マルチスピーシーズ人類学研究会第6回研究会 2017.2.10. 北海道大学東京オフィス



擬人主義、複数種の民族誌、動物の境界、ネイチャーライティング

日時 2017年2月10日(金)13:00~17:50
場所 北海道大学 東京オフィス(東京駅日本橋口 サピアタワー内) MAP
備考 参加される方は、申し込みが必要です。

【2月6日(月)】までに、参加者の方のお名前とご所属(大学名、会社名など)を近藤祉秋(shiaki.kondo★let.hokudai.ac.jp)宛に連絡ください(★は@に代えてください)。

Vol.11 アニミズムの生物学:生物学史における「擬人主義」の再検討 

13:00~14:20

野口泰弥(北海道立北方博物館)


【発表概要】
 人間の社会、文化を語る人文科学のパラダイムと、動物行動を語る自然科学のパラダイムは大きく乖離している。原則的に自然科学のパラダイムから「ヒト」について語ることは許されるが、人文科学のパラダイムで動物行動を語ることは許されていない。こういった乖離は人文/自然科学における対象の「心」(志向性)の取り扱われ方の違いを背景とし、極論すると心を持つ存在を研究する人文諸科学と、心を持たない自然を研究する自然科学という、特殊な世界観(または存在論)が前提とされている。
 ヴィヴェイロス・デ・カストロが南米先住民を事例に提起した「多自然主義」は自然/文化(社会)の二領域に配分される各要素を再シャッフルし、上記の枠組みにも再考を迫る。彼の主張の射程は、人類学のみならず異文化のアニミズム的言説を一括してローカルな世界観の一つとして展示してきた民族学博物館の活動も含まれていると言って良いだろう。
しかしそのような自己相対化を念頭に異文化を提示(展示)しようとも、異文化の信念が我々の日常実践系とかみ合わない限り、本質的な相対化が期待できないという批判がある。従って本発表では我々の日常実践と連動していると考えられる自然科学的言説の内部から、自然と文化の領域の融解を試みる。
 そのために、特に動物行動を扱う自然科学の中で、行動を志向性に基づくものとして解釈する「擬人主義(Anthropomorphism)」が認められうるかを、ダーウィン以降の初期進化論者、行動主義心理学者、動物行動学者、日本の初期「サル学」者、また現代の霊長類研究などを事例に検討する。

マルチスピーシーズ人類学 文献レヴュー5


14:30~15:50


■ファシリテータ 近藤祉秋(北海道大学)

 マルチスピーシーズ人類学の重要な基本文献であるカークセイとヘルムライヒのCultural Anthropology誌の2010年の論考が、このたび、近藤祉秋訳で刊行された(S.E. カークセイ+S.ヘルムライヒ「複数種の民族誌の創発」96ー127頁、『現代思想』2017年3月臨時増刊 「人類学の時代」)。この機にこの論文を読み、マルチスピーシーズ人類学への理解を深めたい。研究会では邦訳文献を用いる。
Kirksey, S. E. and Helmreich, S. 2010 The Emergence of Multispecies Ethnography. Cultural Anthropology 25 (4): 545–576.

15:50~16:20

■ファシリテータ 奥野克巳(立教大学)

 菅原和孝の待望の新著『動物の境界』(弘文堂、2017年)を取り上げて、そこから何を学ぶことができるのかを考えたい。

Vol.12 リチャード・K・ネルソンの「文学」――〈ことば〉の〈かたち〉のメッセージ 


16:30~17:50

山田悠介(立教大学大学院)

【発表概要】
 リチャード・K・ネルソンは、アラスカ先住民を対象とした文化人類学研究にとどまらず、アラスカの自然と人間をめぐる文学的エッセイの執筆など幅広い活動によって知られている。その文学および文体は、とりわけ、エコクリティシズムや環境文学研究のなかで高く評価されてきた。
 本発表では、〈ことば〉をたんなる意味の容器ではなく、様々な解釈を導くための手がかりと見る視点に立って、ネルソンのネイチャーライティング(一人称形式のノンフィクション)を分析することを試みる。とくに、多様な形態、意味、機能をもつ「反復」という文彩(フィギュール)に注目し、テクストの形式的な側面から「人間の自然化」の可能性について考えていく。
 ネルソンを介して、環境文学研究と人類学がクロスオーバーするような地点を探ってみたい。

*研究会には、関心のある方ならどなたでも参加いただけます。
 関連諸文献に関しては、各自で入手願います。
 入手できない場合には、以下の連絡先まで問い合わせてください。
 katsumiokuno@rikkyo.ac.jp




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