子薄膜中にて表面張力の低い高分子が自発的に空気界面(表面)に偏析する性質(表面偏析)を用い、光液晶配向性を持つ高分子化合物を液晶性高分子に添加、加熱するだけで、液晶光配向が可能となるプロセスを開発しました。空気界面に形成される光配向性高分子層への偏光照射により、液晶分子を自由な方向に光配向、書き換えが可能であり、塗るだけで液晶光配向デバイスとなります。運動性が高く、低表面張力のポリ(ブチルメタクリレート)と光応答性分子であるアゾベンゼン基を持つ高分子からなるブロック共重合体(PBMA-b-PAz)を合成し、これを光応答性のない液晶性高分子に数パーセント添加した膜を用意しました。この添加膜を液晶性高分子の等方点温度の約120℃に加熱処理を行うと、PBMA-b-PAzのPBMA層が選択的に表面に偏析し、空気界面を覆います(スキン層)。液晶性高分子の単独膜では、液晶基は基板に対して垂直に配向(ホメオトロピック配向)しますが、興味深いことに、添加膜では水平配向(ランダムプレーナー配向)することが明らかとなりました。この添加膜に直線偏光を照射すると、アゾベンゼンの偏光応答性により液晶高分子の面内一軸配向を任意に制御でき、様々な描画が可能となります。また、このスキン層の形成は、インクジェット印刷を用いても行うことができます。高分子液晶膜にPBMA-b-PAzをインクジェット技術によりオーバーコートし、高分子液晶の液晶温度にて偏光を照射すると、塗布部のみ液晶の面内一軸配向を誘起でき、様々な描画が可能です(富士山を描いた図)。本技術によって、固体基板への配向処理は一切必要とせず、塗るだけで液晶光配向が可能となります。湾曲した部分や様々な基板に塗るだけで液晶配向が可能であり、「液晶配向インク」と呼べるプロセスを提案しました。[Nat. Commun., 5, 5124(1-8) (2014)]9from labo. 高分子の熱伝導性、導電性高分子のネットワーク構造、高分子ブレンドによる高秩序液晶相の発現、イオン伝導異方性の分子配向による誘起、学生たちが頑張って、どんどん新しい結果が生まれています。分子の一つ一つは非力であっても、正しく集まり、階層的なふるまいにより、筋肉のような大きな力が発揮されます。分子の集合状態を取り扱うソフトマテリアル分野は新しい学問分野であり、研究室では、合成、集合構造構築、構造解析、機能評価のすべてを駆使し、学びながら新しい分子階層機能の発現を目指します。研究も、チームで一緒に取り組むことで大きな力が生まれます。ぜひ一緒に研究しましょう。構成メンバー博士課程前期課程:7名 学部4年生:7名 学部3年生:3名卒業生の進路 MSE、NTT データ、京セラ、住友化学、セントラル硝子、デクセリアルズ、東京応化工業、トクヤマ、ナハト、 日本ゼオン、本田技研工業、リクルート、大学院進学(立教大、東工大)■まとめ紹介した光配向システムを利用し、現在は、次世代誘導自己集合材料やプロトン伝導、熱伝導を制御する分子システムに展開しています。ソフトマテリアルの協同的なふるまいを設計、機能化することにより、生体系にて行われている優れた分子機能を人工的なアプローチにより実現することを目指します。
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