2016年度
文化人類学(独研)
グローバル文化研究特講B(新専攻科目)

奥野 克巳


草原の国、モンゴルに、「日本の被災者に羊をあげたい」という遊牧民がいる、と聞いて取材に行った。といっても遊牧民なので住所はよく分からない。84歳の遊牧民のリーダーだった人に道案内を頼んだ。吸い込まれそうな青空の下、道もない草原に車を走らせた。360度、まだ新芽の出ていない黄色の草の大地がどこまでも続く。遠くから見ると平らでも、かなりデコボコがある。「ここを右に」「左折して」といった元リーダーの指示が頼りだ。いくつもの小さな丘を超えると、遠くに羊の群れが見えた。真っ黒に日焼けした顔をくしゃくしゃに崩した笑顔の男性が群れの中に立っている。ガンバードルさん(50)だった。「私の羊は300キロほど先にもあと700頭いる。一頭の羊はたいしたもんじゃないけどね。困っている日本人のことを、私が気にしていると伝えたいと思ったんだ」世界はとてつもなく広く、いろんな人が生きている。そして、ここにもまた、日本の被災者のことを思ってくれる人がいた。目頭がぐっと熱くなった。(古谷浩一)
 
朝日新聞2011年4月22日国際面(特派員メモ ◆モンゴル 大草原からの厚意)より


世界はとてつもなく広く、いろんな人が生きている。
このことについて学ぼうとするのが、文化人類学である。
・・・というぐらいのことは、まずは、言える。


【第1回】           イントロダクション、授業の進め方について

【第2回】     【文化人類学解放講座】から学ぶ  補論 自然と人間

【第3回】  ヒトはどこから来たのか、何者か、そして、どこへ行くのか?

【第4回】〈第4回〉/〈第5回〉   文化人類学の誕生とフィールドワーク

〈第6回〉異文化を理解する

【第5回】〈第7回〉/〈第8回〉           家族とは何か?  

【第6回】〈第9回〉/〈第11回〉             婚姻の多様性

〈第10回〉新生殖医療と親子関係

【第7回】〈第12回〉/〈第13回〉     セクシュアリテイとジェンダー

【第14回】中間まとめ

【第8回】〈第15回〉/〈第16回〉        人間にとって経済とは何か?

【第9回】〈第17回〉                 贈与の霊をめぐって

【第10回】〈第18回〉/〈第19回〉            儀礼とは何か?

【第11回】〈第20回〉/〈第21回〉        コミュニタスとは何か?

【第12回】〈第22回〉/〈第23回〉         アニミズムとは何か?

【第13回】〈第24回〉/〈第25回〉〈第26回〉    呪術とシャーマニズム

【第27回】カリスの宗教民族誌

【第14回】〈第28回〉/〈第29回〉            文化とは何か?

【第30回】期末まとめ


放送大学 文化人類学’14

【参考図書】
奥野克巳・花渕馨也共編著
『文化人類学のレッスン 増補版』
学陽書房、1900円+税 (左)

内堀基光・奥野克巳共編著
『改訂新版 文化人類学』
放送大学教育振興会、2592円(右)




バングラデシュで僧となった頃の担当講師(1983)

ボルネオ島カリスの調査研究(1994〜5)

ボルネオ島プナンの調査研究(2006〜)

奥野克巳のホームページ