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イベントレポート

ECO-Opera!
「学校ビオトープと環境教育・ESD」

 P.C. 櫃本真美代(ESDRC) 
日時 : 2011年9月27日(火) 18:20~21:00
場所 : 立教大学 池袋キャンパス 太刀川記念館3F 多目的ホール
題目 : 学校ビオトープと環境教育・ESD」
講師 :

田邊龍太氏((財)日本生態系協会)、金下玲子氏(フリーランス)

主催 :

立教大学

共催 :

立教大学ESD研究センター

    

【講演内容概要】


田邊龍太氏((財)日本生態系協会)
 日本生態系協会は、自然生態系を保全するために、くにづくり、まちづくりの観点から、総合的に政府や国会議員等に政策提案を行うシンクタンクである。
 ビオトープはドイツが発祥である。当協会では、くにづくり、まちづくりに進めるときに、ビオトープの保全や再生を考えたドイツのまちづくりに感銘し、日本国内において持続可能なまちづくりをすすめるときの考え方として広く導入を図った。あわせて、学校ビオトープや園庭ビオトープについては、環境教育・ESDの一つの素材としてとても教育的価値があると考え、普及し始めた。1999年からは、全国から寄せられる「身近な先進事例を教えてもらいたい」というお問い合わせに応えるために、「全国学校・園庭ビオトープコンクール」を隔年で開催し、全国各地の興味深い事例を発信している。
 はじめに、ビオトープという考えが生まれてきた理由を考える。現代の社会や経済は、水・大気・土・太陽光・野生生物(生物多様性)で構成される自然生態系を基盤にして成り立っている。このことは、私たちにとっての自然の恵みを整理した「生態系サービス」を見れば明らかである。こうした自然生態系の健全さはその地域の野生生物の存在で知ることができる。地域に元々いた生物が今なお生息していることが、自然の豊かさ、そして健全な生態系を示すものであり、持続的に経済・社会を営んでいくために必要な生態系サービスが健全に機能していることの一つの目安ともなる。ちなみに、昨年名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)でも、生物多様性と名がついているが、議題としては生態系全般の保全である。そして、生態系を保全し、かつ持続的に生態系サービスを受けるためにどのような社会・経済へと転換すべきかが盛んに議論されていた。
 こうした健全な生態系を持続させる上で、ドイツで生まれたビオトープを踏まえたまちづくりが重要となる。ビオトープとは、地域の野生生物がくらす空間を意味する。私たちの周りにある、森や草地、池、海浜など、これらは全てビオトープである。野生生物は、一生涯の内、ひとつ、また複数のビオトープと関わりながら生きている。例えば、いま佐渡島で野生復帰を目指しているトキは、子育てをする「森」、食べものをサワガニやドジョウなどがいる「湿地」というタイプのビオトープが欠かせない。このことを踏まえて、ドイツでは、絶滅に瀕する種のリストとあわせて、絶滅に瀕するビオトープのタイプのリストをつくり、優先的に保全、再生をする必要があるビオトープを整理し、長期的なまちづくりの計画の中で保全や再生を位置づけている。さらに言うと、自然と共存した持続可能なまちづくりをおし進めるとき、ビオトープネットワークが求められる。これは、「ビオトープをかたまりで残してつなぐ」ことをいう。ビオトープがネットワークされることにより、野鳥など空飛ぶ生物だけでなく、タヌキなど地を歩く動物も安心して移動し、新しい個体と出会うことが可能となる。直接的にネットワークができないところは、飛び石でも構わない。企業の敷地や学校などでのビオトープも、こうしたひとつの拠点となりうる。こうした考え方は、日本の環境関係、またくにづくり、まちづくりの法律や計画の中にも「生態系ネットワーク」という単語などで記載されるようになった。

   (ドイツなどでのビオトープの保全や再生の事例を紹介)

