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2009年度全学カリキュラム総合B科目:
 「ESD-持続可能な開発と教育 <持続可能な世界はいかにして可能か>」

 

【第10回 環境教育(1)】
2009年6月24日(水)  担当:阿部 治


 環境と聞いて思いつくことばを出してみる。自然、環境問題、身の回りにあるものなどが挙げられると思う。環境、の「環」という字は「わ」とも読み、「まわりを取り囲むもの」という意味である。明治時代にenvironmentという語を翻訳する際にこの言葉をあてはめたのである。私たちの身の回りにある環境は、46億年の歴史をもつ。長い間、地球は安定した生態系を保っていたが、人間が現れたことでその安定した環境に影響を与えるようになった。古くは8000年前の農耕から考えられるという。このような、人間と環境の関係についてみていきたい。

 [DVD]『伝説のスピーチ』セヴァン・スズキ
 1992年『環境と開発に関する国際会議(環境サミット)』ブラジル:リオ・デジャネイロにおいて、子ど も環境運動の代表として、未来の子どもたちのために地球規模の問題に対する真剣な対応を強く 求めた。

 環境問題を問うことは、逆に嫌悪感を示してしまう人もいる。「環境ぎらい」と呼ばれるものである。こうした人々に対してどうやって関心を持ってもらうか、どう教えるかということを考えていかなければならない。これが環境教育である。
 環境問題といってもその中身は多様である。汚染や野生動物の絶滅危機、騒音など、地域から地球規模までその範囲は広い。年表や映像を参考に、日本の環境問題について考えてみたい。

 [DVD]日本の四大公害病
 1960年、池田隼人首相のもとで日本は所得倍増計画に乗り出した。その後の経済成長は目覚まし く、1968年にはGNP世界第2位の経済大国となった。しかし、その裏では深刻な公害問題が発生し ていた。富山県のイタイイタイ病、熊本県の水俣病、三重県の四日市ぜんそく、新潟水俣病のいわ ゆる四大公害病のほか、北九州市の大気汚染や田子の浦でみられた大量のヘドロ被害などであ る。こうした問題を受けて、1967年に公害対策基本法が制定された。

 四日市や水俣などは現在、環境都市として生まれ変わっているが、その背景には環境教育があり、その重要性がみてとれる。小説や映画などでも環境問題を取り上げているものがあり、身近に理解できるものがある。レイチェル・カーソンの『沈黙の春』(1962年アメリカで出版、翌年日本語訳出版)は、世界で初めて環境問題を訴えたとされる。また、アニメ映画『おもいでぽろぽろ』は、日本で有機農業を始めた山形県高畠町の星寛治氏をモデルに描かれたものである。

 身近な問題としての公害や環境問題の定義は必ずしも明確ではないが、9つの分類をすることができる。しかしそれぞれが複雑に絡み合っており、一度進むと後戻りできないという特徴を持つことは変わらない。また、国際社会の取組みも多様である。しかし、中国やインドのように、開発と規制が同時進行している国に対してどのように対応するかということは大きな課題である。日本の環境対策は国際的には批判を浴びており、より踏み込んだ対応が求められている。日本自身が持つ生物多様性の問題の原因としては、以下3つが考えられる。①生息地の破壊、②里山の崩壊、③帰化生物の出現、である。これらの問題に対する取り組みも地球サミットなどを通して検討されている。

 こうしたことをふまえて、持続可能な社会を確立するための視点として重要なことを考えてみる。まず、「持続性」といったときには次の3つの持続性があることを確認する。
1)生態的な持続性:循環型社会、生物多様性
2)社会的、文化的、経済的な持続性
3)健康的、精神的な持続性
 これらの持続性を持つ社会を確立するためには、地域的な視点と世界的な視点の2つが重要となる。人と自然の共生・人と人との共生<地域的な視点>と、地球環境保護に向けた取り組み(平和・人権・民主主義の確立)<世界的な視点>である。この2つの視点のもつ3つの要素をいかに具体化していくか、ということが重要であり、そのプロセスが環境教育なのである。

  日本政府のSD戦略としては、2007年に閣議決定された「21世紀環境立国戦略」があげられる。しかし、これは3R(リサイクル・リユース・リデュース)のことしか言っておらず、欠陥があるといえよう。日本の環境政策の最大の課題は「持続可能な社会へのビジョンがない」ということであり、ここにも環境教育の必要性がみられる。持続可能な開発のための方策としては、①技術開発、②法制度の整備、③意識改革が求められる。③意識改革には、「つながり(関係性)学習」「2つのソウゾウリョク(想像力、創造力)」、「人間力の醸成」が重要であるが、これらに対して貢献しうるのが環境教育やESDであるということができる。

 

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