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イベントレポート

【2008/10/25(土)公開講演会:ナショナル・トラストにみる持続可能な環境教育】

山崎瑛莉(文学研究科)
日時: 2008年10月25日(土)13:00~15:00
場所: 立教大学池袋キャンパス8号館8201教室
題目:

ナショナル・トラストにみる持続可能な環境教育

講師:

小野まり氏(特定NPO法人 ナショナル・トラストサポートセンター理事、英国ナショナル・トラスト日本人会事務局長)
中安直子氏(社団法人 日本ナショナル・トラスト協会)

司会:

橋本俊哉(立教大学ESD研究センター・観光学部)

後援:

The National Trust/外務省/駐日英国大使館/(社)日本ナショナル・トラスト協会/(財)日本ナショナルトラスト/大成建設自然・歴史環境基金/グレイトブリテンササカワ財団/(株)阪急百貨店

協力: 英国政府観光庁/日本航空

<はじめに>
 約100年にわたる英国ナショナル・トラストの環境保護の歴史と現在、未来への展望、そして近年の英国ナショナル・トラストが最も力を注いでいる次世代の育成について小野氏より具体的な事例紹介がなされた。また、中安氏からは日本の現状をふまえ、日本のナショナル・トラスト活動のフィールドにおける事例紹介および課題提起がなされた。

<英国のナショナル・トラスト>
  英国のナショナル・トラストは、1895年に啓蒙活動を中心とした非営利団体として設立された。その後、自然景観と歴史的建造物の保護を使命とし、寄付金をもとに買い取られた土地や建造物の修復作業、管理維持などすべての責任を負うという方法で活動を行っている。ピーターラビットで知られるビアトリクス・ポターが買い取って寄贈した湖水地方や、ジョン・レノンの幼少時代の住み家なども保護地域となっている。この運動は広く市民に受け入れられており、英国中に広がる保護活動は地元ボランティアの多大な力により成り立っている。英国議会の評価も高く、ナショナル・トラスト法の制定につながり、買い取られた土地や建造物は譲渡不能となっている。このように、英国のナショナル・トラスト運動は国全体で取り組まれている。
  こうした活動を維持し、次世代へつなげていくための取り組みとして建造物の修復作業を依頼する業者に対して必ず若い弟子を採用して連れてくることを前提条件としたり、高校生など若い世代の意見を聞く機会を設けたり、子どもたちも自然に親しめるように家族で参加できるボランティアイベントを企画したりするなど、幅広い活動が行われている。英国ナショナル・トラストの取り組みは、持続可能な環境教育を考える際に大きなヒントとなるであろう。



<日本のナショナル・トラスト>
 日本におけるナショナル・トラスト運動は、英国に比べてまだ知名度が低いと言わざるをえない状況にある。その最大の理由は、英国のように全国協会がすべての保護地域を管轄するという方法ではなく、日本各地に散らばる活動団体が個別に管轄しているという点があげられる。そのため、活動の理解推進や寄付金の募集は個別の小さな取り組みにとどまり、全国的な動きにつながっていない。その中でも、日本の保護地域第一号である鎌倉や、釧路湿原、知床、石狩湿原などは、自然保護地域としても観光地としても有名な場所であり、活発な地元のボランティア活動に支えられている。日本は英国と比べて規模は小さいが、美しい自然景観や建造物が多数残っており、活動意義は十分にあると考えられる。メディアを活用した募金活動の展開などは有効な手段であると考えられる。

<所感>
  英国・日本ともに多くの事例や写真によって実感を持ってお話を聞くことができた。中安氏は、自然や歴史的建造物の保存のように公益性の高い活動は本来行政が行うべきだと指摘する。民間でしかできない活動、行政だからこそ可能な役割、それぞれがよりよい形で協働することが大切ではないだろうか。私たち自身も、こうした保全活動に対する意識を問い直し、寄付だけでまかなわれるような特別な事業としてみるのではなく、自然を身近に感じ自ら保全活動に参加していこうという考え方を持てるような社会のあり方を考えていくことが必要である。持続可能な開発のための教育のひとつの可能性として、日本のナショナル・トラスト運動の今後の行方に注目していきたい。

 

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