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2009年度全学カリキュラム総合B科目:
 「ESD-持続可能な開発と教育 <持続可能な世界はいかにして可能か>」

 

【第7回 食と農】 授業資料
2009年6月3日(水)  担当:上條直美


はじめに―ワークシートを配布「食と農~私たちの暮らしと『選択』」
各自で記入した後、まわりの人と意見交換をする。

 近年、日本では自然分娩をできる女性が減ってきているという。帝王切開や早期出産という形で産まれるのである。また、乳児に対してお乳が出にくい人も増えている。これは、脂質の増えた食事を摂っている母親の乳腺が詰まってしまうからである。食と生活、そして私たちの身体がつながっていることの証明である。ここでは、そうした食と私たちの生活について考えていきたい。

 本授業の全体テーマでもある、「持続可能な社会を作る」ということと、私たちのまわりにある持続可能ではない食の存在があるという事実の関係をどのように考えていくか、ということは大きな課題である。たとえば、ブロイラーと呼ばれる鶏は、早い成長をする種の雄とたくさん子どもを産む種の雌を掛け合わせてつくられた改良種であるが、成長して49日目に出荷されてしまうので卵を産むことはない。そのため、業者はブロイラーを売るには、その親鳥を買い続けなければならないという構図となる。また、しょうゆは物によって値段が異なるが、その違いは、「従来の大豆から作られているしょうゆ」か、「食品添加物で作られているしょうゆ風調味料」かである。このような違いを知ったうえで私たちは何を選択するのか、が問われるのである。

 世界では現在、約10億人が飢餓状態にある。その原因は紛争やHIV/エイズなどの疾病、女性差別などである。しかし2008年に起こった食糧価格高騰は、サブプライムローンの破綻による穀物市場への投資参入や、バイオ燃料用の穀物生産への切り替えなど、農産物が食べ物ではなく商品として扱われはじめたということである。ある試算によると、現在地球で生みだされる食糧によって、今生きている人々のほとんどをまかなえるという。しかし現実は、植民地主義の構造を引き継いだ自由貿易構造の影響による飢餓が生まれている。その構造は私たちが作り出したものであるがゆえに、私たちの選択の仕方によって変えることができるはずだ。また、日本は先進国ではほぼ唯一の食糧輸入国である。輸入にともなう水(バーチャルウォーター)の問題も無視できない。

 さらに日本の食糧自給率は1960年の80%から2000年までの間に半減し、現在40%程度である。自給率はカロリーベースや生産額ベースなど考え方は様々であるが、安く他国から輸入をしようとしていることは事実である。農業自体も、明治時代の近代化政策以後、循環型であったそれまでの日本の形態は崩れ、石油エネルギーを使った農業へと進んできた。このように、世界的な飢餓問題、日本の食糧輸入事情、農業の変化等を知った今、私たちがこれからの食の選択をどのように考えるか、ということが重要となるだろう。

 では具体的にどのような取り組みが考えられるのか。たとえば、有機農業の認証制度や、エネルギー循環型地域社会づくりなどは各地で進められている。また、フェアトレードの発想もおおいに参考になるだろう。現在の貿易構造への問い直しとして重要である。このような様々な取り組みが、私たちの社会にどう位置づけられているかということも、今後ぜひ考えてみてほしい。

 

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