立教大学理学部化学科 佐々木研究室
SASAKI Lab, Department of Chemistry,
College of Science, RIKKYO University

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ローリングサークル増幅に基づくDNA分析


 DNAやタンパク質などの生体高分子は、その構造に由来する様々な機能を有しています。これを利用することで、選択性や感度に優れた分析法を開発できます。当研究室では、DNAの塩基配列における1塩基の違いを識別可能なパドロックプローブを用いるローリングサークル増幅(RCA)に着目し、その超高感度化や目視検出法への応用に取り組んでいます。
 超高感度化の鍵となるのは、ポリエチレングリコール(PEG)などの電気的に中性な高分子が作り出す分子クラウディング環境です。反応系にPEGを加えることで、増幅効率が向上することを見いだしました。また、1本鎖DNAと金ナノ粒子の相互作用を巧みに利用した目視検出法も実証しています。RCAでは試薬を室温で混ぜるだけで反応が進行するため、機器が不要で結果が目で見てわかる、新たな臨床検査法としての利用が期待できます。

Organ-on-a-Chipによる薬効評価


 1つの薬を開発するのに必要な期間は10年以上、費用は500億円、成功率は3万分の1と言われています。候補物質の薬効や毒性を調べるために、培養細胞や動物を用いた実験が行われていますが、これらが実際の患者と大きく異なるため、成功率が低いという指摘があります。当研究室では、新たな薬効評価系となるOrgan-on-a-Chipの開発に取り組んでいます。
 Organ-on-a-Chipとは、指先サイズの基板上に細胞や生体材料を組み込んで、生体組織や臓器を模擬したものです。我々は多孔膜を組み込んだ独自のデバイスを基に癌や皮膚炎のモデルを構築し、薬効評価に応用してきました。試料・試薬量の削減による低コスト化のみならず、患者由来の細胞を用いた「その人に効く」薬の選定など、創薬・診断分野へ幅広く応用できます。

細胞様液滴の開発


 生体物質化学の最先端では、分子を組み上げて細胞をつくる研究が取り組まれています。マイクロ流路を用いると、細胞サイズの油中水滴を簡単に作製でき、組成の制御も容易です。当研究室では、この油中水滴をベースに細胞の構造や機能を再現した細胞様液滴の開発に取り組んでいます。
 これまでに、独自のレーザー加工技術に基づく液滴形成・アレイ化技術を開発してきました。液滴内で液-液相分離を誘起して生体分子を局在化させるなど、実際の細胞内でみられるような区画化の再現にも取り組んでいます。このような液滴は、生体分子の機能解析の場として、さらには生体組織や臓器を人工的に構築する際の部品としての応用が期待できます。いつの日か、人体を人工的に構築できる日が来るかもしれません。