Look17 エミリー・ウングワレー/エミューの女
Designer 児玉耀
彼女はオーストラリアの原住民のアボリジニという民族の画家である。
アボリジニは共通の言語を持たず、コミュニケーションを取る手段や子孫に伝承するための手段として絵を描いていた。
エミリー・ウングワレーはそうしたアボリジニの伝統的な風習にのっとり西洋の技法とは全く異なりながらも非常にモダンな抽象画のような印象を与えている。
しかし、実際はアボリジニの根本的な精神、ドリーミングというものに根付いたものである。
ドリーミングとは自分たちの祖先や世界を構成する動植物や惑星などがそれぞれもつ物語、世界のなりたちにおいて自分たちの役割りについての物語のことである。
こうした背景から、アボリジニの絵画には抽象的にみられがちであるが、広く自然や信仰に基づいた具体的なものであることがわかる。
なので、私は自然を代表する植物として木材、動物としてレザーを装飾として施し、幾何学的な配置にすることで、抽象的でありながらも、具体的な素材使いでアボリジニの芸術の要素をとりこんでみた。
また、歴史的な背景から見ると、アボリジニは国家主権を国外に拡大し正当化する植民地主義のイギリスの犠牲になり、土地を追われ伝染病に悩まされ、惨殺され、分散させられ、親元から子供を強制的に連れ去ることで、アボリジニを一般社会に吸収しようとした。
こうした白豪主義の背景を捉えて、元あるアボリジニによるものを、無理やり白人の考えで矯正するという面から布の上から白=白人ととらえ、白い塗料で塗りつぶして表現した。
こうした残虐な扱いをされつつも反抗できなかったり、ドラッグにはまってしまってしまう繊細さというものをインナーのドレスの繊細なシルクサテンで表現し、アボリジニの文化であるボディペインティングを模した柄を取り入れることで、いまもなお、あり続ける文化の力強さを表現した。