マルチスピーシーズ民族誌とマンガ
人間と動物の境界線を溶かす物語世界
日時 | 2021年5月15日(土)9:00~13:00 |
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場所 | オンライン研究会(Zoomによる) |
申し込み | 非公開研究会 |
【趣旨】
ディヴィッド・ハーマンは、彼が目指すアニマル・コミックスの物語世界を<マルチスピーシーズな物語世界>と呼ぶ。そこで中心となるのは、非人間の動物であり、人間と他の生物種の経験世界の間の交差と相互関係が、出来事の展開を構成する。
ハーマンは、<マルチスピーシーズな物語世界>の理論的な課題を、カークセイとヘルムライヒの記念碑的論文(「複数種の民族誌の創発」)から引っ張り出してきている。カークセイらによれば、マルチスピーシーズ民族誌家とは、「人と他の諸存在との遭遇が共通の生態系と共同生産されたニッチを産み出す、自然と文化を隔てる線が分解したコンタクト・ゾーンを研究している」研究者たちである。
マルチスピーシーズ民族誌の研究を手がかりとして、ハーマンは、「アニマル・コミックスは、実質的には、そのようなニッチをモデル化し、種の境界を越えた自己-他者の関係の動態を(再)想像するためのナラティブの技法として機能してきている」のだと見る。つまり、マルチスピーシーズ・マンガは、人間と他の動物が互いにコンタクトするニッチを物語世界の中に描き出すことで、人間と動物の間に線を引いて考える私たちの常識的理解を破壊する役割を担っているというのだ。
マルチスピーシーズ・マンガをめぐるこうした批評を踏まえながら、本研究会では、現在マンガというメディアをつうじて<マルチスピーシーズな物語世界>を構築しつつある人類学者たちが、所論を口頭で発表して、検討と思索を深めていく。
【プログラム】
9:00~9:05 シンジルト(熊本大学)「趣旨説明」
9:05~9:25 宮本万里(慶応大学)「ブータン山村における蛙と池と人間をめぐる情景」(仮)
9:25~9:35 コメント:シンジルト×奥野克巳(立教大学)
9:35~9:55 近藤祉秋(神戸大学)「米・アラスカ州の文化キャンプにみるマルチスピーシーズの風景」(仮)
9:55~10:05 コメント:シンジルト×奥野克巳
10:05~10:25 大石高典(東京外国語大学)「マラリア原虫とロアロアに客体化される人体をめぐって」(仮)
10:25~10:35 コメント:シンジルト×奥野克巳
10:35~10:45 休憩
10:45~11:05 近藤宏(神奈川大学)「パナマ東部の植民地、ブタ、人間の絡まり合い」(仮)
11:05~11:15 コメント:シンジルト×奥野克巳
11:15~11:35 島田将喜(帝京科学大学) 「ピアスの死は殺猿事件の結果か?~擬人主義の誘惑とサル化した身体~」
11:35~11:45 コメント:シンジルト×奥野克巳
11:45~12:05 山口未花子(北海道大学)「北米先住民カスカにおける狩猟者とヘラジカと動物霊」(仮)
12:05~12:15 コメント:シンジルト×奥野克巳
12:15~13:00 総合ディスカッション 全員
司会進行、コメンテータ:シンジルト(熊本大学)、奥野克巳(立教大学)
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