第38回マルチスピーシーズ人類学研究会(オンライン研究会)


「COVID-19を分野横断的に考える」
 
【2】接触と隔離の「あいだ」を考える――「コロナの時代の愛」をめぐって

日時 2020年4月17日(金)20:00~22:00
形式 オンライン研究会(Zoomによる)
申し込み 受付 2020年4月10日(金)20:00~
4月11日(土)0:05定員に達しましたので受付を終了しました。

・定員 40名
・下記のフォームからお申し込みください (定員になり次第、締め切ります)

【趣旨】
“一人の重い皮膚病を患っている人がイエスに近寄り、ひれ伏して、「主よ、御心ならば、わたしを清くすることがおできになります」と言った。イエスが手を差し伸べてその人に触れ、「よろしい。清くなれ」と言われると、たちまち、重い皮膚病は清くなった。”(『新約聖書』マタイによる福音書の一節)

 今日、COVID-19の感染拡大下において、人々の移動を制限し、行動変容を促す「social distancing (社会的距離戦略)」という概念が注目を集めています。この言葉で推奨されているのは、人と人とが距離を図ること、すなわち各自による各自の「隔離」です。では、そこで忌避されているものとはなんでしょうか。他でもない、人と人との、街と街との、つまり、私とあなたとの「接触」です。
 確かに、過去の感染症の悲惨な歴史、たとえばサントドミンゴ島の悲劇などを踏まえるなら、人々が他者、他生との過剰で不用意な接触を控えていく、少なくとも接触の仕方を再考していくということは、倫理的にも非常に重要なことです。あるいは、COVID-19のさらなる感染拡大を防ぐ上でも、外出自粛、テレワークの推奨などを含む「ステイホーム」のスローガンには、一定の合理性があるでしょう。
 しかし、感染拡大の長期化が予測されている中で、その日々を共に生きていかねばならない私たちは、いかに「接触」を忌避し、あるいは忌避されようとも、生きていくために(直接的にせよ間接的にせよ)人と「接触」せざるをえません。また、私たちは「接触」による命の危険を感じ、そのリスクを認識しながらも、同時に、性や食を通じた「接触」を望まずにはいられません。そもそも、私たちが「生きている」ということそれ自体が外界との「接触」に他ならず、すると、ウイルスという「見えないもの」をめぐる不安の蔓延によってにわかに市民権を得たかのように見える「接触忌避」とは、畢竟、「生」そのものの忌避であるとも言えます。
 さらに、そうした市民感情と併走、便乗するかのように、今日では政治レベルで「命の選別」とも言いうる新しい排除も進んでいます。そうした新しい排除は同時に、私たちの「生」のプレカリティ(不安定性)をも浮き彫りにしつつあります。
 こうした局面において重要なことは、「接触か隔離か」という二極論にとどまらないこと、「接触」のもつ暴力性を真摯に認識しつつも、「接触と隔離のあいだ」を、差別や排除によってではなく、豊かなケアの実践、愛の実践によって満たしていくこと、そして、その方法を模索すること、ではないでしょうか。
 学術運動家として「文芸共和国の会」を主宰し、主にダナ・ハラウェイの研究・翻訳を在野で行っている逆卷しとね、トランスジェンダーの当事者であり、ジュディス・バトラーに私淑するフェミニズム活動家である尾崎日菜子、共に「思索」と「実践」の「あいだ」を生きる二人の対話から、「接触と隔離のあいだ」の倫理、「コロナの時代の愛」の在り様を考えてみたいと思います。
 なお、本オンライン研究会は、マルチスピーシーズ人類学研究会の「 COVID-19を分野横断的に考える 」シリーズの第二弾として企画されたものです。

【プログラム】
対談:逆卷しとね(学術運動家)×尾崎日菜子(小説家)
司会進行:辻陽介(HAGAZINE 編集者)


@朱戸アオ『インハンド』より

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