更新日:2020年10月27日  Version 19.1
 

社会調査のページ

社会調査法と大学院科目の解説

 

大学院社会学専攻 調査計画法

「統計的社会調査法とデータ分析」

立教大学 村瀬 洋一


★各自の研究テーマは、ブラックボードの掲示板に書き込んでください。

   データファイルの例   データ入力方法の説明   グラフ例のエクセルファイル   お礼状例のファイル

   予備調査データ(学内のみ) 


データ分析の資料

      練習用データファイルや調査票について  ★資料ページはここをクリック

調査実施の資料

      必要標本規模nを求めるエクセルファイルや調査員の手引き見本など
  ★資料ページはここをクリック


仙台調査 SPSS分析実習用データ

 資料ページを見て、テキストファイルの分析実習用データとプログラムのファイルを、各自で保存しておいてください。

 まずは、以下の2つのテキストファイルを、自分のディスク(USBメモリーや、ホームHドライブ)に保存すればよいです。

   se97prct.txt (練習用データ)

   s7v1.sps   (SPSSプログラム(シンタックス)簡略版)



1.目的

 統計的社会調査法の実施能力を身につける。
 調査データの実践的な統計分析法を身につける。
 計量社会学や社会階層研究の先行研究の概要を理解する。社会学において、大規模な社会調査が どのように実施され、どのような成果を挙げてきたかを学ぶ。

 2018年度 目的と日程PDF

 

2.課題

課題1

 何らかの社会調査結果が載っている文献をコピーして持ってくる。学術雑誌に掲載されている論文をコピーすること。

 これを元に、各自の調査項目を考える。

 

課題2

 ProquestデータベースやJSTOR、SAデータベース(sociological abstract)などを使って、自分の研究に必要な、英語文献のリストを作ってください(立教の図書館で使えます。これらやSSCIが無料で使えるのが立教の図書館の大きな特徴です)。最低限、上記3つのデータベースは使いこなしてください。図書館ホームページを見て、どのようなデータベースを使えるか確認してください。また使い方が分からない場合は、図書館でよくきていください。

 ただし文献リスト形式は、このホームページ最後に記載の、参考文献リストの形式をよく守ること(日本社会学会『社会学評論』や数理社会学会機関誌『理論と方法』の文献リストと同じ形式。これらの雑誌を見て形式を真似する)。またリストには、American Sociological Review やAmerican Journal of Sociology など審査制学会誌の目次をよく見て、ここ数年以内の新しい論文を必ず含むこと。形式によく注意して整備した文献リストを作成する。まずは、図書館ホームページにある、各種の雑誌文献データベースを使いこなせばよい。

 

その他

 SSJデータアーカイブ(Social Science Japan Data Archive; 東京大学社会科学研究所内)やICPSRなどのデータベースを使うと、自分の研究に有用な、過去の調査データを入手することができます。立教の社会科学系図書館から問い合わせることもできます。まずは、図書館ホームページのオンラインデータベースICPSRの解説を読んでください。
 SSJを経由しミシガン大学ICPSRから国際的なデータを入手することも可能です。例えば、「世界価値観調査」などの社会調査データも入手できます。まずは自分で、SSJホームページにて検索すること。SSM調査や、教育問題、環境問題に関する調査データも、私の指導のもとで使うことができますので、希望者はメールで相談してください。

 

3.内容予定

1)海野・原(2004)を用いた社会調査の実習
   テキストを用いて、無作為抽出法やエラボレイション、コウディング、
   評定法、尺度構成法などの実習を行う
   最後に、偏りのない質問文や、よい調査票の作成法を学ぶ

2)分析ソフトSASかSPSSを用いた社会調査データの分析実習
3)計量社会学に関する学術論文を読み討論
4)調査票を作成し本格的な社会調査に参加

 希望があれば、SPSSシンタックスやロジスティック回帰分析などの実習も行います。

4.社会調査法とは 簡略な解説


5.参考文献  ★は村瀬による解説

 文献リスト形式は、必ず著者名と発行年を最初に書く。その後、書名と出版社(雑誌論文の場合は論文タイトルと雑誌タイトル)を書くこと。2行に渡るときは、以下の奈良の本のように、2行目を半角4つあける。文献は著者名のアルファベット順に並べる。また欧文著者名は姓を先に書く。
テキスト
 1)原純輔・海野道郎.2004.『社会調査演習 第2版』東京大学出版会.
    ★調査法のテキストとしてはもっともよくできている。各章の作業と問題
     をやるととても力がつく。作業はかなり大変ではあるが。

