アメリカンフットボールはアメリカの大学で生まれ、発展してきたスポーツである。アメフトの歴史は常に大学と共に在る。 それは日本においても例外ではない。日本でのアメリカンフットボールのルーツ校が他ならぬ、立教大学であるということを一体どれ程の人が知っているのだろうか? 日本にアメフトを普及させた人物、ポール・ラッシュ。彼の業績を一言では言い尽くすことが出来ない。その偉大なる"アメフトの父"から名前を貰ったチーム、それが我が立教大学の"RUSHERS(ラッシャーズ)"だ。 山梨県清里――。6月中旬、ポール・ラッシュゆかりの地でありアメフト普及の中心となったこの地に、RUSHERSは戻ってくる。言わば、日本のアメフトの原点。そこでRUSHERSが試合を行う。ルーツ校としての伝統、そして誇りを思い出すために。 今年、RUSHERSが掲げた目標は"勝負"。プレーで相手を圧倒し、勝利にこだわる。その言葉通り、この春は初戦で敗れた後は勝ち星を並べている。勝つことに尽きる。スポーツをする誰もが勝利を目指して努力を続ける。しかし、彼らの挑戦はそれだけにとどまらない。コーチやOB、選手達までもが口にする、大学でアメリカンフットボールをするもう一つの意義。それが"人間教育"である。 彼らは言う。「人間として一流であるべきだ」と。RUSHERSにはルーツ校としての理想がある。勝つことだけを、結果だけを重要視するような、昨今の大学スポーツ界全体の風潮に彼らは疑問を投げかける。真の意味で"強くなる"ということ。それは試合に勝つことだけが全てではなかったはずではないだろうか? RUSHERSが目指すのは、立派な社会人の育成だ。勝利のために日々苦しい練習を重ねる彼らは紛れもなくアスリートである。しかし大前提として学生なのである。「勝利を目指すあまり、人間教育をおろそかにすることがあってはならない」この言葉から気付かされるのは、プロのアスリートではない大学生がスポーツをする意味だ。大学スポーツだからこそ、やるべきことがある。RUSHERSが目指している理想は、同時に大学スポーツが目指すべき理想だと言えるのではないだろうか? 人間としても一流を目指すRUSHERS 監督、コーチ、マネージャー、トレーナー、OB会や父母会。フィールドサイドにはたくさんの人がいる。彼らに憧れてアメフトを始める子供たちもいる。RUSHERSに関わる全ての人がその伝統に誇りを持っている。チームへの期待は大きい。 76年もの歴史を持つルーツ校として、大学スポーツをする人間として、RUSHERSは高い理想を追い続ける。彼らが守り続けるフットボールはどこまでもロマンにあふれている。 (2010年10月5日:佐藤優)
|