【第11回】地球上の家族の多様性
【1】導入 ・子が生まれても、子はすぐに自立できない。 ・家族のなかで、何年も世話されることによって育つことになる。 ・つまり、子は、通常、家族からの導きと世話を受けるだけでなく、文化の諸要素を学ぶ。 ・その意味で、家族は文化のコーナーストーン(拠点)である。 |
【2】北西ケニアのトゥルカナ人(牧畜民) ・たくさんの家畜を飼育する。 ・一夫多妻婚(Polygyny)cf. Polyandry=一妻多夫婚 ・一人の妻だけで家畜群を切り盛りしていくことができなくなると、夫は二人目の妻を迎える。 ・女性は価値のある「財」で、夫側の集団から婚資(brideprice/bridewealth)が与えられる。 ・結婚に際して、夫側と妻側集団による婚資交渉が行われる。 → 婚姻の牛の殺害によって交渉の終了が示され、その後、新婦は、新郎の家に迎えられる。そのとき、新婦は、悲しみを表すように期待される。 |
婚姻によって女性が出自集団を変更する際に行われる財の交換
@婚資(bridewealth) 女性と反対方向に動く財 =夫側から妻側に支払われる財 |
女性に関する権利が夫方集団に譲渡され、女性が産む子どもが夫側の成員となることを保証する。 *夫方と妻方の関係を緊密にし、贈与品の分配により妻方集団内部の関係が緊密になる。 |
A持参財(dowry) インド、ヨーロッパなど 女性が出自集団から夫方集団に持ち込む財 |
女性が婚入後も自己の財を持つことを可能にする。 *女性の経済保障をし、その多寡が女性の婚入先での影響力に関係する。 |
B相互に贈与しあう財 ミクロネシアなど 男財(male gift)・・椰子の実、貝貨、魚 女財(female gift)・・石貨、イモ |
財を用意するために双方の集団は親戚に頼ることになり、婚姻をつうじて、社会関係を緊密にする。 |
【3】アフリカ、ザイールのイトゥリの森のピグミー人(狩猟採集民) 大石高典さんによるバカ・ピグミーの写真館 ・彼らは、早熟で結婚する。 =10歳の男の子と8,5歳の女の子の婚儀 ・外婚制(Exogamy)が行われる。 ・狩猟採集のテリトリーへの互いの集団の接近を許す「姉妹交換」は、二つの集団の統合性を高めることになる。 ・男が狩猟し、女が採集するというライフスタイルがある。 ・男の子たちは、幼いころから、生き物をしとめる遊びを始めて、そのうちにやがて、ハンターとなる。=社会化 |
筑摩書房 1976/9
【4】北インドの農村(農耕民) ハリヤナー州の地図 ・ダダ(祖父)とダディ(祖母)の家 =一つの経済および居住の単位を構成する。 ・祖父と祖母が、家族全員の財産とお金を管理する。 ・拡大家族(Extended family) =多くの成員を有し、広い農地を管理するのに適している。 ・人びとがたくさん集うので、成員の間の葛藤や衝突が頻繁に起きる。 ・ラジンダという名の末子(男)は、結婚に際して、妻とともに、夫方居住(Patri-local Residence)という伝統を壊して、祖父と祖母のもとから離れて、都会に独立した住居を構えた=新居住(Neo-local Residence)。 ・結婚と家族は、時代とともに変化する。 →拡大家族という形態は、農村には向いているが、他方で、会社勤めや転勤などが多い都市部には不向きである(経済的に価値が低い)。 |
【5】アメリカ合衆国のボルティモアのギリシア系アメリカ人 ・結婚は、しばしば「見合い結婚(Arranged Marriage)」の形式が取られるが、それは、経済的な理由からではなくて、ギリシア人として、過去との結びつきを維持するためである。 ・彼らは、文化的な価値を持続させようとしている。 ・見合い結婚は、愛が終わった後も、家族が持続するためのよい方法であると見る人もいれば、他方で、見合い結婚は、恋愛結婚が主流の現代アメリカには合わないと見る人もいる。 ・ディノとマリアは「恋愛結婚」ながら、ギリシアの伝統に従って、アメリカとギリシアの二つやり方を折衷した。 ・彼らは、持参金(Dowry)で「持参金屋敷」を買い、都市に暮して、核家族(Nuclear Family)を築いた。 ・核家族は、転勤が行われる現代アメリカにおいて、適合的な家族形態である。 |
冥婚 婚姻は、配偶者が帰属する家族集団や親族集団の変更をもたらすことがある。帰属の変更は父系社会の女性にしばしば見られる。女性は婚出すべきだとされ、婚入集団が最終帰属先となる。 冥婚とは、漢民族の亡霊婚である。 漢民族では、人は必ず結婚して子をもうけるべきであり、未婚で死ぬことはあるまじきこととされる。未婚で死亡した場合には、正式な葬式、死後の祭祀は行われない。こうした死者の霊は浮かばれず、この世に不幸を引き起こすと考えられている。 このため、死後でも結婚させ、死後養子(養親の死後に迎える養子)によって子孫を得て、祖先としてまつられるようにする。冥婚の相手は男女が双方とも死亡していたり、一方のみの死亡であったり多様である。しかし、冥婚によって、配偶者を得、子孫を得ようとすることは共通している。 冥婚は、女性にとって生家は出生する場所であるが、死亡する場所でないことを示す。冥婚によって女性は帰属する集団を変更し、婚家において男性子孫に祭祀される。こうして、死亡した女性は社会的に認められた望ましい一生を終えたことになる。 出典:波平恵美子編『文化人類学〔カレッジ版〕』pp.45-6、医学書院 冥婚 旅行会社のブログより |
一妻多夫制 ヒマラヤ の一部では、一人の女性が複数の夫を持つ。 一妻多夫制(Polyandry)が行われている。 |