メンバー紹介
(メッセ―ジは、2012年4月当時のもの)

奥野 克巳

立教大学 教授

研究代表者

私たちは、自分たちの食いぶちを確保するために動物を殺す、自ら動物を捌いて食べるという暮らしから大きく隔たった生活をしています。私たちは、動物を殺すことを、普通、私たちの知らない誰かに委ねています。それだけではなく、今日では、飼い育てた家畜が病気に感染したり、「不要」となったペットが殺処分されます。その意味で、現代社会では、動物は殺され続けています。考えてみれば、人類社会は、これまでずっと、野生動物を狩って殺し、動物を飼い育てては殺してきました。「動物殺し」なしに、人類は語れないといっても過言ではありません。人間社会は、いったいどのように、動物殺しに向き合ってきたのでしょうか。本科研では、民族誌を比較することで、そのような課題について考えてゆきたいと思います。

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シンジルト

熊本大学 教授

研究分担者(表象班・班長)

そのおかれている自然環境や生業上の特徴から、牧畜民にとって肉は欠かせないものです。「われわれ」の屠畜の仕方が最も家畜に優しく、そして肉の味も最も美味しいのだ、と多くの牧畜民は確信しています。他方、国家の定住化政策、グローバルスタンダードの一つである有機牧畜業が進展するなかで、牧畜民の屠畜の仕方が変化しつつあります。こうした変化が、肉の味をめぐる彼らの感覚や「われわれ」意識のあり方にどのような影響をもたらそうとしているかを、内陸アジアの文脈において検討してみたいです。

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西本 太

長崎大学 助教

研究分担者(経済班・班長)

人類は肉を食いたいがために文化的能力をここまで発達させたといったら言い過ぎでしょうか。私にはそう思えてなりません。動物を仕留めるにはその習性を熟知することに始まり、それに見合った技術の洗練や仲間との連係も不可欠です。さらに、成功した狩猟者には仲間からの賞賛というボーナスも与えられます。人間文化の基本的特徴はこうした肉への欲求のなかで培われたのではないでしょうか。肉の喜びには、人間文化の行きづまりを再考する重要なヒントが潜んでいるという期待もあります。この科研では、ラオス山地民による狩猟の観察・記載を通して「肉の文化生態学」とよびうるものを具体化したいと思います。

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山口 未花子

岐阜大学 専任講師

研究分担者(生態班・班長)

子どものころからの動物好きが高じ、大学では動物生態学を専攻、修士以降は生態人類学・文化人類学に鞍替えし、日本の小型沿岸捕鯨船乗組員そして北米狩猟民の古老たちから動物に関する知識や技術を学んできました。動物好きなのに動物を殺すことを研究するのはなぜかとよく聞かれますが、狩猟民の動物への尊敬や愛着には私たち以上のものがあると感じています。本プロジェクトを通じ、実践的に動物殺しを調査・研究することで、人と動物の関係の新たな側面が見えてくるのではないかと期待しています。

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花渕 馨也

北海道医療大学 教授

研究協力者

専門は文化人類学。フィールドは東アフリカのコモロ諸島。この科研プロジェクトでは、「動物との関係を通じ、人間はどのような心の働きや感情を獲得してきたのか?」という問題を、進化心理学や動物生態学の研究も含めたできるだけ広い視野から考えてみたいと思っています。

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吉田 匡興

桜美林大学 非常勤講師

研究協力者

2000年からニューギニアのアンガティーヤ社会で調査を行い、その呪術信仰を背景にして、彼らの人格概念を主題とした博士論文を執筆しています。アンガティーヤの文化は、生業の舞台でもある祖先伝来の土地とその保持者との「実存」的な結びつきをその機軸に捉えています。動物殺傷も、祖先伝来の土地での狩猟・肉の獲得としてみれば、人びとと土地との関係の一環と言えます。社会的・経済的変化を背景に、土地との関わり方の変質が予想される昨今ですが、狩猟=動物の捕殺の現状を探りながら、人びとと土地との関係の変化と持続を考えてみたいと思っています。

