Ohtawa Laboratory■研究背景■天然物の全合成研究天然有機化合物(天然物)とは、植物や動物、微生物などが生命活動の過程で作り出す有機分子の総称です。その種類は非常に多岐にわたり、それぞれがユニークな生物活性や構造と機能を持っています。例えば、植物が作り出すアルカロイドには薬効を持つものが多く、医薬品として利用されています。また、花の香り成分であるテルペンや、色素であるフラボノイドなども天然物です。このように私たちの身の回りには天然物が溢れており、医薬品、香料、色素、食品など、私たちの生活に深く関わっています。一方、有機化学が介する天然物研究は、単離・構造決定から全合成研究、創薬研究、ケミカルバイオロジーまで多岐にわたります。これらの研究を通じて、新規反応の発見など有機化学に新たな知見をもたらすことも少なくありません。まさに有機化学と天然物は、互いの可能性を最大限に引き出し合っていると言えるでしょう。当研究室では、この天然物を基盤とし、有機合成化学という強力なツールを駆使することで、全合成研究、創薬研究、新規反応開発研究など、幅広い研究を展開しています。 28全合成研究とは、より単純な市販の化合物から人工的に有機分子を合成する研究をいいます。私達が全合成の標的とする医薬品候補となるような有用な天然物は、自然界からの供給が限られていることがあります。そこで、全合成的手法により希少な天然物を安定して供給するだけでなく、その構造や機能を詳細に理解し、さらに優れた性質を持つ類縁化合物を創出することを目指します。しかしながら全合成を達成するには、高度な有機合成化学の知識と技術が求められ、大変挑戦的な研究分野です。当研究室では、「シンプルな反応で、複雑な分子を超効率的につくる」をキーワードとし、従来の常識にとらわれない独創的な全合成経路の構築を目指しています。これにより、これまで合成が困難であった分子や、より環境に優しい合成法の開発にも貢献します。そして全合成研究を通して、論理的思考力、問題解決能力、そして高度な実験技術を習得してもらいたいと考えています。オリジナルの新規環化反応を駆使した、天然物 「Habiterpenol」の効率的全合成。簡単な原料からわずか11-12工程で天然物の全合成が達成されました。(Org. Biomol. Chem. Chem.2023, 21, 6239.)大多和研究室
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