  全国学校・園庭ビオトープコンクールの受賞事例からいくつか興味深い取り組みをご紹介する。
 越谷市立大袋東小学校(埼玉県)では、子どもたちが主体になって学校ビオトープの改修案を考えた。野生生物の生息しやすさを考えて、友達同士で意見をつき合わせたり、専門家の意見を聞いたりし、いろいろな考えを一つの案にまとめる合意形成が盛んに行われていた。また環境教育では関心や知識、技能をもとに、その発達段階に応じた行動につなげていくことが欠かせない。自然が大好き!大事にしたい!と思った子どもたちが、その思いを行動に移す場が学校ビオトープである。前述した、子どもたちが自然と共存したまちづくりを考えるとなると規模が大きく難しい面が、まずは学校敷地内において野生生物のための土地利用や環境改善を考え、実践したことを追跡・評価することは可能であろう。
 江東区立南砂小学校(東京都)では、学校ビオトープでの保護者や一般向けの観察会を子ども自身がリーダーとなって定期的に行っていた。またコンクールの発表会で、学校ビオトープからさらに野草が生えるところを拡大させるために校長先生を説得するんだ、と子どもたちがアピールしていたのも興味深い。また、近隣の住民からカエルの声がうるさいという苦情があったときには、子どもたちが中心となり、どの程度のうるさいのか数値を調べ、道路や住宅地の音と比較しながら、ウェブサイトで公開討論を行ったこともあるとのこと。こうした活動を通じて、子どもたちは地域において生物多様性を守るために必要な合意形成の仕方を経験していたと言えよう。
 低年齢期の子どもたちにおける園庭ビオトープの価値についても考えてみる。この時期の子どもたちには、主体的、創造的な遊びを展開する素材を提供することが大切である。体を使った遊び、ごっこ遊び、生物探し、工作など、日によっても異なるこうした様々な子どもたちの興味関心に園庭ビオトープは対応することができる。
 わが国の学校ビオトープや園庭ビオトープ推進の方向性を見てみよう。例えば、2010年に策定された生物多様性国家戦略2010では、100年後の都市域の将来像として、学校や園にビオトープが設置され、そこが地域のコミュニティのつながりが強くする場になることを掲げている。また、環境教育推進法の基本方針や、幼稚園施設整備指針、小学校(中学校)施設整備指針にもビオトープづくりや郷土産の植物の植栽などが明記されている。
 最後に、学校ビオトープや園庭ビオトープの課題についても触れる。まず、施工や管理活用の資金不足が挙げられる。これについては、早くつくってしまおうとすると費用がかさむ傾向にある。様々な人たちが参加し、時間をかけてつくれば費用は減っていく。子どもの参画の仕方で悩まれている学校もある。また、持続的な管理活用について課題に挙げる教育現場も多い。課題解決には、学校の全ての先生方、また保護者の方々が地域の自然に対する理解を深めること、生物多様性を題材とした教育についての理解を深めること、また地域や専門家との連携が大切となる。

