Look20 安心と不安

Designer 児玉耀

緑色が人間に心理として与える効果として一般的なのは「安心」「癒し」といった印象である。しかし、私はそういった印象を与える色でも、デザインを間逆の要素を取り入れることで視覚的に安心感と不安感を見せたいと思った。ここで、デザインに取り入れる「不安感」を「流動」というテーマを踏まえ2通り提示しようと考えた。それは「服を着ている時に感じる不安」と「社会的・精神的な不安」である。
まず1つ目に関しては、私たちが服を着る際不安に思う時というのはサイズが自分の体にフィットしていなかったり、自分の見えない範囲の服の状態を把握できなかったり、人に見せるための体の部位や服が見えてしまうような状態であると思う。自然な体の動きの一連の流れによって生まれる自分の意志に反する服の変化に不安を感じると考え、ファスナーをデザインに取り入れた。閉じた状態では服に守られている感を表現し、開けることで見えなかった部分が露わになり、着ている人の不安感を煽るようなデザインになっている。首元のスリットもそういった意図によるデザインである。
2つ目に関しては、現在の日本の抱える地震や原発によって煽られている人々の生活の不安、就職難という自分に身近な問題、それによって引き起こされるこの先どうなるのか分らない精神の不安定。社会的・精神的不安というのは連動しているものだと感じた。それをデザインに落とし込んだ結果、均等に寄せたプリーツを安定した社会・精神状態に例え、問題が生じることで人々の気持ちが振り回され、不安定な状態をプリーツを左右に引っ張り、糸で留めるというデザインにすることでプリーツに動きが生まれ不安定な印象を与えようという意図がある。