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■ 国際移動児をめぐるトークセッション(全3回)

 移動の時代にあって、親に帯同して国と国の間を移動する子どもたちが増えています。また、移動はせずとも現在住んでいる国以外の国に自分のルーツやつながりを持つ子どもたちもたくさんいます。そんな子どもたちを支援している支援者たちのトークセッション「国際移動児をめぐるトークセッション」を企画しました。日本国内および海外で国際移動児を支援していらっしゃる3人の方々に活動実践を紹介していただき、国際移動児たちの実態を知るとともに子どもたちに必要な支援についてみなさんで話し合いました。

企画および報告:舘岡洋子(早稲田大学大学院日本語教育研究科)


第1回「国際移動児と移動家族を対象としたタイの実践」
 深澤伸子氏は、タイで長く日本語教育に携わると同時に、「タイにおける母語・継承語としての日本語教育研究会」(Japanese Mother Tongue and Heritage Language Education and Research Association of Thailand :JMHERAT*) を立ち上げ、日本につながりのある子どもたちおよびその親たちの学びの場を形成し、支援を行っています。
https://jmherat2006.wixsite.com/jmherat

 第1回目に当たるこのセッションでは、「国際移動児」をめぐる支援活動として、深澤氏が研究会で行ってきたワークショップの活動を中心に、支援対象となる「国際移動児」の現状と課題をおもに「ことば」と「自己表現活動」の観点からお話しいただきました。
 深澤氏からのスピーチに対して、参加者たちから活発な討論が展開され、「国際移動児」をめぐる課題があらためて可視化され、共有されました。また、支援者自身も日本から移動してタイに住んでいるというところから、支援者の「当事者性」も話題となりました。


第2回「ドイツで⽣きる「⽇本とつながりのある⼦どもたち」のことばについて考えるプロジェクト」
 三輪聖氏は、2004年に渡独し、ドイツのいくつかの大学や成人教育機関において日本語教育に携わってきましたが、現在は南ドイツにあるテュービンゲン大学の日本学科で日本語を教えています。また、「チーム・もっとつなぐ」のメンバーとして、ドイツに住む日本とつながりのある子どもたちの支援を行っています。
 この日のセッションでは、三輪氏のチームが制作した「複言語キッズ」のためのオンライン教材の紹介や「チームもっとつなぐ」の活動について話していただきました。以下は国際交流基金といっしょに立ち上げたサイトです。
https://tsunagu-jki.de/

 また、三輪氏は、『民主的シティズンシップの育て方』(ひつじ書房)や『右翼ポピュリズムに抗する市民性教育』(明石書店)の中で市民性教育と日本語教育について書いておられ、市民性教育にも繋がるドイツでの「出自語教育」や「政治教育」について、授業見学の経験をもとに紹介していただき、参加者みんなで移民の子どもへのことばの教育について考え、議論する機会となりました。


第3回「高校における NPO の実践」
 武一美氏は、早稲田大学日本語教育研究センターで長年、留学生に対する日本語の教育や教材開発、研究をしてきました。また、社会活動として、認定NPO法人多文化共生教育ネットワークかながわ*(略称ME-net)の副理事長として外国につながる高校生の支援をしています。
*認定NPO法人多文化共生教育ネットワークかながわ:
https://me-net.or.jp/

 この日のセッションでは、ME-netの活動の歴史的な経緯および現在の広がりについてお話しいただいたうえで、武氏ご自身のコーディネータとして、日本語学習支援者として、あるいは組織運営者としてのご経験や現在、課題だと思われることについてお話しいただきました。ME-netの活動は教育委員会と高校をつないだり、コーディネータを派遣したり、高校生自体を校内、校外で支援したり、かなり活動の範囲が広いもので、国内の事例でありながら、今までよく見てこなかったことばかりでした。
 前2回は海外にいる日本につながりのある子どもへの支援のトピックでしたが、今回はそこから反転して海外から日本にきている外国につながりのある子どもへの支援の話で、当事者性や出自語などについて、また学校や社会について、逆の角度から考え、ディスカッションすることになりました。



主催:「言語的文化的に多様な子どもたちのパフォーマンスアートに媒介された学習活動の研究 」(科学研究費助成事業 基盤研究(B)17H02710)
問い合わせ:podoffice@rikkyo.ac.jp