金下玲子氏(フリーランス)
 もともと、教育関係の新聞社で、学校教育や教育行政の取材をしていた。現在は環境教育、まちづくりに関するNPOやフリーの仕事をしている。学校ビオトープに関することは、おもに阪神・都市ビオトープフォーラムで活動している。メンバーは阪神間の行政職員、学校関係者、研究者、企業などで、情報交換を中心にした活動をしている。
 阪神・都市ビオトープフォーラムを設立した1995年には関東ではもう、学校ビオトープがかなりできており、関西でも学校で作りたいという動きになった。
 その中でも神戸市の小学校は、震災の影響もあり166校中約100校と多くのビオトープが整備された。しかし、10年、15年経った今、ビオトープへの関わりが希薄になっているのでは、という声もあり、神戸市環境局から実態を調べたい、どういう支援ができるか検討したいという話になり、昨年度からフォーラムで業務を受託している。
 今回、事例を紹介する街区公園・阿波座南公園(大阪市西区)のビオトープは、大阪市の「わくわく公園づくり」事業として、2003年度にビオトープをテーマにした公園改修計画が持ち上がり、地域住民や関係者が参加するワークショップを中心に公園ビオトープがつくられた。
 私の関わりは、公園に北接する市立明治小学校でのクラブ活動コーディネーターとして2004年度からクラブ活動の支援。
 ビオトープの様子は、最初の年、気持ちよく始まったが、(ビオトープとしての維持管理計画が明確でなかったこともあり)知らない間に動植物が移入されたり、清掃作業の負担感が聞こえてくるようになるなど課題も出てきた。その中でも、地域主催でイベントを開催するなどし、5年目くらいには水辺の様子やトンボの出現も安定してきた。
 ひとつの転換点は、2009年に実施した「かいぼり(池の底ざらい)」イベント。初めてのかいぼりは、多くの参加者もありビオトープへの関心も再び喚起できたが、その直後にアメリカザリガニの移入に遭い、ひと夏でアサザが全滅するなど水辺の環境が激変。ここが第二の転機になり、この課題に地域住民や公園管理者と取り組む流れができ、今年度行ったビオトープに関わる体制の再編、再出発へとつながっている。
 これが8年間のビオトープのおもな流れである。
 学校の取り組みのポイントは、「ビオトープから学校ビオトープへ」移ってきたということ。公園ビオトープを借りた学校の活動から、「学校ビオトープ」と言ってよい内実になってきたと思う。この小学校は、大阪の中心部に位置し、おもに商業ビルや高層マンションに住む子どもたちが通っている。2004年度から実施しているビオトープクラブは、15人から20人の子どもと年間約15回活動し、担当の先生と一緒に実施している。出来るだけ地域の人とふれあいたので、公園と公園内にある地域の会館で実施している。
 レギュラーでやっている活動は、▽ビオトープ池と校内のコンクリート池の違い、生き物の違いを知る活動▽観察活動▽公園内にあるドングリの森に関連した活動−など。クヌギの実生を一つほりあげて一つひとつが生きていること、ビオトープでは生きものどうしがつながっていて生きていることを教える。また、年に1回、2回は生きもの専門家を招いて活動する。やはり子どもたちにとって本物の専門家が来るとインパクトがあるようだ。
 子どもたちのクラブ活動を地域のお祭り「ビオトープフェスタ」にも関わらせたいという思いがあったが、当初は、土日の地域行事にクラブの子どもだけに参加要請することに対し学校の負担感が大きかったので、イベントチラシにクラブの子どもらの絵を入れるなどの形から参加することにした。しかし、数年後、校長や担当教諭が参加しようと言ってくれ、クラブの子どもらが出し物もするようになった。
 学校に関わる当初思ったのは、どのくらいの期間関わることができるのかということ。校長が変わると「ビオトープなんて…」と言われることも他では多い。行政もだが、学校の職員の異動は宿命である。そこで、地域と関わらないと継続して関わるのは難しいと思った。最初の校長はたまたま学校ビオトープの経験がある人だった。クラブの活動内容のことで町会からクレームがあったときも、校長が表に立ち、自由に活動をさせてくれた。校長や教頭の異動を経たが、現在の校長もビオトープや環境教育への理解が深く、支えてもらっている。担当教諭も、2年くらいで変わっていくが、関心が高い人、子どもと一緒に浸る先生などいろいろなスタンス。それでも数年やっている内に、教諭の方から「(来月は)3週連続して活動できるから、まとまった活動もやりたい」「こういう活動や指導をしたい」という具体的な活動の提案が出てきてくれたことがうれしい。こちらにすべて活動内容を任せてもらって、「来週もよろしく、さよなら」という関係から、先生が何をしたいか、子どもたちに何を知ってもらいたいかといった先生の思いと私の思いを交換できるようになってきた。すべての先生がビオトープに関心を持ってくれてきたというわけではないが、子どもたちの活動の場であるビオトープを学校や地域、みんなが支えると言う気持ちになり、普通のことになってくれればいい。
 最後に、地域と繋がる学校ビオトープに向けて地域のコミュニティがどのようにビオトープに関わってきたかについて。
 地域の人たちにとっては、計画・整備時はワークショップをやって楽しかった思い出になっている。しかしいざ出来ると、アオミドロが出てきたりして、暑い中、やぶ蚊がいる中で町会の女性職員が掃除する日々が続き、「ビオトープが嫌いになった」と言う。また、ビオトープの周りに柵が設置され、自由に入ることができないため多くの人にとって近寄りがたく、戸惑いと困ったという空気が感じられるようになった。
 整備時からの町会長は、地域の核にしようとビオトープを大切にする思いもあり、リーダーシップの強い方でビオトープの継続のために尽力してこられた。しかしその一方で、ビオトープへの思いは「人それぞれ」だ。
 関心が薄くなる中、4年目から助成をもらって地域組織は「ビオトープフェスタ」を行うようになった。丸6年経って池底にヘドロが溜まり、水質の悪化も目立ってきた時には、私から「『かいぼり』、面白いですよ」と地域リーダーの次世代層や公園管理事務所担当に声がけをした。この活動の準備ではパートナーシップという観点で地域コミュニティ・学校・行政・NPOのつなぎ役を意識して関わった。このような経験を経て、ビオトープに対しても、お祭りや地域の盆踊りのように、地域で役割を決めてやる、あるいは肩の力を抜いてやるという雰囲気が出てきた。
 今、ビオトープを育てていくことを通して、異世代交流、地域の教育活動、学校教育、子育て支援など、防災について語る関係が見えつつある。「ビオトープフェスタ」は、異世代交流を目的にした「親子でグリーンフェスタin明治」へと引き継がれている。
 今年度からは、学校の支援に併せて子ども会の役員としてビオトープに関わることになった。これまで私の地域との関係はどちらかと言えば第三者、アドバイザーだったのが、身内にしてもらったようなもの。また、ビオトープに関心の高い地域の人が地域活動全体のコーディネーターとして動いているのも見える。
 この中で、子どもたちの学びの場としてのビオトープを支える組織づくりをきっかけに、まちづくりをどうパートナーシップですすめるかを提案し、意見交換をすすめることが今後の宿題だ。

 この後、会場の参加者からの質疑応答を行った。質問には、活用したいのだが蚊やアオコの問題を地域に迷惑をかけずにどうしたらいいか、ビオトープの効果・指標化、学校と地域の連携などの質問が出された。

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