Look28 刻々と

Designer 高梨成美

そもそも「流動」とは時間という概念の上に成り立つものです。私たちは生まれた時から時間の束縛を受けている。それはとても大きなもので決して逆らうことはできない。
しかし、一定に流れているはずの時間を私たちは同じように一定に感じているだろうか。時計が均一に時を刻んでいても、その流れは速くなったり遅くなったりすることもあるのだ。個々人の感覚として。
首の上からつま先まで覆うドレスは、上から下まで繋がった長いパーツを12枚使って作られている。私たちのまわりで流れ続ける壮大な時間をイメージした。上からみると、刻々と時間の流れを示す時計に浮かぶ、12の数字と重なるようである。上に着たジャケットに空いた穴は心臓の位置から始まり、広がっていく。ドレスとは反対に、私たち自身が感じる時間、私たち自身が刻む瞬間の連鎖を表している。
小さな一瞬を積み重ね、平等に与えられた時間をどのように過ごすのかは私たちに委ねられているのだ。