     巻末資料の、調査票や「調査員の手引き」は役に立つ。

その他参考書


大谷信介他編.2005.『社会調査へのアプローチ 第2版 −論理と方法』ミネルヴァ書房.
 ★不適切な質問文の例が多く役にたつ。職業の測定は記述が不適切。

与謝野有紀他編.2006.『社会の見方、測り方 −計量社会学への招待』勁草書房.
 ★各種分析法の解説。

原純輔・浅川達人.2005.『社会調査』放送大学教育振興会.
 ★実践的な内容について、よくまとまっている。

盛山和夫.2004.『社会調査法入門』有斐閣.
 ★かなり難解だが、私の講義準備用としてはとても有用。院生以上向き。


天野徹.2002.『統計学の想像力 −覚束ない未来のために』ハーベスト社.
朝野彦.1996.『入門多変量解析の実際』講談社.
ボーンシュテット・ノーキ.1990.『社会統計学』ハーベスト社.
原純輔他編.2000.『日本の階層システム』1〜6.東京大学出版会.
井上文夫他編.1995.『よりよい社会調査をめざして』創元社.
 ★郵送調査の具体的な実施法の記述は分かりやすい。
石村貞夫.1998.『SPSSによる多変量データ解析の手順』東京図書.
海保博之編.1985.『心理・教育データの解析法10講』福村出版.
狩野裕・三浦麻子.2002.『グラフィカル多変量解析―AMOS、EQS、CALISによる
  目で見る共分散構造分析』現代数学社. 
岸野洋久.1992.『社会現象の統計学 (シリーズ社会現象の計量分析1)』朝倉書店.
栗田宣義編.1999.『データブック社会学』川島書店.
 ★日本の代表的な社会調査のデータを紹介した資料集。
内閣総理大臣官房広報室編『世論調査年鑑 : 全国世論調査の現況』大蔵省印刷局.
 ★毎年発行される。日本での世論調査を集めたもの。質問文など参考になる。
直井優編.1983.『社会調査の基礎』サイエンス社.
直井優他編.1990.『現代日本の階層構造』第1〜4巻.東京大学出版会.
小野寺孝義他編.2004.『SPSS事典 BASE編』ナカニシヤ出版
Rodeghier, Mark. 1996. =西澤由隆・西澤浩美訳.1997.『誰にでもできるSPSSによ
  るサーベイリサーチ』丸善.
佐藤博樹他編.2000.『社会調査の公開データ 2次分析への招待』東京大学出版会.
谷岡一郎.2000.『「社会調査」のウソ リサーチ・リテラシーのすすめ』文春新書.
渡部洋編.1988.『心理・教育のための多変量解析法入門 基礎編』福村出版.
 ★分析法について、初心者向けに分かりやすくまとまっている。
山際勇一郎・田中敏.1997.『ユーザーのための心理データの多変量解析法』教育出版.
安田三郎.1971.『社会移動の研究』東京大学出版会.
安田三郎・原純輔.1982.『社会調査ハンドブック(第3版)』有斐閣.
    ★古いがこれがもっともよくまとまっている。質問文例など参考になる。

NHK放送文化研究所世論調査部編.1996.『世論調査事典』.東京: 大空社.  ★調査の紹介、調査手法について詳しく記述がある。倫理、著作権についても記述がある。


6.各種資料

 ★調査員の手引き見本
  原・海野.2004.『社会調査演習 第2版』東京大学出版会 巻末の、手引きや調査票見本も見るとよい

 ★必要標本数nと誤差範囲の求め方エクセルファイル
  公式を簡単に計算するためのエクセルファイル。

 ★調査票の見本は冒頭の「練習用データファイルのページ」を見てください。

 ★調査企画書の見本ファイル 準備中
  調査準備には、よい企画書を書いて、周囲とよく相談することが重要です。

 ★調査費用の計算用エクセルファイル
  費用を計算するためのエクセルファイル

 エクセルファイルは、リンクを右クリックして「対象ファイルを保存」としてください。

 調査の標本数nは、誤差を5%ほど認める場合、400人程度となります(母集団人口により少し変わるが385人前後)。ただし、現実の調査では、結果を男女別に分析したい場合、800は必要なのです。また、当然ながら、男女別や年齢別の分析をすることは多いので、1600は必要となります。回収率が5割ならば、さらにこの倍3200人が必要です。理想的にはこのくらいのサンプル数はほしいところです。


