできているためです。計算によって、化学反応の機構を考察したり、スペクトルの解釈を手軽に行える環境が整ってきたということです。一方で、私たちのように理論専門の研究室では応用計算だけでなく、プログラムや方法論を自ら開発し、スーパーコンピュータを使って先導的な大規模計算を行うことが可能です。最新のスーパーコンピュータ「富岳」を用いた新型コロナウイルスのタンパク質に関するFMO計算も行っています。計算化学では、物理学や数学、あるいは情報科学的な素養が必要になる場合もあります。応用計算では、薬学や生化学の知識が求められることもあります。一方で、機械学習を活かした研究では、化学の枠に拘らないケースも出てきています。幅広い分野の勉強をして総合的な力を身につけておくと、楽しく有意義な研究活動が行えるはずです。構成メンバー学部4年次生:8名 博士前期課程1年次生:1名 博士前期課程2年次生:1名卒業生の進路IT関係、商社、高校教員、計算化学ベンチャー企業、大学院進学from labo.(上図)従来型のフラグメント分割は上段のようにペプチド結合ではなく1つ横の箇所で行ってきましたが、新しく開発した技法では下段のように直截にペプチド結合で分割が可能です。[J.Comp.Chem.41 (2020)1416.](上図)古典分子動力学シミュレーションによって多数の構造サンプルを生成し、FMO計算を一括して行うことで相互作用解析に統計的な尺度を導入することが可能となっています。[Chem.Comm.55(2019)2015.](上図)FMO計算によって算定された有効相互作用パラメータを使った粗視化シミュレーションによって再現されたメゾスケールの脂質膜の構造で、膜面積や厚みは実験値を再現しています。[Chem.Phys.Lett.684(2017)427.]

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