卒業研究について
卒業研究のテーマ
卒業研究のテーマの大枠は宇宙論・重力 (一般相対論) です。 例えば、インフレーションなど初期宇宙に関する話題、初期から現在にいたるまでの宇宙の進化に関するさまざまな話題、 ブラックホールや重力波など一般相対論に関する話題が卒研のテーマとして考えられます。 また、このような内容以外でも、理論物理学に関することで興味を持って私と一緒に勉強・研究できるテーマであれば、相談の上で自由に取り組むことができます。
理論物理学の研究室なので、式を使って物理を考えることが好きな人 (例えば、解析力学のラグランジアンだとかネーターの定理だとかが面白いと思った人) 向けの卒業研究です。
卒研で具体的にやること
春学期の間は、週1回のゼミ (3時間程度, 原田研と合同) でテキストの輪講をやります。ここ数年は、例えば以下のテキストを使いました。
- 松原隆彦「宇宙論の物理 上」
- B. Schutz "A First Course in General Relativity"
事前にテキストの式をすべて自分で計算し、導出を再現することが要求されます。 そして、内容を自分の言葉で再構築してノートにまとめ、発表します。 「(自分は理解していないけれど) テキストにはこう書いてあるので、こうらしいです。」 というような読み方・発表では先に進むことが許されません。
卒研ゼミに加え、「理論物理学講究1 (相対論)」と「理論物理学講究3 (宇宙物理学)」を履修し、相対論と宇宙論の基礎勉強をします。夏休みに入る前に、一人一人と相談の上、卒研の具体的なテーマ、今後読んでいく論文などを決めます。基本的には、好きなこと、興味のあることを自由にやってくれて構いません。紙とペンだけでできることでも、コンピュータによる数値計算が必要なことでもいいです。これまでの卒論のタイトルを見るとわかりますが、
- インフレーション、ブラックホール、重力波 ...
あたりがキーワードとなるテーマを選ぶ人が多いようです。
何か新しい研究を始めるときには、まずは先行研究となる論文を読んで、その結果を自力で再現するところから始めます。その次に、自分のオリジナルな新しい計算をやってみます。卒研では、特に「論文を読んで自力で結果を再現」という部分がメインになります。当然、その論文だけでわかるようにはなっていないので、その論文が引用している他の論文や、ときには教科書まで戻って非常にたくさんのことを勉強する必要があります。秋学期は、毎週やったことをゼミで説明してもらいます。
配属を希望する人へ
特殊相対論や解析力学、電磁気学、量子力学、統計力学、基本的な数学 (線形代数、微分積分、物理数学) など、必修の講義科目で学ぶ程度の知識は前提とします。 さらに、下記の選択科目の知識も要求されます。特に宇宙論をテーマとして選ぶ場合には非常に幅広い物理の知識が必要になります。
- 必須 (履修しておかないと卒研をおこなうことがきわめて困難になる科目): 「量子力学2」「統計力学2」「物理学演習4」「流体力学」「電磁気学3」
- 強く推奨: 「物理数学3」「宇宙物理概論」「素粒子概論」
4年生になった時点ですべてを完璧におさえておくことは難しいですが、足りない知識は卒研をやりながら勉強してください。そんなようなことを昔勉強したな...という引き出しがあること、必要だと感じた内容を主体的に勉強していくことが大事です。
これまでの卒業研究
2023年度
- 堀井優希 "パルサー・タイミング・アレイによる背景重力波の観測と宇宙論的背景重力波の異方性"
- ジョンジンヨン "重力の物理的自由度"
- 大和田蒼馬 "シュワルツシルトブラックホールとウンルー効果の解析"
- 井出雄大 "エキセントリック・プラネットからホット・ジュピターへの軌道移動における重力波の効果について"
- 平沼果凜 "Slow-Roll Inflation and the Creation of Primordial Perturbations"
- 岡島光希 "ブラックホールの熱力学"
2022年度
- 田村政隆 "単一スカラー場インフレーションのエネルギースケール"
2021年度
- 岡本朱莉 "一般相対論での膨張宇宙"
- 今井端毅 "膨張宇宙のダイナミクス"
- 篠田兼伍 "膨張宇宙におけるスカラー場の量子論"
2020年度
- 畠田優人 "ブラックホール時空の構造"
- 高寺俊希 "スタロビンスキーインフレーションモデル"
- 斎藤仁 "インフレーションによる原始重力波の生成"
- 加藤翠 "ワームホールを用いたスペーストラベル"
2019年度
- 徐霖 "ダークエネルギーの状態方程式と宇宙の密度ゆらぎの発展"
- 芹澤郁也 "一般化されたダークマターシナリオと構造形成"
- 城晨大朗 "ブラックホール周辺の光の軌道"
- 村田知瞭 "非一様なスカラー場によるインフレーション"
- 八木駿介 "ビッグリップ"
2018年度
- 高橋湧太 "重力波を放出する連星系の公転周期の変化"
- 宮崎慎也 "ダークエネルギーモデルの力学系による解析"
- 何 俊逸 "理想流体のブラックホールへの降着"
- 池田拓人 "On the validity of Gauss-Bonnet Inflation"
2017年度
- 亀崎一真 "一般的なラグランジアンにおける曲率ゆらぎのパワースペクトル"
- 小野雅文 "インフレーション理論と宇宙の再加熱"
- 三嶋洋介 "On the Degree of Generality of Starobinsky Inflation"
2016年度
- 那須千晃 "一般相対論と重力波"
- ユ アラン "宇宙の加速膨張モデル"
- 早川和希 "インフレーション理論とスカラー場のゆらぎ"
- 森祐子 "スローロール近似のもとでの原始曲率ゆらぎのモード関数"
- 富川慶太郎 "Slow-roll inflationにおけるLyth boundについて"
- 山本千夏 "一般相対性理論とf(R)理論"
2015年度
- 長島正剛 "インフレーションと磁場"
- 赤間進吾 "R^2 Inflationにおける揺らぎの生成とreheating"
- 千葉龍斗 "重力波について"
- 藤倉浩平 "Hawking Radiation"
- 河井祐樹 "ブラックホール熱力学"
- 彌永亜矢 "インフレーション理論における量子ゆらぎの生成"
2014年度
- 滝口鉄馬 "インフレーション理論"
- 菅谷勇太 "ビッグバン宇宙論とインフレーション"
- 野中悠太郎 "宇宙の加速膨張"
- 岡口佳史 "重力波について"
2013年度
- 橋田陽平 "重力レンズで探る強い重力場"
- 小川潤 "一般相対性理論と重力波"
- 秋田悠児 "インフレーションの観測的検証に向けて"
- 松原元気 "宇宙項問題"
- 土屋信明 "高次元ブラックホール"
2012年度
- 荒井佑介 "インフレーション宇宙論"
- 土井勝博 "宇宙の加速膨張~宇宙定数以外の可能性、Quintessence とは~"
- 西咲音 "重力波について"
- 浦野祐作 "弦理論によるブラックホールの理解に向けて"
- 畑竜太 "Nonlinear and Born-Infeld electrodynamics"