アメリカンフットボール部 DB#24島津慶丞・#26高木啓佑 特集A 〜先輩と後輩、尊敬と慈愛〜
どんなに辛いことも歯を食いしばり、急成長をする男、DB♯26高木啓佑(社3)にスポットライトをあてたい。
オフェンスポジションを経験したことから、『どういう動きをしたら相手が嫌がるか』をよく理解している。コーチ、先輩の目は正しく、DBというポジションは彼にしっかりと当てはまった。 高木はDBの中でもSF(セーフティ)を担当している。彼の率直な感想は「難しいけど楽しい」だ。 「試合に出ている側の気持ちとしては、一番後ろで全体を見れるし、どんなプレーにも絡めるのでやりがいがあるけど、はたからはボールあんまり触ってないからつまらないと思われがち。だけど、自分ではそういう風に思わない。みんながDBを信頼しているから、ディフェンスが安心して、強い気持ちでプレーができる。」 高木が求めるDB像は"ディフェンスにおいて絶対的存在感のあふれる人"。「試合の流れを変える、ビックプレーを呼ぶのはDBだ」と断言する。 目指すは島津
「自分のフットボールやってきた中で、なんかもう本当に象徴的な存在というか・・・一番尊敬できるって言っても過言じゃない」。 同じポジションの1つ上の先輩、島津慶丞(観4)は高木の中で大きな存在だった。 「面倒をよく見てくれるっていうのもあるけど、フットボール選手としての技術やメンタルが強い。試合でも結果を残してくれるし、最上級生としてたった一人でDBパートをひっぱってくれている。そんな島津さんを目標にしている。すごい先輩はいっぱいいるけれど、親近感がありながらも尊敬しているのは島津さん」。 しかし、同時に憧れているだけでは成長に繋がらないと高木は言う。 「あの人ができてなくて、自分ができているところを伸ばそうと意識するのは重要で、"いつか、食ってやる"って気持ちでプレーしてる。そこで引いてしまうと、フィールドでも存在感がなくなる。尊敬しているところは盗んで、それを島津さんよりできるようにする」。彼は高いモチベーションと意識を持って毎回の試合に挑んでいる。
忘れられない"あの日"の試合 2010年秋、一橋戦。当日は台風とぶつかり、ボールを蹴り上げても風圧で垂直落下するような状態で試合が展開された。第1Qで7点先制した立大は点を奪われることなく最終Qまで試合を運んだ。しかし波乱は訪れる。29ヤードからFG(フィールドゴール)で3点を失点すると、4ダウンに自陣15ヤードでパスをとられたことが原因となり、後にTD(タッチダウン)を決められた。試合終了間際で7−10の状況からの抜け出せなかった立大は、想定外の結果に涙をのんだ。試合後の高木は「自分のゾーンが守れなかった」ことに責任を感じてしまい、ぼうぜんとしていた。けがで出場を控えていた善波は「4年である俺が怪我をしていて、代わりにお前が出た。だから責任は俺にある」と言った。その瞬間、高木は決心する。「あの悔しさだけは忘れたくないし、あの悔しい思いをするなら、どんなにつらい練習でも耐えていこう」。 そしてその思いを取り返すような試合が再びやってきた。2011年春の日体戦、攻撃権が相手へ移り、ターンオーバーで独走しかけたとき、つかさず相手を捕らえファンブルフォースで攻撃権を立大に取り戻した。この彼の活躍が試合の流れを大きく変えたのだ。「あの日から悔しくて練習やってきて、結果に結びつけることができた。自分のなかで成長していると確信して、自信持ってプレーするのを心がけている。試合の中で一つでも成長している姿を確認できないとやっている意味を感じない」。 一橋戦の悔しさから日体戦で結果を出して帰ってきたことは今でも自信になっている。ディフェンスコーディネーターの田辺コーチは「自覚持って練習に取り組んでいるし、これから伸び代がある」と期待していた。少ないチャンスからビックプレーを生み出した高木は、"あの日"を境に急成長する。
秋に向けて 上級生となり、チームを引っ張っていく立場として臨む秋季リーグ戦。去年よりも良い成績を残すため、必死に練習してきた。「自分がいなきゃDFが機能しないって言われるようなプレー」が目標だ。 「声出し続けて、気持ちだけは負けない」。 もう先輩の背中を見つめているだけは終わった。彼のアメフトに対する真摯(しんし)な態度は、結果へ結びつく。必ず。 (9月13日 大瀬楓) |