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イベントレポート

【2010/7/5(月)~7日(水)アジアにおけるESD指導者養成ワークショップ
                                  ~グローバリゼーションをどう学ぶか~】

 チャリダー・ピヤタムロンチャイ(ESDRC) 
日時: 2010年7月5日(土)~7日(水)
場所: アジア学院(栃木県那須塩原市)
題目:

アジアにおけるESD指導者養成ワークショップ

講師:

プラヤット氏、ナイヤナ氏、プリサナー氏(ISDEP:持続可能開発促進研究所)
チャチャワン氏(ランナー文化を学ぶ会・オルタナティブ教育ネットワーク)

主催: 立教大学ESD研究センター
共催: 学校法人アジア学院、NPO法人開発教育協会
    

 本ワークショップは、立教大学ESD研究センターアジアチーム「参加型開発アクション・リサーチ・プロジェクト」の成果を検証することを目的に、アジア学院の協力を得て開催された。プロジェクトパートナーである北タイNGO・ISDEP(持続可能開発促進研究所)とともに、2007年度から3年間、タイ・チェンマイにてNGO若手スタッフを対象に、開発教育協会の教材活用をベースとした人材養成セミナーを開催した。その成果をISDEPが2009年度末にマニュアルという形でまとめた。2010年度には、そのマニュアルを活用し人材養成セミナー・ワークショップを開催、アジア各国の地域開発のフィールドでどのように活用できるか検討し、ESD指導者養成プログラムの開発へとつなげる計画となっている。本ワークショップはその第一歩である。


ワークショップのねらい
 アジア学院は、アジア・アフリカなどの農村地域でNGOのコミュニティワーカーとして活動している人たちのための指導者養成学校である。研修生約30名は、アジア、アフリカ、ラテンアメリカなど各国から参加しており、地域開発の現場を持つワーカーである。それぞれ直面している多様な課題の中でも、特にグローバリゼーションという現象を村人とともにどう理解し、対処していくかというテーマは現代における喫緊の課題といえる。そこで今回は、参加型学習を通じてグローバリゼーションをどう学ぶか(教えるか)というテーマに特化した。

 

ワークショップのスケジュールと概要

7月5日(月)  午前 ①オリエンテーション・目標共有
             ②研修生の自己紹介・活動紹介
             ③セッション(1)「参加のはしご」

         午後 ④セッション(2)「グローバリゼーションとは」

7月6日(火)  午前 ⑤セッション(3)「グローバリゼーションとコミュニティ」
         午後 ⑥セッション(4)「グローバリゼーションを村人にどう伝えるか」

7月7日(水)  午前 ⑦ふりかえり~各自の活動につなげる

*フォーマルなセッションの他、チャチャワン氏による「オルタナティブな社会とは~ローカルウィズダム」「北タイのNGOの歴史から学ぶ」と題したインフォーマルセッションが行われた。



オリエンテーション 田中治彦氏より挨拶、趣旨説明


研修生の自己紹介・活動紹介
ワークショップに先立ち、研修生がどのような活動をしているか、特に自分自身が地域や組織の中でどのような役割を担っているか、ということを共有してもらった。ワークショップ全体を通じて、常に「自分はどう考えるか」「自分に何ができるか」という視点を意識してもらうためである。また、グローバリゼーションという全体テーマに関連して、自分の活動地域・コミュニティがコミュニティ外、特に国外からどのような影響を受けているかについて考えてもらった。参加者からは、「安いにんにくが輸入されるようになり、生産農家が困っている」などの具体例が共有された。

 

セッション(1)参加のはしご 田中氏
 参加型開発および参加型学習を考える上で、ロジャー・ハートの「参加(参画)のはしご」の考え方は有効である。参加のはしごは子どもの参画についての説明であるが、開発プロジェクトなどにおける支援者(村人など)の参加度を測る上でも援用することができる。
参加のはしごは、参加度の低い「操り参加」から最も参加度が高いとされる「大人を巻き込む参加」まで8段階に分けられる。
 セッションでは、研修生自身の活動の中での支援対象者の参加を考える作業を行い、活発な議論がなされた。「参加のはしごはシンプルだが、さまざまなコミュニティで応用することができる」「何を目的とするのか、どのような環境なのかによって目指す参加のレベルは異なるのではないか」「女性の場合はいきなり上の段階を目指すのは難しい」など自分たちの活動に引き寄せた具体的なコメントが多く見られた。

