最近では、コンピュータを使った計算化学の研究は、実験系の研究室でも小型の計算サーバを使って行われています。これは、方法論やプログラムの改良と共にCPUの高速化・多コア化などが進んできているためです。計算によって、化学反応の機構を考察したり、スペクトルの解釈を手軽に行える環境が整ってきたということです。一方で、私たちのように理論専門の研究室では応用計算だけでなく、プログラムや方法論を自ら開発し、スーパーコンピュータを使って先導的な大規模計算を行うことが可能です。スーパーコンピュータ「富岳」を用い、様々なタンパク質の(MD由来の)多構造サンプルに対する一括FMO計算に基づく統計的な相互作用解析を行っています。計算化学では、物理学や数学、あるいは情報科学的な素養が必要になる場合もあります。応用計算では、薬学や生化学の知識が求められることもあります。一方で、機械学習を活かした研究では、化学の枠に拘らないケースも出てきています。幅広い分野の勉強をして総合的な力を身につけておくと、楽しく有意義な研究活動が行えるはずです。構成メンバー 学部4年次生:7名 博士課程前期課程1年次生:2名 博士課程前期課程2年次生:2名卒業生の進路 IT関係、商社、高校教員、大学院進学(上図)スタックした塩基対のモデル[J. Comp. Chem. 45 (2024) 898.]では、水素結合の安定化エネルギーの過大評価がFMO相互作用解析での問題でしたが、静電ポテンシャル再現型のRESP電荷を用いて、これをクリアしました。(上図) 古典分子動力学(MD)シミュレーションによって多数の構造サンプルを生成し、FMO計算を一括して行うことで相互作用解析に統計的な尺度を導入することが可能となっています。[Chem. Comm. 60 (2024) 4769.](上図) 実験を再現するような混合脂質の相分離シミュレーションがFMO由来の有効パラメータを使って可能となっています。[Appl. Phys. Expr. 17 (2024) 055001.]15from labo.
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