◆講義内容
ドイツのESDの始まりは、92年の地球サミットで提唱された「持続可能な開発(SD)」にある。ドイツの環境教育が変化する転機は、70年代の学生を主体とした住民運動が、80年代~90年代になると環境NGOを設立した時に見ることができる。従来の環境教育は、生物、化学、地理といった自然科学系の教科ばかりで社会的視点がなかった。それが、1980年代の「エコ教育学運動」により、経済的・社会的側面から環境政策と環境教育を捉えるようになり、SDが定着してくるとESDも本格化する。さらに、2003年のPISA(OECD生徒の学習到達度調査)ショックをきっかけに、コンピテンシー・モデル開発の圧力が追い風に、全日学校への投資プログラムが開始されるようになる。
国連欧州経済委員会(UNECE)のESD戦略とは、評価基準やインジケータの作成には、政府がどのように関わるとESDが発生するのか、そして政策的・行政的な意思決定者に注目している一方で、コンピテンシー・モデルには、感情やモチベーションなどの認知レベルを評価しており、両方を合わせて教育の品質を保障するものであるとしている。しかし、インジケーター・セットに対しては、イエス・ノーという評価によるフィルタリングが働いているのに、質的評価をしているという批判がある。
ドイツのESDで提唱されている創造コンピテンシー概念には、3つのキー概念がある。それは、①ツール、②異質な集団での学び、能力、③自分で決める、自律的に活動、である。創造コンピテンシーでは、自律的な活動がとても重要になっている。そして、Transfer-21プロジェクトでは、学校で創造コンピテンシーを育成することを目標に掲げている。特に、中学校・高校で盛んである。
他方、環境教育が盛んな学校ほどESDを取り入れない傾向がある。
学校の先生と学外の協力者との連携の一例(チョコレートのワークショップ)
ドイツの教育基本法には、生徒が学校経営に参画することを認めている。また、生徒企業なども生まれている。これには、企業、行政、教師、親の協力が必要不可欠である。
国内実施計画として、学校以外におけるESD認定プロジェクトがある。その基準は、コンピテンシーを育てる、参加的な考え方、SDのうち最低2つを含む(文化多様性など)としている。また、学校外教育や継続教育など、地域ネットワークの向上にも努めている。チューリンゲン州のNPOは2回受賞した。2009年8月、代々木で、国際的な協調として「ハロージャパン2009」が開かれる。
現代社会問題へのアプローチを通じた異文化理解、社会参加、他者との共存を目的としている。
デハーン教授は、「プロジェクトベースではなく、社会参加を。教育が社会に対して開いていく必要がある。」と述べている。
創造コンピテンシーとは、個人が未来を作る力であり、個人をベースにおいているのが、ドイツのESDの特徴である。
◆参加者からの質問
経済産業省が、「社会人基礎力」として2006年から取り組んでいる。EUの調査から進める傾向があるので、日本ではキャリア教育・高等教育で進められているが、同じような概念をドイツでは子どもに行っているのかもしれない。
トランスファー21は、持続可能な発展のための教育をめざすためにあり、ESDを定着させることで、学校力をあげることにある。日本では、DESDからESDをみているが、ドイツでは、ESD or notということではなく、ESDの手段として位置づいている。カリキュラム作りがメインで、ドイツは教育構造自体を変えていく。もちろん、キャリア教育にもあるが、ESDとはまた別の取り組みとして広く行われている。
ドイツの中では、自然教育を批判した形でESDが出てきた。社会を変える。
ドイツのESDはどこにルーツがあるのか?ユネスコの生涯教育?開発政策と経済政策の要請にEEがこたえる形で出てきたのならば、ドイツのEEの発展はやはりESDとなるのでは?
EfSから始まったESDなのでは?EEとESDの層とは違うのでは?→EEの人が批判するのは、自分たちのものと違うのではという意味なのでは?
ドイツのEE学会は、ESDをどう捉えているのか?BLK(国と州の教育プログラム)プログラムでは新しくEEを捉えている。
国が勧めるプログラムをすることによって、資金収入があり、ひいては学校や校長の評価が上がるという側面もある。
ドイツの校庭の機能は日本と違い、学校はあくまで勉強するところのみ。エコロジー校庭は、子どもの居場所や子どもの参画の機会になる。
ESDワークショップの教材は、BLKプログラムで作成され、トランスファーで広がった。
今までのEEプログラムをESDに組みなおすほうが現実的。ESD的読み方(組み直し方)を学びたい。
日本では、京都では宿泊教育の際、ホテルではなく、農村の民家に泊まる事がすでに始まっている。
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