プロジェクト概要

 戦争や公害の体験者の高齢化が問題になっている。「負の記憶」を語る「語り部」の場合、「語り」を文字化・映像化することで「負の記憶」は保存されるが、それだけでは語り継ぐに足りないと考えられる。体験者でなくとも「語り部」を引き継ぐ存在、そこに発話行為そのものが持つ「力」があるからだ。
 本研究会では、「負の記憶」を語るオラルな「力」に着目しつつ、「語り部」や「語り継ぎ部」の身体性と関係性を考える。
 具体的な事例としては、水俣病・新潟水俣病をはじめとする公害・環境汚染の問題、災害や複合災害による被災問題(災害常襲地、福島原発事故のような複合災害)を取り上げる。
 公害・環境問題や災害被災の当事者の「語り」を、当事者を取り巻く社会関係や、「語り」を承認する制度のなかに位置づけ、社会構築論、社会運動論、消費社会論を補助線に「語り」が持つ「力」を捉える。