●2011 『最後の写真』 (2011年7月30日、31日 可児市文化創造センター)(提供:ケーブルTV可児,構成・演出:田室寿見子) 上演作品を視聴する
Memento mori――死を憶うとき 演出家 田室寿見子
東日本大震災の数日後、津波の被害にあった方々がアルバムを探しに帰宅される様子がニュースで流れ、とても胸が痛みました。それぞれの人生が刻まれている写真に寄せる思いの深さは、他人には推し量れないものであったはずです。 ブラジルには、人生の最後を視聴者とともに考える “o Fim do Mundo”(世界の終わり)というTV番組があるそうです。「多国籍参加者に、人生最後をどう過ごすのか、その考え方の違いを聞いてみよう!」とブラジル人参加者が提案してきたのは、今から約一年前のことでした。まさかその半年後に、日本中が真摯に人生の見直しを迫られるとは、そのときには想像も及びませんでした。 こんな時だからこそ明るいテーマを、とも考えましたが、被災地から離れて暮らす私たちには、こんな時だからこそ人生の最後を考えることで日々をよりよく生きるのがいいのではないかと思い、参加者には少々重たいテーマに挑戦してもらいました。「もし、人生の最後に一枚だけ写真を残すとしたら?」との問いかけに、幸せに満ちた思い出や、乗り越えきれていない悲しみが、次々に浮かび上がります。
●2009 『危機一髪』 (2009年7月26日 可児市文化創造センター)(提供:ケーブルTV可児,構成・演出:田室寿見子) 上演作品を視聴する
『危機一髪』について 演出家 田室寿見子
昨年秋から経済危機で外国人労働者の方々も少なからぬ影響を受け、このプロジェクトの参加者も例外ではありませんでした。しかしながら、彼らは明るく前向きで、不安を吹き飛ばすように精一杯演劇を楽しんでいます。 平時は問題にならなくても、社会の情勢が悪くなるときに真っ先に影響をこうむるのはマイノリティにあたる人々で、多文化共生が砂上の楼閣にあることを思わせます。しかしながら、一方において日本人の自殺率は主要先進国の中では最悪の状態が続いていて、大きな社会問題になっています。「危機」とは何を指すのか。不況などの外的要因だけではなく、価値観の持ち方が自らの心に危機を招いていることもあるのではないでしょうか。 『危機一髪』では、いろんな国の人たちの多様な考え方をかいま見ながら、多文化共生の豊かさとおもしろさ、そして難しさを供に考えたいと思います。
●2008 『East Gate』 (2008年7月27日 可児市文化創造センター)(提供:Sin Titulo,構成・演出:田室寿見子) 上演作品を視聴する 『East Gate』について 演出家 田室寿見子
『East Gate』は、国際空港に降り立った人々が入国審査で「日本人」と「外国人」に分けられ、ゲートを出た後も地域住民としてコミュニティーごとに分かれている日本の国際化の一面を描いています。 作品は、出演者がそれぞれの人生で実際に経験したことや感じていることを聞き取り、ワークショップにおいて表現してもらい、それを社会の現実とシンクロさせながら構成していきました。可児市やその周辺に住む外国人がどのような夢や目標を抱いてやって来たのか、それは生活をしていくうちにどのような変化を遂げているのか。地域住民である日本人は、彼らをどのように見つめているのか―関わりを持たないことで穏やかに共存しているという側面が、稽古を重ねる中で見え隠れしてきます。 言語や習慣の違いを乗り越えてコミュニケーションを図ることは簡単ではありません。しかし、それらの違いを乗り越えて演劇に打ち込む出演者たちは、異なるものへの受容と葛藤を繰り返しながら、時に新しい世界観を生み出します。そんな彼らの姿を通して、多文化共生の今後に希望を見出していきます。
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