立教大学 ESD研究センター
HOME
研究センター概要
研究プロジェクト
学部・大学院への協力/サイバーラーニング
新着・イベント情報
成果物
ESD×CSR指針/人材育成プログラム
関係機関リンク
English


logo
イベントレポート

【2009/7/30(木)ESD研究会 
           海外における環境人材育成の取り組み~英国・米国・タイ・中国を事例に~】

  櫃本真美代(ESDRC)
日時: 2009年7月30日(木)18:30~20:30
場所: 立教大学14号館 D601教室
題目:

「海外における環境人材育成の取り組み~英国・米国・タイ・中国を事例に~」

講師:

早川有香・大田絵里(財団法人 地球環境戦略研究機関)

主催:

立教大学ESD研究センター

    

 財団法人地球環境戦略機関(IGES)早川有香・大田絵里を招き、海外の高等教育機関における、環境人材育成についての現状についての報告をしていただいた。

英国-オックスフォード・ニューキャッスルの事例
 英国の環境プログラムの特徴は、既存の教育に環境を取り入れた形になる。よって、環境が専門的というわけではない。
 授業形式は、基本的な知識は講義、その他にセミナー形式、リーディング、ディスカッションである。
 独立大学院で、両方ともマスター・ドクターがある。しかし、教員は、学部を持っていない。
 就職率95%とあるが、社会人学生ということもあり、元の職場に戻る率が高い。
 入試は、高等教育の成績とあるが、学部時代(大学卒業時)の成績が重要視されている。留学生は、英語のスコアが重要となる。倍率は年によって違う。オックスフォードは30名の枠に、300人ほどの受験者があった。留学生は全体の約70%で、アジア・アフリカからの留学生が占める。留学生の一部は英国内で就職するが、ほとんどが帰国する。しかし、ニューカッスルは国内の学生を確保することをポリシーとしているので、卒業生は地域で就職することになる。
 30名の学費しか入らないとなると大学の経営はどうなのか?政府から支援があるのか?資金を分配する政府機関による、プログラムのプレビューがある。

米国-森林学をベースとして、自然資源学などが主流。イェール・デューク大学の事例
 米国の環境プログラムの特徴は、教授が教える講義形式ということはあまり無く、現場を重視し、ディスカッションが多い。みんなで話し合い、学びあうというスタイル。
 米国の大学自体の特徴は、卒業後も大学のネットワークを大事にすること。それは、インターンシップを紹介してもらったり、寄付をしてもらったりすることにもつながっている。それは、社会のニーズに合う人材を育成するだけでなく、大学に貢献できるような人材を育成することでもある。
 学生の10%がダブルマスターであり、環境学のほかに、ビジネスなど学んでいる学生がいる。

中国-同済大学
 ヒューマンスキルに力を入れているが、アメリカと違ってまだ難しい(発言がない)。
 授業は英語で行われるので、先生が大変。
 工学出身なので、社会学系の教員が不足。

タイ-アジア工科大学・チュラロンコン大学
 環境分野を卒業すると、公的分野に就職するので、企業の理解(寄付)が課題となっている。
 外部資金の取得が活発である(教員の実績)。政府からの支援に頼っている。

質疑応答
 イェール大学の教員と学生の共同とあるが?これは、教員のプロジェクトに学生が参加・体験やインターンなどを示す。
 社会人はやめてくる。卒業後の進路は、職場復帰し、大学でのマネージメントを活かす。または、コンサルやNGO(日本と異なりお金がある)に就職する。日本は、専攻と卒業後の進路が異なることが多いが、アメリカは入り口・出口が同じであり、森林学を卒業しても就職口がある。
 社会人経験プラスマスターがある、という経験は、雇用主にとってどうなのか?専攻科目の要求があるわけではない。履歴書をインターネットでアップしている。インターンやハンティングも兼ねているし、大学側が組織的にポータルサイトにアップしている。ほとんど全員がアップしている。また、企業からの情報もある。
 大学の選定は何を基準にしたのか?環境リーダーに焦点、名門大学と環境学が有名、聞き取り調査が行いやすい等で選定した。また、英語のプログラムであることも考慮した。選定の調査には、環境管理で選定したが、ほとんどの大学が文理融合型である。
 今回は、学生にも聞き取り調査をしている。サスティナビリティを勉強しているが、名前に誘われ、中身が薄いということは無いか?お金を払う価値はある。教員とのディスカッション・設備も充実し、フィールドワーク・プロジェクトもある。授業は大変だと聞くが、面白くないとは聞かれなかった。
 今回は、環境リーダーで修士限定で行った。
 環境のことを知らないと、マスターに入って修論を書こうにも力が無い。単位をとらせるなど、知識の問題。理科系の大学を卒業して俯瞰力というのならわかるが、リテラシーをつけさせるのではない、となると難しいのではないか。また、例えばイギリスの1年マスターのあの授業だけで、環境の俯瞰力がつくのかどうかも疑問である。いろいろなバックグラウンドをもった学生と話し合う(俯瞰力)ことを保証しているともいえる。個人個人の学びを重視するという、大学のスタンスにもある。
 アメリカのネットワークは大学側、アルムナーオフィスというものがあり、卒業生の動向も把握している。米国の大学はビジネス化している。ただ、エリート校ならではの大学戦略でもあり、寄付、文化、税制が違う。
 日本では、政府の支援(文科省・環境省)で2年前ぐらいから始まった。インターンシップ・留学生などを対象としている。その背景は、アジアの地域内で行うというコンセンサスがある。アメリカだと文化などで困難を感じ、アジア・近い・技術などの面から、日本でも行えればいいのだが、英語のプログラムが無いという欠点がある。留学生は、日本語を学ぶよりかは、英語で勉強をしたがっている。段々と、英語プログラムにはなりつつある。これは、留学生対応と同時に、日本人の語学力アップにもつながる。
 日本の大学院教育に取り入れるべきものは?工学技術はあるがヒューマンスキル(発表・プレゼン・ディスカッションなど)が足りないというのがあるが、これが全てではないのではないか。まるで、勝ち負けが正しいかのように。大事なのは、コーディネーター力で、みんなで行うというのが、日本型、自然調和型なのではないだろうか。
 海外では、社会のニーズにどのように対応するかでプログラムを行っている。日本を考えると、どのようなニーズかを把握し、各大学の特性を活かさなければならない。
 日本では環境系の学生の行き場が無い。英語ができたとしても。制度を作っていくと同時に、雇用の創出を政府が考えなければならない。NGOでの就職は日本では難しい(市民社会化)。広い意味で職場を考えなければならない(環境省だけではなく)。日本ではNGOでは食べていけない。例えば、損保ジャパンでインターンしてもNGOに就職する人がいない。環境人材の出口をオールジャパンで取り組む必要があるのではないか。その際、ESDがポイントとなる。

←新着 ・ イベント情報へ戻る ↑ページトップへ
Copyright 2007 Rikkyo University. All rights reserved.