理学部化学科 研究室紹介冊子2021
8/32

6■研究背景有機色素や超分子錯体、金属クラスター、有機・無機ナノ結晶などのナノ物質の電子励起状態(励起子)は、自然界では光合成や生物発光で重要な役割を果たしており、我々の暮らしの中では、発光素子やレーザーなどのオプトエレクトロニクス、太陽電池や光触媒などの光電変換デバイスにおいて活用されつつあります。当研究室では、このような光科学技術において重要なナノ物質群を研究対象とし、それらの光物性や励起状態(励起子)ダイナミクスに対する理解を深化させ、ナノ物質を通じた光の効率的活用に資することを目指しています。優れた光物性・光機能性を示すナノ物質およびそれらの集合体の合成(Make)・計測(Measure)・理論解析(Model)の3Mアプローチに基づいて研究を推進しています。■3Mアプローチ“ナノ物質合成”では、望みの光物性や構造を有する有機・無機ナノ結晶や金属クラスターの液相合成に取り組んでいます。光機能性有機色素の合成開発では、他大学の研究室との共同研究を積極的に推進しています。また、合成開発したナノ物質を構成要素とした太陽電池、フォトンアップコンバージョン素子、電界発光素子などのオプトエレクトロニクスデバイスの作製にも取り組んでいます。6“ナノ物質計測”では、当研究室で独自に開発したレーザー走査光電流-発光顕微計測装置を用いて,空間分解イメージングや1分子(1粒子)レベルの分光計測を行っています。ナノ物質系では、サイズや組成・構造(形状)によって物性が大きく異なることがしばしばあるため、このような集団平均を排除した極限的な分析手法の適用が有効になります。また、自分たちが行いたい計測を自らの手で実現するための装置改良・開発も随時行っています。1個の分子は、物質量にするとたったの1.66×10-24mol(1.66ヨクトモル)しかありません。すなわち、1分子を観測するためには極めて高感度な計測法を用いることが必要です。現在、その最もポピュラーなものとなっているのが、光子検出によって1分子を観測する単一分子蛍光分光法(SMFS;Single-MoleculeFluorescenceSpectroscopy)です。この方法では、1個の分子に光を照射し続け、1分子から次々と放出される1個1個の光子を時系列も含めて精密計測します。当研究室で開発したレーザー走査顕微蛍光分光装置では、実に13ケタ(数百ピコ秒〜数百秒)に及ぶ幅広い時間スケールで起こる単一分子の挙動を明らかにすることができます。三井研究室Mitsui Laboratory

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る