     

 

セッション(2)グローバリゼーションとは
 現代社会では、世界各国の村の隅々までグローバリゼーションの波が届いており、地域コミュニティは様々な影響を受けている。しかし、村人にとって新しい事象であるグローバリゼーションを理解することは難しい。そこで、本セッションのねらいは、コミュニティワーカーである研修生たち自身がグローバリゼーションを深く理解し、わかりやすく村人に伝えることができるようになることである。
 グローバリゼーションは良い面、悪い面の両面あるが、ここではコミュニティへのマイナスの影響に焦点をあてる。グローバリゼーションからイメージするキーワード抽出や、身近なグローバリゼーション(消費行動、国境を越えた人の移動、携帯電話、広告の影響など)を考えるアクティビティを行った。また、The Story of Stuffという、グローバル企業による影響をわかりやすく描いた映像資料を視聴し、議論を行った。市場経済の行きすぎや、大量生産大量消費がいかに環境破壊を招き、格差を拡大させているかを理解するとともに、「もったいない」などに代表される価値観の見直しなどの意見も出た。

     

 

セッション(3)「グローバリゼーションとコミュニティ」
 本セッションでは、具体的なグローバリゼーション学習の事例をタイのコミュニティでの経験をもとに共有した。ISDEPがタイの村で行った「羊の村の物語」のアクティビティを解説。物語の中に出てくる村や登場人物(羊、虎、ライオン)になぞらえて、グローバル企業や仲介人、政府などの力がどのように村に影響を及ぼしているのかを考える。これはISDEPが開発教育の教材やワークショップからヒントを得て、自分たちの状況に合わせてアレンジをした新しいアクティビティである。この学びのポインとは、自分たちの状況に合わせてアクティビティを作り、実施すること、参加者の意見交換を重要視すること、現実のコミュニティの状況を理解する上での具体的な情報を収集し提供することなどである。村人に馴染みのある題材を使うことによって、村人のコミュニケーションを促進することができる。

      

 

セッション(4)「オルタナティブを創る」
 本セッションでは、グローバリゼーション学習を研修生自身がどう活用するか、アクションプランにつながるような事例を学び、学びのプロセスの概念化をはかった。ISDEPの土地改革プロジェクトの事例をもとに、自分自身の活動コミュニティをより深く理解することで、もともとあった意思決定システムや伝統的な方法を活用したり、自分たち自身のやり方を見つけて行くことが大事であることが強調された。
 そもそもグローバリゼーション学習の最終的な目標は、市場経済一辺倒の現在の社会とは異なるオルタナティブな社会の創造である。最終的にはコミュニティの住民(村人)自身がコミュニティプランを作成できるような学びのプロセスを作るサポートをしていくことが、コミュニティワーカーや外部者の役割である。

(注)学びのプロセス:
コミュニティの課題分析→目標設定→情報収集と自己評価(点検)→コミュニティプランづくり→実施


ふりかえり
 4つのセッションを通じて学んだことを、消化不良にならないよう整理し、理解を深めることをねらいとし、ふりかえりの時間を持った。
 研修生の活動の中で、すでに参加型開発のさまざまな取り組みが行われており、相互の経験共有も行いながら意見交換を行った。プロジェクトの場合は、スポンサーや資金、時間的制約などがある中で、参加型で行うことは簡単ではないが、「村人と目的やビジョンを共有していくことが大切」「自分の地域でもオルタナティブな地域づくりを始めたい」「改めて自分の地域を見直せた」「若い人を巻き込みたい」など、それぞれの学びが深まった。

 最後にチャチャワン氏と田中氏からコメントがあった。「グローバリゼーションは、自分たちの地域だけで解決できる問題ではない。他の地域との相互の関係の中で進行している現象である。だからこそ、ネットワークを作り、協働する基盤を作ることが重要である」とのチャチャワン氏のコメントで締めくくられた。

 

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