本ワークショップは、大学内で「省エネ」の風景を見つけてカメラにおさめ、映像化し、観賞して話し合うという一連の作業を通して、省エネとは何かを参加者同士で考えるものである。 講師の中西紹一氏は、コミュニケーション戦略開発プランナーとして、数多くのプロジェクトに参画し、企業のコミュニケーションや広告戦略に関するコンサルティング業務を行っている。
1.【私にとっての省エネって?】
最初に、「それぞれが感じる省エネとは何か?」をスケッチブックに一言で表現する作業を行った。その後、自己紹介も兼ねてそれぞれが紙に書いたことを発表した。「マイ箸を持つ」、「ムダづかいしない」、「節約する」などの日常的な省エネ活動や、「日常生活ではテレビをつけっぱなしにしている」などの反省点、「省エネと私の位置関係」を図示したものなど、さまざまな表現がなされていた。
2.【省エネの意味と観察について】
中西氏から、省エネは「資源やエネルギーを効率的に利用すること、すなわち日常生活の見直し」であるという説明があった。そして、1週間水洗い不要のシャツや、バナナの皮が省資源であること等、日常生活における新たな省エネの発見を、ユーモラスに話していただいた。
また、プロダクトデザイナーである深澤直人氏の「±ゼロ」のデザイン事例を何点か挙げ、日常生活の中でじっくりと観察することによって、おもしろいデザインや新たなものが生まれる可能性があること、「観察すること」は「考えること」であり、「観察のプロセス」は「思考のプロセス」であることを説明し、観察の大切さを参加者に伝えていた。
3.【キャンパス内での省エネ探し】
省エネを探して映像化する作業を行うために、音楽ジャンルの好みで3グループに分かれた。省エネの探し方、写真の撮り方などに関する説明があった後、キャンパス内の省エネを探しに出かけた。約1時間の観察時間内に、キャンパスマップを見ながらあちこちを歩き回り、グループメンバーそれぞれが省エネだと思う風景をカメラで撮影していった。キャンパスで遊んでいる子どもを被写体にするグループもあり、各グループで趣向を凝らして撮影している様子が見受けられた。
4.【省エネを表現する】
撮影した写真の中から30枚程度を選び、LIFE with Photo Cinemaという映像作成のソフトに組み込んでいった。このソフトは、写真を映画のようにきれいに編集することができ、シーンに合わせた音楽を組み込むことが出来ることから、省エネの風景を映像作品の一つとして楽しむことが可能となる。
大きなスクリーンに映し出された省エネ映像作品を鑑賞した後、シーンごとに、「なぜその写真を撮ったか」を撮影者が説明した。二重窓を使用している建物や、建物の壁面に絡みつくツタ、太陽の光を浴びて昼寝をしている学生など、観察者の視点の鋭さが感じられた。
省エネといってもさまざまな視点があることを改めて実感することができた。また、観察したものを映像化し、その意味を他の参加者に説明することによって、それぞれが学んだことや観察したことを振り返り、より深く心の中に刻み込むことができたように思う。
本ワークショップは、省エネについて改めて考え直す良い機会を参加者に提供することができたといえるだろう。
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