立教大学 ESD研究センター
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立教大学ESD研究センターでは、立教大学の学部や大学院の教育に協力しています。

2009年度全学カリキュラム総合B科目:
 「ESD-持続可能な開発と教育 <持続可能な世界はいかにして可能か>」

【第13回 持続可能な世界とはいかにして可能か】
2009年7月15日(水)  担当:田中 治彦

1.振り返りシートへの記入
  A.授業全体を通して、もっとも印象に残っていること、あるいは一番学んだこと
  B.「持続可能な社会(世界)」のための条件は何か。

2.『もののけ姫』はESD
  次に、映画『もののけ姫』を観ながら、開発と環境の問題を整理し、持続可能な開発のための教育について総括をする。

<場面1>
  主人公アシタカが怒りに侵された獣を討った際に、鉛のツブテを見つける。このツブテのもつ意味と自分の運命を知るために西をめざす。
<場面2>
 タタラ場での生活を知る。そこで目にしたものは、女子も元気に働くタタラ場(古来の製鉄)だった。包帯を巻いた「癩病」の存在などを通してアシタカは困惑する。
サンと山犬が村を襲う。アシタカは双方の間を取り持ち、大ケガを負いながらサンと共に村を出る。

⇒この場面までで、登場人物がでそろう。開発(タタラ場)と自然(太古の森)、ジェンダー、らい病で隔離される人々、反目しながらも共棲している獣たち、などである。それぞれの特徴は、まさにESDが問題とする内容(開発、環境、人権、多文化共生)を表している。

<場面3>
 エボシによる神殺しがおこなわれる。生と死の二つをもつシシ神の首が新型の銃(ハイテク兵器)によって取られ、太古の自然は失われていく。アシタカとサンによって首が返されると、再び山に緑が戻るが、そこにはもはやかつての野生の自然ではなく、現在の姿の山々と小さくなった獣たちであった。アシタカとサンは、お互いに理解を示しつつも違う場で暮らすことを選択する。

⇒全体を通して描かれているのは、シシ神のいる自然とタタラ場を中心とする開発の場との対立である。最後の場面で新しい自然が生まれたことで、この対立を止揚させた(ひとつ上のステージにあがった)といえる。
 しかし、なぜアシタカはタタラ場に残ったのであろうか。もし村に戻ったら、一種の武勇伝で終わってしまう。また、サンとともに山に行けば「愛は地球を救う」というような陳腐なメッセージになる。アシタカがタタラ場に残ったのは、タタラ場と山との解決に向けた取り組みを模索するためである。これを持続可能な開発のための教育に照らし合わせると、アシタカは「開発と自然」との対立問題を解決するための議論を促し調整する、ファシリテーターの役割であるといえる。
このように、『もののけ姫』はESDを体現している作品なのである。

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