素粒子グループでは、場の量子論や超弦理論などに基づいて、素粒子物理学の理論的な研究が行われています。
私たちのグループは、時空・物質・相互作用を統一的に記述する量子重力理論の構築に向けた超弦理論・場の量子論の解析、ゲージ/重力対応の検証と応用、量子色力学に基づくクォーク・グルーオン系における摂動・非摂動効果の解明など、素粒子物理学分野の多岐にわたる研究を推進し、多くの成果が得ています。また、活発に開催されるセミナーや研究集会などを通じた他大学の研究者との共同研究や研究交流が盛んに行われています。数理物理学や数学との関連が重要であるという観点から、立教大学 数理物理学研究センターとも密接な連携を図り、学術交流や研究活動の活性化を推進しています。
以下では、研究内容の紹介が見られます。
ホログラフィー原理の量子情報論的側面 (森 崇人)
『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』
これはフランスの画家ポール・ゴーギャンの名作のタイトルですが、私の研究の中心となる問いも同じです。私たちの宇宙はどう生まれ、どう発展し、どうなっていくのか。時間・空間とは何か。そのような問いにホログラフィー原理と量子情報を用いて迫ろうとするのが私の研究テーマです。
アインシュタインが提唱した一般相対性理論では重力を幾何学として定式化しました。しかし、特異点やブラックホール情報喪失問題など一般相対性理論では説明できない謎が残っています。そこで、一般相対性理論を超えた、重力の微視的記述(量子重力理論)を記述するフレームワークが必要とされています。その試みの1つにホログラフィー原理というものがあります。この考え方では、(量子)重力を一次元低い量子系から理解することができます。この量子系の例の1つとしては共形場理論があります。離散的な場合はスピン系など、物性理論でも盛んに研究されています。
その中で21世紀以降に発展してきた手法が、量子情報理論を用いた解析です。D. Pageによるランダム状態を用いたブラックホール蒸発の議論や、量子もつれの指標と時空の面積を結びつけた笠・高柳公式の発見以降、ホログラフィー原理やブラックホールにおける量子もつれの解析や情報論的な模型の構築が行われてきました。私はこのような背景をもとに、de Sitter時空(≒私たちの宇宙)などがどのようにホログラフィーで実現できるのか、実現できた場合にどのような制約があるのか、を量子情報の模型(ランダム状態・ランダムテンソルネットワーク)や理論(量子誤り訂正、非局所量子計算)を使って調べています。そのほか、ホログラフィー原理において幾何学的に量子情報量を調べたり、そこから量子情報理論への新たな知見を得る研究をしています。他には因果構造やKrylov複雑性など、ダイナミクスに関わる研究も行っています。