理学部化学科 研究室紹介冊子2021
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18望みの光学異性体のみを選択的に合成する不斉分子触媒を合理的に開発していくためには、“立体選択性の原因は何か?”という疑問を明らかにすることが重要です。近年では、反応の本質を捉えたモデル系から実験結果の解析に不可欠な置換基や溶媒を考慮した大規模な実在系まで、より精密に量子化学計算を行うことが可能です。他大学との共同研究により、様々な不斉分子触媒反応について、量子化学計算を用いて反応機構の詳細から立体選択性の原因までを解明しています。■量子化学計算による反応解析境調和型技術として、不斉合成における重要な戦略の一つとなっています。一方、近年の計算機の進歩によって、実際に扱っている分子や化学反応に対して量子化学計算を行い、その構造や特性、反応機構や立体制御機構を予測、解析することが可能な時代になりました。「不斉分子触媒」は、用途に応じて高度に機能化された分子性の触媒として設計・開発することが求められるため、本研究室では、実験と理論計算の両面から現代の不斉合成の要請に応える不斉分子触媒の開発に取り組んでいます。量子化学計算を積極的に活用することで、これまで経験に支配されてきた触媒設計を理論的設計へとシフトさせ、分子レベルでの理解に基づいて新しい不斉分子触媒の発想を生み出し、具現化することを目標にして日々精進しています。■研究背景有機合成化学が抱える今も昔も変わらない課題は、不要な廃棄物を抑えて欲しい物だけを作ることです。特に、一方の光学異性体のみを効率よく生産する不斉合成は、医薬品や農薬などの開発において根幹となる重要な技術です。その中でも「不斉分子触媒」は、極僅かな量を用いるだけで様々な化学反応を促進させて有用な光学異性体のみを生産できるため、現代社会から要請される省資源かつ環Yamanaka Laboratory山中研究室

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