北米大陸に広がる湖水地方“ノースウッズ”を舞台に、自然と人間の営みをフィルムに収めつづける写真家・大竹英洋氏を講師にお招きし、不思議にみちた北方林の世界、そして、自然を旅することの「意味」について、スライドを交えてお話頂いた。
大竹氏は、大学時代より国内外の自然を旅して思索を重ね、1999年に初めてミネソタ州北部の森を訪れた。それ以来、写真家としての活動を開始。現在は、カナダ北方林を含めた「ノースウッズ」の森で、野生の意味・自然と人間との関わりを問う作品を制作し、写真展や絵本などを通じて、それらを発表している。
「過去へのタイムトラベル。ノースウッズでの旅は、過去との繋がりを感じる、そんな時間だった。」大竹英洋氏の語りと共に映し出される北米ノースウッズの森とともに、今回のスライドショーでは、日常を離れ、遠く彼岸の忘れかけた「あの頃」へとトリップする、そんな神秘的な非日常的な時間をとなったのではないだろうか。
学生時代、ワンダーフォーゲル部でのハイキングを切掛けに、大竹氏は、幼少時代に持っていた自然への漠とした好奇心、憧れを自らの中に「(再)発見」していく。その後、世界中の森を旅し、ミネソタ州北部からカナダに拡がる「ノースウッズ」と呼ばれる森に魅せられていく。
アメリカにおいて、偶然巡り会うこととなった友人、ウエインと共に過ごした三週間のノースウッズでのカヌーの旅を綴る場面では、自然と共に旅をするウエインの、「カヌー」という、人工物でありながら、湖と森という環境に適した乗り物、1000年以上も前に書かれたとされる先住民による壁画、山火事によって焼けたノースウッズの森、そこから芽生える新たな生命、遭遇した「野生動物」、などについての写真が、大竹氏が「北米の森で感じたこと」と共に映し出され、参加者を畏界へと誘う。
そして、大竹氏はウエインの言葉を借りてノースウッズでの三週間の旅を、「最初の一週間は、日常から離れる時間。真ん中の一週間は、自然に浸る時間。そして、最後の一週間は、再び日常へと戻るための時間。」であると振り返る。この日のスライドショーに集まった来演者は、日常から離れ、大竹氏によって「再現」されたノースウッズの自然に浸ることが出来たのではないだろうか。 |