理学部化学科 研究室紹介冊子2024
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Matsushita Laboratoryこのような視点のもと、光、温度、溶媒、ガス、pHなどの外部刺激に応答して起こる、配位構造変化、配位子場変化を介して、電子物性変化を示す遷移金属錯体を探求しています。このような外部刺激応答物質は、センサー材料や情報ストレージ材料の基礎研究に資するものとして興味が持たれます。また、金属錯体をベースにした分子間相互作用のある物質の構築と構造・物性相関の解明も目指しています。この研究では、分子間相互作用が配位構造や配位子場に対する摂動場として作用し、構成化学種にはなかった新たな物性が発現されることを期待しています。①ベイポクロミック銅錯体さらした有機溶媒ガスによって色が変化する銅錯体で、アセトン蒸気にさらすと赤紫色になり、メタノール蒸気にさらすと青色、酢酸ブチル蒸気では橙色になります。非常に珍しい三色系ベイポクロミック物質です。有機溶媒分子が交換することにより、配位構造が変化することに伴って色が変わります。現在はその有機溶媒分子交換の機構について調べています。②単結晶フォトクロミック白金錯体無色の白金錯体単結晶に蛍光灯などのような室内灯程度の弱い可視光、あるいは、弱い紫外光を照射すると青色に変化します。白金錯体は通常青色を示さず、大変珍しい色を呈していることになります。他の多くの光異性化によるフォトクロミック物質とは異なり、光照射により着色した青色相の正体が明らかになっておらず、明らかにすべく探求中です。③エレクトロクロミック酸化還元活性配位子白金錯体金属錯体が錯形成を保ったまま酸化還元反応を起こす場合、通常金属イオンのみ酸化数が変化します。しかし、酸化還元活性配位子と呼ばれている配位子から成る金属錯体は、錯形成を保ったまま配位子部分が化学構造を変えず酸化還元を担い、非常に特異です。このような金属錯体では、電気化学的手法などで電子を出入りさせると分子構造・配位構造を変化させることなく電子状態が変化し、色変化が起こります。研究室では、写真のようなエレクトロクロミ22■研究背景遷移金属錯体は、中心にある金属原子やイオンに、配位子(主として有機分子)がまわりから結合してできている化合物です。まわりが有機分子で有機的側面もあれば、中心が金属元素で無機的側面もあり、有機-無機ハイブリッドな性質を持ち合わせているといった特徴があります。このような遷移金属錯体では、配位子が中心金属につくる配位子場によって電子物性が支配されています。配位子場は配位構造に依存しますので、配位構造と物性の相関が非常に高い物質群であるということができます。■クロモトロピック金属錯体の 創出と機構解明光、温度、溶媒、ガス、pHなどの外部刺激に応答して色が可逆的に変化する現象をクロモトロピズムといいますが、その現象を示す金属錯体を創出し、発現機構を解明し、化学構造と物性の相関解明を目指しています。松下研究室

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