第49回マルチスピーシーズ人類学研究会(オンライン研究会)



絡まり合う種と人間
~日本におけるマルチスピーシーズ人類学の新展開~ 

日時 2020年9月18日(金)14:30~17:30
形式
オンライン研究会(Zoomによる)

・9月9日(水)に発表原稿(草稿)を事前にお送りします。それを読んできてもらって、意見を述べてもらったり、議論に参加してもらったりする形式で進めます。

申し込み
・8月31日(月)までに、以下のメールアドレスまで、「第49回マルチピーシーズ人類学研究会参加希望」というタイトルで、「氏名」「所属」「関心」を明記の上、奥野克巳までメールを送信してください。


katsumiokuno[]rikkyo.ac.jp

・募集 若干名


【趣旨】

2010年以降に新たに登場した新ジャンルであるマルチスピ―シーズ民族誌/人類学では、人類学がこれまで動物や人間以外の生物種をいかに扱ってきたのかに関して、以下のような見通しを持っている。レヴィ=ストロースが動物種を「考えるのに適している」と捉えたのに対して、M.ハリスは、それらを「食べるのに適している」と捉えた。しかし動物を含む他の生物種は、人間にとってたんに象徴的および唯物的な関心対象というだけではない。そのことに気づかせてくれたのは、科学史家ハラウェイである。他の生物種は、人間や別の種と相依相関しながら、絡まりあって生存してきた。他の生物種は、人間にとって「ともに生きる」存在でもあるのだ。


ハラウェイのアイデアを重視しつつ、動・植物などの人間以外の生物種を、人間にとっての外部の対象としてしか扱ってこなかった人類学を乗り越え、複数の種の絡まりあいの中で人間について調査し、記述考察しようとするのが、マルチスピーシーズ民族誌/人類学である。L.オグデンらによれば、マルチスピーシーズ民族誌とは、行為主である存在者が絶え間なく変化するアッサンブラージュの内部における、生命の創発に通じた民族誌調査および記述である。T.ヴァン・ドゥーレンによれば、マルチスピーシーズ人類学は、他の生物種をたんなる象徴、資源、人間の暮らしの背景と見ることを超えて、種間および複数の種の間で構成される経験世界や存在様式、他の生物種の生物文化的条件に関して分厚い記述を目指す。マルチスピーシーズ民族誌/人類学では、人間を静態的で単一性を持った「人間=存在(human beings)」ではなく、動態的で関係論的な「人間=生成(human becomings)」と捉える。


チンは、マツ・マツタケ・菌根菌・農家の人たちが相依相関することによって生み出している生存可能性に着目する。マツと菌根菌が共存する痩せたマツ林に農家の人たちが入ることによって、菌根菌がマツタケに生長するのにほどよく攪乱された状況をつくりだす。マツ・菌根菌・農家の人という複数の種の偶発的な出会いによって、奇跡的にマツタケが育つ。ステパノフらは、「飼育する/飼育される」という二項図式的なドメスティケーション理解に代えて、人間と家畜が入り乱れて、長期に亘って根を張るハビタットである「ドームス(domus)」を変容させる、三項的な図式による動態を提起している。ステパノフらは、「共有されたハビタットを囲む人間、植物と動物の間の長期にわたるマルチスピーシーズ的な連携様式」としての「共異体(ハイブリッド・コミュニティー)」という枠組みを提唱する。家族と家畜がともに暮らし、相依相関する南シベリアのトゥバの共異体では、人間の過ちが家畜に病気をもたらし、ヤクの供犠は共異体全体に繁栄と健康をもたらす。


こうした海外での近年の旺盛なマルチスピーシーズ民族誌/人類学の研究熱に対して、わが国でも2016年5月に有志がマルチスピーシーズ人類学研究会を立ち上げ、研究会を開いて欧米の先行文献のレヴューをしつつ、研究発表と討議を積み重ねてきた。本研究会では、この間に日本国内の研究者が、マルチスピーシーズ民族誌/人類学を主題として取り組んできた調査研究の成果・途中経過を提示し、参加者とともに意見交換・討論をすることにより、この新しい研究ジャンルの到達点と課題について考えたい。

【プログラム】
論考提供
近藤祉秋(北海道大学)
大石高典(東京外国語大学)
大村敬一(放送大学)

・司会進行

奥野克巳(立教大学)



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