7.仮説とは何か

 よい調査をするためには、よい仮説をもとに質問を作ることが重要。仮説とは、原因と結果の、2つの要素を含む文である。例えば、「環境に興味を持つ人は多い」のような文は、原因を含んでいないので、仮説とは言えない。「高年齢ほど、環境に興味を持つ」ならば、年齢と興味という2つの要素があるので良い仮説である。年齢、性別、学歴、職業など基礎項目に関する仮説は、すぐに作ることができるだろう。

 なお、統計的検定の際の帰無仮説とは、簡単に言うと、原因と結果が「無関連」という意味の仮説である。

 統計的検定とは、分析の初歩である。これは、関連の有無を見ているだけで、関連の大きさについては言及していない。有無について、1,0で考えると言って良い。関連の大きさについては、検定以外の方法で分析することになる。

 質問をいくつか作ろうとしても、基礎項目以外は、なかなかうまく作れないこともある。そのような時は、まず、いくつかの仮説を考えてみるとよい。その上で、必要な質問項目の候補について、自由にアイデアメモを書いてみると良いだろう。また、安田・原『社会調査ハンドブック 第3版』の中には、質問文例が豊富にあり、参考になる。


8.調査費用について ご参考まで

 調査費用の多くは、調査員の人件費である。例えば、サンプル数800人の標準的な社会調査で、50人の学生調査員を雇い、1万円ずつアルバイト代(と交通費)を払えば50万円、金−日の3日間で150万円かかる。回収率を高くするためには、さらに長期間の回収が必要である。東京など大都市では、回収率が低くなりがちなので、最低限、金−月の4日間、回収期間をとった方がよい。土日のみ、などだと、かなり回収率が低くなる。
 費用は、サンプリングやバイト代、謝礼代に予算を使わなければ、かなり安くすむ。つまり、学内で学生のみが答える調査は、調査票の印刷費数万円以内でできる。学外でも、学生実習として(学生にアルバイト代や交通費を払わずに)調査を実施すれば、事前のお願い状の郵送費と調査票印刷費だけで実施は可能である。1000サンプルの調査で50人の学生が参加しても、合計20万円もあればできるだろう。1票200円の計算である。
 ただし、高回収率をあげるためには、とくに土日の夜まで、しっかり調査員を働かせた方がよい。その場合、ふつうはかなりの人件費がかかる。また、謝礼やお礼状、調査本部の電話代なども必要である。

 なお、私の経験では、大学で調査実習をする場合は、無理に学外調査を、学部の調査実習としてやる必要はない。とくに1,2年生など訓練不十分だと、学外で実習をするのは、最近は難しいのである。苦情電話への対応や学外との連絡におわれて、その分、学生を指導する時間が少なくなる。ある程度、学生の訓練が終わった後に、研究目的で意味がある場合には、学外での調査実習をやるとよい。学生を学外に出すのは、学生にとってはかなり良い経験であり、調査の技能の継承のためにも必要であるが、訓練が終わっていない学生を突然外に出しても、苦情が殺到するだけで良い結果にはならない。まずは、学生を学内でしっかり訓練することが重要である。とくに、教員の調査経験が少なく、この数年以上、実際に無作為抽出等をやったことがなかったり、学外で調査をやったことがない教員ばかりの場合は、教員が、苦情や事故への対応がうまくできないので要注意である。まずは、学内でしっかりした調査実習をやることが重要。



9.調査実施時の注意点

 企画書を作り、質問項目を作り、サンプリングを行い、関係部署に挨拶し、予備調査を実施した後、調査票を完成させれば、調査準備は完了である。調査準備として何が必要か、具体的に書いていない調査法のテキストは、実は多いのである。本を読んでも、どうすれば高回収率でかつ歪みの少ない、適切なデータを得られるかは、分からないだろう。ただ『社会調査演習』の巻末資料には、「調査員の手引き」見本がある。具体的で参考になるので、見てみるとよい。