島田 将喜

帝京科学大学 准教授

研究協力者

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中野 麻衣子

東洋英和女学院大学 非常勤講師

研究協力者

インドネシアのバリ島で文化人類学の調査を行ってきました。最近までの研究テーマは「消費」でしたが、調査中は痩せこけた子猫を拾っては飼い、現地の人に不思議がられていました。バリ人は犬を冷酷かつ残酷に扱うことで知られ、一般に動物的なものを嫌うと言われてきました。私も食べ物を盗むといって野良猫を叩き殺す現場を見ました。他方で、急成長した富裕層の間では外来種の高級犬や馬が飼われ、ペットショップや獣医も増えています。儀礼の中心である供物は肉(動物)の種類によって階梯化され、儀礼の肥大化に伴い高ランクの動物(豚、水牛)が屠殺される頻度も増しています。急速な経済的社会的変化が人々の人間/動物観や動物倫理にいかなる影響を与えているのか、「殺し」をキーに探究してみたいと思います。  

大石 高典

総合地球環境学研究所 研究員

研究協力者

これまで、中部アフリカ3ヶ国(カメルーン、コンゴ・ブラザビル、ガボン)に跨がって森棲みの生活をするバンツー系農耕民バクウェレと、隣接居住する狩猟採集民バカを研究対象に人類学的研究を行ってきました。これらの地域では年々自然保護活動が盛んになっていますが、バクウェレは、成人儀礼に大型類人猿ゴリラの儀礼狩猟を取り込んできた伝統があり、またバカにとっては、ゾウ狩猟は精霊儀礼ジェンギの継承に関わる重要なものです。本プロジェクトでは、生存か商業かという対立的な見方を越えて、動物殺をめぐる表象過程を検討するために、儀礼狩猟や儀礼漁労に焦点を当てた民族誌的記述を行いたいと考えています。

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池田 光穂

大阪大学 コミュニケーションデザインセンター 教授

研究協力者

人間と動物の関係性についてこれまで以上に考察を深めるのが私の願望です。私の研究野心は、イタロ・カルヴィーノの言葉を借りるならば、ミリ秒単位の人間の認識の過程を観察しつつ、そのデータの考察には「これからの千年期を見据えた人類学の未来」について考えるべきだと考えます。20世紀の先人(Great predecessors of cultural anthropology)を引き継いで、人類学に元気を取り戻すには、千畳敷の夢を語りましょう。四畳半ではいけませんよ。私の研究サイトにも是非お寄りください。(写真は著名なロボット研究者[右]とこれまた著名な認知症ケア実践研究者[左]との居酒屋でのスナップショットです)

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田川 玄

広島市立大学 准教授

研究協力者

南部エチオピアから北部ケニアにかけて居住している牧畜民ボラナで研究調査をしてきました。家畜が市場においてキロ単位で売買され、食肉として消費されるための商品となったとき、牧畜民と家畜との関係にどのような変化を生むのでしょうか。このプロジェクトでは、グローバル化にともなった新たな食(肉)文化の流入による牧畜文化の変化をとらえていきたいと思っています。

近藤 祉秋

アラスカ大学フェアバンクス校 人類学科博士課程

研究協力者

静岡県生まれ。研究地域は、米国アラスカ州(とくにクスコクイン川上流)および日本(隠岐島)で、民族鳥類学、人と動物の関係研究に興味をもっています。具体的には、アッパー・クスコクイン・アサバスカンにおける水鳥猟、動物利用およびそれにまつわる禁忌、鳥の分類、聞きなし、野鳥の飼育、野生生物管理・自然保護主義・先住民関連政策との交渉を扱い、歴史的な経緯の解明や比較も視野に入れながら、民族鳥類学の民族誌を書くことを目指しています。経験豊富な先輩方、先生方から学ぶ機会をいただき、本当に楽しみです。

山田 仁史

東北大学文学部 准教授

研究協力者

近藤 宏

国立民族学博物館 外来研究者

研究協力者