平成26年度採択 私立大学戦略的研究基盤形成支援事業

「地上実験・飛翔体観測と理論による宇宙像解明の研究拠点形成」


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本プロジェクトの目的

 本研究は,人類にとって基本的な設問である「天体現象と物質と空間の理解」を深めること,すなわち「宇宙像を解明」しようとするものである.本プロジェクトでは,具体的に次の3つの目的を掲げる:

第1に「天体現象の解明」

として、電荷交換反応をはじめとする宇宙プラズマ過程の明確化,


第2に「物質の起源の解明」

として、宇宙初期物質の性質と元素の起源の解明,


第3に「空間構造の解明」


として,ダークマターの観測的性質の解明と宇宙の時空構造・進化史や時空のミクロな構造の探索, である.


 これらを,理論,地上実験,飛翔体観測の3つの方向から研究し,宇宙像の解明を目指す.同時に,地上実験,飛翔体観測では,測定装置の開発も研究目的とする.また,本学の先端科学計測研究センターによる事業「ピコスケール計測技術の開発とその基礎科学への応用」(平成21−25年度)の成果を基礎として,より明確な科学的目標を定めて「天体現象と物質と空間の解明」に迫り,飛翔体観測,理論,地上実験をより有機的に連結することにより,初めて導出される新しい成果を創成する研究拠点として,同センターを発展させる.


研究内容

宇宙プラズマ過程の明確化

 宇宙プラズマ過程の明確化では,地上実験で固体表面実験用ビームラインを製作・導入し, 電荷交換反応をはじめとするイオンと固体の衝突断面積の測定を行う. 一方,飛翔体からは,惑星大気や表面の観測を行い,惑星表面からの物質の散逸現象を観測する. 両者の結果をつきあわせて考察する事で,宇宙で生じているプラズマ過程を明確化する.

宇宙初期物質の性質と元素の起源の解明

 宇宙初期物質の性質と元素の起源の解明では,地上実験で,中性子過剰核のような不安定核の構造や崩壊過程を測定する. 飛翔体からは,超新星残骸を始めとする天体で観測される中・重元素の存在比を測定する. それらの結果を基礎にして,宇宙初期の理論的研究を含めて,宇宙の元素合成過程に制限を与える.

ダークマターの観測的性質の解明と宇宙の時空構造・進化史や時空のミクロな構造の探索

 宇宙空間構造も地上実験,理論,飛翔体観測から,新たな知見を得る事を目指す. ダークマター観測は,銀河団等の天体の精密観測からの結果を吟味しながら,地上実験で検出する方法の検討を行う. ブラックホールやワームホール等の時空構造と性質は理論的研究で解明を目指す. 時空のミクロな構造の探索として,近距離での重力の性質の実験と,超弦理論等による理論的研究から検討を進める. これら実験や観測で用いる,光・粒子測定器や,関連する挑戦的な測定器の開発も協働しながら進める.

期待される成果

 本計画は,「研究目的」に記述した3つの目的を,地上実験・飛翔体観測と理論により研究することが特色である. その結果,地上実験や飛翔体観測の融合によりはじめて創出される結果が期待される. また,実験環境を制御できない天体の飛翔体観測で生じる科学上の疑問点が,地上実験と理論により解明される事も期待される.

 具体的な例として,これまでも進めてきた, 固体表面への光やイオンの地上での照射実験と惑星表面からの物質流出の観測成果の融合により, 惑星からの物質流出の物理的原因の定量的な特定, 不安定核の崩壊チャンネルの断面積の地上での測定と超新星等で作られる元素の量の飛翔体による観測結果の融合により, 宇宙での元素合成過程の明確化,地上での重力測定により空間構造の解明と宇宙のダークマターの役割の研究成果や, 超弦理論からの検討の融合により,ダークマターの宇宙進化での役割の推定, ブラックホールやワームホールの理論的研究から,観測的研究への示唆等, 我々のプロジェクトでしかできない科学的に重要な成果をあげる事ができる.