KIMURA Mizuka-LAB

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RESEARCH

境界と自然に心を惹かれるのだと思う。 境界とは、エスニックな境界であり、また国境という領土的境界である。 修士課程で回族という中国のムスリム少数民族を研究の対象として選んで以来、 エスニックな境界は常に私の関心の中心であった。 とくに回族という少数民族は、イスラームの信仰がエスニックな境界を規定する重要な要素である。 信仰という内面的かつ選択的なものがエスニックな境界を規定するとはどういうことか。 境界が生み出されていくことの不思議を明らかにすることは、 そうした境界を越えて生きる術を見つけることになるのではないか。 こうした境界への関心が、私の研究を半分駆動させている。 他方、自然はおそらく、私の原風景だ。私は、人間の世界よりも、植物や虫の世界に関心があった。 だから、池袋の喧騒のなかに生きるのは、 本当にしんどいし、山が近くに見えない東京の生活には、息苦しさを感じる。 近年、台湾の先住民族が居住する山間地域や、 四国の中山間地域に通い始めたのは、たぶん原風景への回帰を欲しているからだろう。 そんなわけで現在は、中華圏ムスリムの多文化共生に関するプロジェクトと 農山漁村の地域活性化に関する研究を進めている。


現在進行中のプロジェクト

科学研究費補助金

中国ムスリムの超国家・超民族的ネットワークの構築と多文化共生圏の創出に関する研究 (2018年4月~2021年3月、課題番号:18H00787)

本研究は、中華圏におけるイスラーム的多文化共生圏の動態を明らかにすることを目的 としています。とくに、中国系のムスリム諸民族(回族やウイグル族など)が、中華圏( 中国本土、香港、台湾)や移住先において、ハラール関連産業(ハラール食品の生産・流 通、ハラール料理店の経営)、外国人ムスリムとの商取引、およびそれに付随する通訳業 など、グローバルに展開するイスラーム関連産業に参入することで構築するトランスナシ ョナル(超国家的)、トランスエスニック(超民族的)なネットワークを分析し、新たに 創出されつつある中華圏におけるイスラーム的な多文化共生の動態と在地の論理を明らか にします。また、こうした在地の論理に基づくローカルかつミクロな多文化共生システム を「多文化共生圏」ととらえ直すことで、今日の人類学における多文化共生論に対して新 たな視点を提起したいと思います。

関連するプロジェクト

日本文化人類学会植松東アジア研究基金 エスニシティと多文化共生をめぐる人類学的研究:台湾ムスリム・コミュニティの事例から
(代表者:奈良雅史[国立民族学博物館・准教授])

立教大学社会学部・プロジェクト研究

地域活性化の比較人類学
東アジアの地方コミュニティは、人口減少や経済活動の減退に対応すべく、地域の資源 を活用した産業の活性化(一村一品運動等)、産業の活性化に基づくUターン・Iターン 者など移住者の受入(空家バンクなど)、Uターン・Iターン者の誘致に向けた地域イメー ジの創出、移住者による新たな仕事の創出など、多様な取組みを通して人口減少と健在活 動の減退に対処している。地域における新たな取組みは、Uターン者やIターン者などによ る新たなアイデアに基づき実施されると同時に、既存の社会関係や文化資本などとの微妙 な調整のなかで実施される。
本研究では、こうした取組みの特徴と今後の発展の可能性を明らかにするため、取組み 事例に類似性が見られる日本と台湾の事例を相互に参照し分析する。具体的な調査対象地 域としては、日本の徳島県上勝町と台湾の先住民族村落である新竹県尖石郷[タイヤル族 ]、屏東県三地門郷[ルカイ族及びパイワン族])において調査を行う。合計4年間の計 画(2019年度から2022年度まで)で、それぞれの地域で数回の調査を実施し、最終的に調 査結果を商業出版する。台湾での調査実施に当たっては、国立東華大学原住民民族学院の 民族事務与発展学系に協力を依頼する。

関連するプロジェクト

科技部(台湾)專題研究計畫 (一般研究計畫)
文化照顧在臺灣原住民族的在地實踐――地方創生脈絡下台灣原住民族文化照顧的發展
(代表者:日宏煜[東華大學(台湾)助理教授])

終了したプロジェクト

科学研究費補助金

・代表
台湾における「視障按摩」の興隆を事例とした「視覚障害者文化」に関する人類学的研究
(2016年4月~2019年3月、課題番号:16K13310)
中国ビルマ国境域における民族景観の変容と国境域文化の創造に関する人類学的研究
(2011年4月~2014年3月、研究代表者:木村自、課題番号:23720426)
雲南・ビルマ間における中国ムスリムの越境移動と宗教実践の変容に関する人類学的研究
(2008年4月~2011年3月、研究代表者:木村自、課題番号:10390717)
・分担
台湾先住民の「民族」自治:中国と周辺地域における脱植民化
(2014年4月~2019年3月、代表者:中村平)
インターフェイスとしての女性と中国系移民のディアスポリック空間
(2013年4月~2016年3月、代表者:宮原暁)
グローバル大国・中国の出現と東アジア―学校間交流による学際的研究
(2012年4月~2015年3月、代表者:田中仁)
現代「中国」の社会変容と東アジアの新環境
(2008年度~2010年度、代表者:田中仁)
中国ムスリムの宗教的・商業的ネットワークとイスラーム復興に関する学際的共同研究
(2005年4月~2008年3月、代表:松本光太郎)

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