

Look14 嫌悪感と可能性
Designer 吉田圭佑
金という色はとても可能性に輝いているイメージがある。しかし、私自身、男性が金色を纏うというのには成金趣味のようで嫌悪感があり、またファッションシーンの流行(流行服を全身に纏うのには金銭が生じるので)を皮肉ってみようかなという事でこのlookのデザインに取り掛かった。
私が、このlookのデザインにあたり目をつけた流行が、メンズスカート・男性のレギンス・サルエルパンツ・多量の重ね着・ヒールブーツの5つである。メンズスカートやレギンス、サルエルパンツなど、現在は何ら普通に目にするが、つい最近までは、それらを街で見かけた際には「えっ…」というような視線を向けていた人で、今はそれらを着用しているという人も多いだろう。また、最近のメンズスカート・レギンス・ヒールなどの流行にはジェンダー性を感じない。例えばメンズスカートは10年前位にJean-Paul GAULTIERなどが発表している、確かにそこにはジェンダーがあった。現在溢れているそれらにもジェンダーがあるものもあるだろうが、流行という側面だけで溢れているものが多いように感じる。またメンズスカートやサルエルには民族服という側面もある。民族服において思考し、“和服というのはスカートでありコルセットであり、日本人のだれもがそこに抵抗を感じずに着れる服”なのではないのだろうかと私は考えた。なので、今回のインナーコートは和服のディテールを多く用いた直線裁ちのものを作り、ウエストにベルトを締めた。
ボディハーネスと鎖柄のボディスーツは外的な束縛と、内的な束縛をイメージしている。外的な束縛は流行である、“個性的”…といいつつも流行っているから着ようというもので、内的な束縛は、個性的な格好をする際に他者からの目を気にして自己を抑圧してしまうというものである。個性的というものが個性的系ともいえ流行の軸の中に収まる事で個性を失っているようにすら感じる。
シフォンのロングコートは「流行服を着ていますよ」というフィルターをイメージした。個性的ですが、このフィルターを通して見てください。というものである。また、だんだん権を得てきているがシースルーはまだ女性の特権的イメージが強いので、一つ未来的な志向で女性服の要素をジェンダーなく取り入れてみた。
上記でシースルーを取り入れた事でもわかる通り、流行やジェンダーなきメンズファッションにただ嫌悪感を抱いているわけでなく、メンズファッションの可能性を感じていることは事実である。今回、嫌悪感を持ちつつ要素を選んだが、lookとして纏め描く際にはきちんとファッションとして成立するように思考した。こうした性などの壁を越えたものには少なからずとも可能性を感じざるをえない。が、このlookを見た方が嫌悪感を持ったか、また、どう感じたかは私自身も気になる点である。