 回収率を上げるためには、とくに以下のことに注意すること。最近は不在が多く、人々のプライバシー意識も高く、治安の問題もあるので、かなり注意しないと回収率は厳しい。

 1)事前に対象者へお願い状を送る
    対象者の選び方、調査主体、調査の意義等を丁寧に説明。対象者の選び方を詳しく書かないと、なぜ住所を知ったのか、という苦情電話がたくさんくるが、説明不十分なお願い状は多い。
    白やクリーム色の紙に、必ず角印を押し、公式文書のような固い文書のイメージにすること。印象がよく信用がある。
    できれば手書きで数行、書き添えると良い。
    大学の封筒で、連絡先をきちんと書き、インチキ調査でなく、調査主体が大学だということを分かってもらえることが重要。
    連絡先電話(携帯でないもの)の他、Eメールやホームページアドレスを書いても良い。
 2)調査員の指導
    調査員のやる気がもっとも重要である。説明会にて、調査の意義をしっかり説明し理解してもらう。
    土日の夜を含めて複数回、訪問するように指導することが大切。
    不在のお宅には、繰り返し何度も訪問することを徹底させる。夜8時すぎまでは何度か訪問かないと、とくに単身世帯からの回収は難しい。
 3)調査時期
    月末、決算期など、人々が多忙で留守がちな時期は避ける。月の後半より前半がよい。
    回収率のためには、土日の夜を含め3日間以上は必要。
 4)調査員配置
    賃貸アパートが多い場所や、土日の夜は、調査員を多めに配置する。
    できれば男女1組で。女性は郊外の安全な住宅地が良い。
 5)調査本部を設置
    調査員へ連絡、苦情受け付け、事故待機、現場を巡回。
    当日は、何人かで調査現場を巡回し、調査員の様子を見て励ますとよい。


10.調査結果のデータ入力法


詳しくは応用調査実習ページ参照



 調査が終わったら、結果を数字のファイルにすれば、SPSSなどの分析ソフトで
簡単に分析できる。
 以下の例のように、半角数字のみを入れる。数字のみを入れると、
エクセルやSPSSに数字を入力するよりのとくらべ、半分以下の時間ですむ。


注意点
 半角数字のみを入れる。余計な空白や、とくに全角空白や余計な改行は入れないよう
注意。その点に注意すれば、とくに難しいところはない。
 改ページごとに半角空白を1つ入れる(分かりやすくするためでとくに意味はない)。

データの形式見本(2人分)

1101 32400232 10100011 110113110 22099 9621 4317
1102 13101421 11212111 121114112 12299 9631 4317

 この例だと、はじめの4桁はサンプル番号。その後、問1で3、問2で2、
問3で4と答えている。


その他注意点
・複数回答項目(Multiple Answers)は、○がついているものは1、ついていなければ0と入力
  例えば、問1-7まであり、234に○の場合、0111000 と入力
・無回答は9または99を入力
・始めにサンプル番号を入れると、どこまで入力したか分かるし、チェックの時によい
・ワードやメモ帳など何で入力しても良いが、保存時はテキストファイル形式で保存する。
 保存時に「名前をつけて保存」を選び、保存形式ボックスをクリックして形式を選択する。

★入力が終わったら、数字の打ち間違いがないか、再度確認する。2人1組で、調査票の数字を読み上げて、ファイルの数字と合っているか確認するとよい。
また、すべてのデータの空白位置がそろっているかどうか注意。
最後に余計な空白や改行マークがないように。
 データファイルが完成したら、SPSSやSASのプログラムを書いて、分析する。
応用調査実習やSPSSのページなどを参照。見本のSPSSシンタックスを見て
データ定義文を書くと良い。



あなたは1998年04月08日以来  回目のアクセスです。

    2002年 3月28日   3482 アクセスを記録

    2003年 3月26日   4980 アクセスを記録

    2005年 4月 1日   9329 アクセスを記録



村瀬研ページに戻る

All Rights Reserved, Copyright(c), MURASE,Yoichi
ご意見、お問い合わせは、お気軽にどうぞ E-mail : murase rikkyo.ac.jp