福祉サービス
分析法

第9回

質的データの分析 (2) ピボットテーブルを活用してクロス集計をしよう

今回のテーマ
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 高齢者対象のアンケート調査から、介護が必要になったとき高齢者はどこで介護受けたいと望んでいるかを知りたいと思う。そして、そうした希望は、男女や年齢や健康状態の違いと関連があるかどうかを分析してみたい。2つの変数の関連を調べるにはクロス集計を行う必要がある。しかし、関数を使ってクロス集計を行うのは面倒である。その代わりに、とても便利なExcelの機能である「ピボットテーブル」を活用する。

 クロス集計

自分でやってみよう

 

elderly.xls

ボットテーブルの活用

 男女別に「介護を受けたい場所」の回答を集計せよ。

手順は次のとおり

@ 高齢者調査のデータが入力されたワークシートを開き、図1のとおり、Excelコマンドの「データ」のプルダウンメニューから「ピボットテーブル」をクリックする。

図1 ピボットテーブルの起動


A ピボットテーブルのウィザードが起動され、使用するデータの範囲を聞いてくる。データはB列第2(B2)からG列第1306(G1306)まで入力されているが、ここでの範囲は項目名のある場所である第1行目から指定する。また、セルの場所指定には列や行の前に$をつける。したがって、「$B$1:$H$1306」がデータ範囲となる。$は絶対参照のことである。普通は相対参照になっていて、数式をコピーするとセルを移動した分だけデータの場所が変わってくれる。しかし、今回の場合、集計対象となるデータの場所が変わってしまうと具合がわるいので$をつけて動かないようにする。

B ウィザードからの質問がいくつか続いた後、の画面が現れる。行(表側)に「性別」、列(表頭)に「介護希望」のボタンをドラッグする。これだけでは、集計は始まらない。集計結果の現れる場所である「データアイテム」のところに「介護希望」ボタンをドラッグする。するとのように集計結果が即座に現れる。
このとき、A3のセルをクリックして、「データの個数」を選ぶのをわすれないこと。

    2 クロス集計の準備完了、集計したい項目名を行列にドラッグする

クロス集計結果


C
最後に、パーセントを計算する。
 をみると「介護希望」の2番のカテゴリーである「在宅サービス」希望は見た目には女子が多いが、もともと女子が多いので、「女子は男子より在宅サービスを希望するものが多い」といえるのかどうかわからない。男女の合計を100としたパーセントを計算する必要がある。
 図4のように、ピボットテーブルの集計結果の下に、パーセントを計算する表を作り、集計結果と対応する場所に、割り算の数式を埋め込む。パーセントの計算は、分子は次々に変わるが、分母は変わらない特徴があるので、分母を絶対参照しなければならないことに注意する。この例では、男子の合計があるF5のセルを$F5とすると、数式を他のセルにコピーしてもF行に合計人数があることは動かない。

図4 パーセントは自分で計算式を作る

D 結果をみると、「在宅サービス」希望は男子21.5%,女子23.2%と大して違わないことがわかる。むしろ、「家族だけで」と希望するものが男子に多く、「病院または老人ホームで」と希望するものが女子に多いことが注目される。

図5 クロス集計結果のパーセント表示

エラボレーション

 

 

 

 

自分でやってみよう

三重クロス集計
 男女別の「介護を希望する場所」のクロス集計では、「家族だけで」と希望するものが男子に多く、女子では「病院または老人ホームで」と希望するものが多かった。とすると、高齢化が進むにつれ女子高齢者が多くなると予想されるから、この都市の福祉の将来ビジョンとしては施設型の介護をより充実させなけれならないのだろうか。
 これは、男女の好みの違いではなく、男女の健康状態の違いを反映しているのかもしれない。このように第三の変数を考慮にいれて、性別と介護希望の関係、すなわち二変数の関係を詳しく調べることをエラボレーションという。そのためには、三重クロス集計が必要である。3変数以上を同時に分析する点で、多変量分析のもっとも入門的な手法といえる。 

 性別健康状態別に「介護希望場所」の三重クロス集計を行い、結果を考察せよ。

手順は次のとおり 
@ 図5に示されている男女別介護希望場所の集計が終わった状態で、性別のカテゴリーの場所に「健康状態」のボタンをドラッグする

図6 第3変数をドラッグすれば3重クロスの準備OK

A すると即座に図7の結果が現れて、三重クロス集計結果が表示される。

図7 性別健康状態別「介護を希望する場所」(三重クロス集計

 

結果の考察 

表1 性別健康状態別「介護を受けたい場所」(3重クロス集計)

 

 

介護を希望する場所

性別

健康状態

家族だけで

在宅サービスで

病院または老人ホームで

わからない

 

1 健康だと思う

38.3

18.8

29.7

13.3

100.0

2 健康な方だと思う

25.3

21.2

34.7

18.9

100.0

 

3 あまり健康でない

18.7

25.4

41.8

14.2

100.0

 

4 まったく健康でない

22.6

19.4

51.6

6.5

100.0

 

男子合計

26.4

21.5

36.1

15.9

100.0

 

1 健康だと思う

23.6

20.0

40.9

15.5

100.0

2 健康な方だと思う

13.0

25.1

44.1

17.8

100.0

 

3 あまり健康でない

14.0

22.2

43.9

19.9

100.0

 

4 まったく健康でない

17.0

22.6

47.2

13.2

100.0

 

女子合計

15.2

23.2

43.8

17.8

100.0

 

総計

20.3

22.5

40.3

16.9

100.0

 三重クロス集計の%を計算したのが、表1である。まず、男子についてみると、健康状態が良好なグループほど「家族だけで」と希望する割合が高い。一方、「病院または老人ホームで」と希望する割合は健康状態が良好でないグループで高い。つまり、男子においては、健康状態と介護を希望する場所には関連がある。女子についても、「家族だけで」と希望するものの割合は健康状態が良好なグループで高く、「病院または老人ホームで」と答えるものの割合は健康状態が良好でないものが若干高い。

一方、男女別に健康状態を見てみると、健康状態が良好なものの割合は男子の方が高い。このことから、性別と介護希望場所との関連は、性別の好みの違いによるものではなく、健康状態によるものであることがわかる。しかし、健康状態と介護希望場所との関連は、女子においては男子ほど明瞭な関係ではないので、たとえば、男女で大きく違うほかの要因(たとえば配偶状況)が働いているものと考えるべき余地が残っている。

いずれにしても、介護希望場所が単なる男女の別でなく健康状態に起因することが明らかになった以上は、この都市においては、施設型の介護に将来力を入れるという方向ではなく、高齢者の健康維持方策に力点をおいた政策展開が必要だ、という結論が妥当であろう。

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