学部ゼミ 2016年度3年ゼミ

関ゼミ紹介

〔環境を捉える視点としての「文化」~ゼミのテーマ〕

 私たちのゼミは環境社会学を軸に学んでいます。
 環境社会学は、環境問題を社会問題として捉え、社会学の持ち味である「当たり前を疑う」姿勢を大切にしながら、問題の構造やフレームを明らかにし、ときに解決の道筋を探る学問です。例えば、環境問題を考えるとき、「環境を守る」ことを焦点化しがちですが、その地域に住まう人々や暮らし、そこで築かれた文化などへの視点を忘れてはいけません。むしろこの視点こそが環境を考えることだと私たちは思います。地域の人々の想いや文化を考えるとき、ただ頭で想像するのではなく、現地に行ってお話を伺い、ときには一緒に解決策を語りあうような学問です。

(栗原卓威)

[2016年度のゼミ調査]

 平成28年度のゼミ合宿では、福島県いわき市渡辺町に訪れました。
 渡辺町は、江戸時代に宿場町として栄えた歴史を持っています。農業・内水面漁業・畜産業が主産業でしたが、時代の波がそうであるように、少子高齢化が進んでいます。そのなかで、失われていく「伝統」と受け継がれている「伝統」があります。例えば、庚申講は、江戸時代より村の男が定期的に、村の掟や予算の管理を話し合う場としてありましたが、今でも世間話をする場として受け継がれています。このような文化を土地の人々にご教授していただくなかで、「この土地で暮らしていきたい」という想いを知ることができました。受け継がれてきた文化や豊かな自然、そして歴史を途切れることなく伝えるために、何ができるのか、調査を通して考えています。

(栗原卓威)

[被災地ツアー]

 ツアーの1日目では浪江町の「希望の牧場・ふくしま」 や楢葉町の「ここなら商店街」、久ノ浜にある浜風仮設商店街などを訪れ、被災当時の様子や、震災以降、復興に向けての取り組みについてお話を伺いました。2日目には小川町のメガソーラー発電所の見学や、いわき市物産観光センター「いわき・ら・ら・ミュウ」を訪れ、原発事故による風評被害を感じさせない人々の活気に触れました。
 また移動中のバスの中からは、放射能によって汚染された瓦礫の撤去作業や、除染の現状などを見ることができました。
 「希望の牧場・ふくしま」では、ヒアリングを通して、放射能汚染によって飼育していた牛を殺処分しなくてはいけなくなった方々の激しい憤りを感じました。お話を聞く以前の私は、生産者側の気持ちを何も感じず消費者として牛肉を食べていました。そして、放射能で汚染されて食べられなくなったのなら、他の牛を食べればいいだけだと考えていました。しかし、実際に酪農で生計を立てている生産者側の気持ちを聞いたことで、常に自分と違う立場の人がいるという当たり前のことを再認識することとなりました。
 ツアーで訪れ、実際に自分の目で見て、直接現地の方々にお話を聞くことで、よりリアルな原発事故当時の状況や、その後の人々の生活の変化、また現在の状況の一端を知ることができました。
 読んで調べて考えていた事と現場のズレを感じたことは、現地に行かないとわからないことがあるのだと気付かされる貴重な体験でした。

(金山竜平)

[本は世界の扉~その先に見えるものとは~]

 2016年10月19日、『週刊読書人』編集長の明石健吾さんが、ゼミにゲストスピーカーとして来てくださいました。初めの60分は「読書のすすめ」、残り30分は私たち学生それぞれが書いた「書評」を講評していただきました。
 「読書のすすめ」では、憲法のツボが分かる本(柄谷行人『憲法の無意識』等)や、おすすめの本約50選(ジェニファー・L・スコット『フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ暮らしの質を高める秘訣~』等)の紹介をお聞きしました。紹介されなかったら素通りしていただろう本にも、興味が湧くきっかけになりました。
 書評の添削では、学生一人一人に、各々の書評の良い点と改善点を丁寧に指導してくださいました。書評は、「キーワード」「具体例」「本の筋」をしっかり入れる、多めに書いて字数に合わせて絞っていく。これらが重要であることを学びました。
 また、明石さんの言葉で、「本は世界の扉」という言葉が強く印象に残りました。初めはピンときませんでしたが、明石さんの、「本を『読む』ことは、情報を得るため、『考える』ため。また、筆者の経験を追体験することができるのです。そして、『書く』ためには、本をたくさん『読む』ことが必要。『読む』『書く』『思考する』この繰り返しなのだ」というご説明に、「本は世界の扉」の意味を納得しました。普段何気なく本を読んで終わっていたけれど、確かに、分からない言い回しや単語がでてきたときに調べれば、知識が増えます。そこには自然と、思考が働いています。また、本を読んでいて、いい表現だなと思った箇所をメモすることは、『書く』力をつける上で効果的だと思いました。
 明石さんから教えていただいたことを実践し、本を読む人だけが手にする扉を開け、さらにその世界を、自分の引き出しの一つにしていきたいです。

(石原冴理)

自己紹介に代えて(書評)