【第3回】ヒトはどのような存在か?



「我々は何処から来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか」 
ポール・ゴーギャン
 1897年 タヒチにて



人類学とは、ヒトはどのような存在かについて考える学問でもある。
本講義では、ホモ・サピエンスへの進化の道を辿りながら、その大枠を示してみたい。


@ ヒトの進化

『聖書』から『種の起源へ』

チャールズ・ダーウィンは、
1831年、ビーグル号で航海に出た。




後に、自然淘汰説に基づき、生物進化論を打ち立てた。


A 類人猿から人類へ



問い

進化の観点から人に最も近い種である。
類人猿と人類の違いとは何?

文化を持つ人間と、それ以外の動物を分けるのは「言語使用」?

あるいは、人類と類人猿との違いは、「道具使用」なのだろうか?


チンパンジー(学名:Pan troglodytes)は、
わたしたち人間に最も近い動物である。

わたしたちの祖先と、約700〜500万年前に、進化の道を別れたと言われている。



アユムと名づけられたチンパンジーの子は、
見たものを瞬時に覚える
人間からすれば特殊な記憶力を持つ。

この能力は人間の子の直観像記憶と似ているが、
アユムは人間の大人より優秀な成績を収める。






チンパンジー、ゴリラ、オラン・ウータン
どの類人猿が人間に取って代わるか?!

チンパンジーには、
道具を使う能力もある。
石を使って堅い果実の殻を割ったりする。





ここで見たように、
霊長類の仲間には、言語を使ったり、道具を使用したりする動物もいる。

チンパンジーとわたしたち人の違いは、それほどないように思える


近年の霊長類学、動物行動学の研究の成果

はたして、霊長類には文化はあるのか、その場合の文化とはなにか?

そうした点の理解を深めるためには、
『増補改訂版 文化人類学のレッスン』レッスン11
「霊長類と文化」(pp.267〜271)が役立つ。


チンパンジーは雑食で果実や種子、昆虫などを食べる。

集団で協力してコロブスを狩猟したり、
敵のチンパンジーを狩って食べ
(共食い:カニバリズム)

肉食であることも報告されている

食物、特に、肉は分配されることがある。



動物殺しの比較民族誌研究




B猿人、原人から新人へ

500万年ほど前にチンパンジーとの共通祖先から枝分かれした人類は、
その後どのような進化の道を辿ったのだろうか?

直立二足歩行するようになり、犬歯を縮小させた人類の祖先は、
猿人原人を経て、現生人類へと進化したとされる。




出所:HP「FPの家」より


猿人
Ape-men

猿人のうち、今から320万年前の
エチオピアの女性はルーシーと名づけられた。


1974年のルーシーの化石発掘の祝宴のバックミュージックが、
ビートルズの曲

「ルーシー・インザ・スカイ・ウイズ・ダイヤモンド」
だったため。


アルディよ、ルーシーよ、トゥルカナボーイよ






ラミダス猿人 440万年前の猿人




原人
Early men


類進化の段階で、
新人、旧人、猿人、ネアンデルタール人
を除いたもの。


出所:HP「アトリエ古賀ギャラリー」



チャールズ・ミンガス
「ピテカントロプス・エレクトゥス」1956年

チャールズ・ミンガス(ベース)
ジャッキー・マクリーン(アルトサックス)

J.R.モンテローズ(テナーサックス)
マル・ウォルドロン(ピアノ)
ウィリー・ジョーンズ(ドラム)






ネアンデルタール人
Neanderthal


ネアンデルタール人は、今から20万年前から3万年前
ヨーロッパや中東で生きていた。

それは、私たちの直接の祖先ではないが、
「ネアンデルタール人が風呂に入り、ひげをそり、スーツを着て
ニューヨークの地下鉄に乗ったとしても、
ちょっと風変わりな移民の一人として以上の
関心をひくことはないだろう」


三井誠『人類進化の700万年』p.123






地球大進化 46億年・第6集


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1:23-1:38:40



C 私たちの祖先の暮らし



新人

はじめ人間ギャートルズ
クロマニヨン人の少年ゴンと家族の物語。
(農耕以前の狩猟採集生活)




すでに道具の使用を始めていた人類の祖先は、
今から
180万年くらい前にアフリカを出発し、
80万年ほど前に火の使用を開始し、8〜3万年前には、
言語や宗教や芸術を獲得
したとされる。



The Gods Must Be Crazy
狩猟し、採集する暮らし

その後、今から1万年くらい前になると、農業を開始し、
家畜を飼育し、ペットを飼うようになった。

バリの棚田
耕す暮らし




は、それぞれの環境に適応し、
文化を発達させてきた。

文化人類学が取り上げるのは、
人間の多様な文化のあり方である。



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