to our Future Colleagues
分子配向機能の創出 -高分子を並べてみよう-
当グループでは、このような高分子や液晶物質をはじめとするソフトマテリアルに、分子配向技術を駆使することで、新たな機能をデザインして実現していくことを目指しています(Soft-Desigend Materials)。液晶性を有する有機分子や高分子を合成し(synthesis)、集め(assemble)・並べ(align or orient)、組織化(organize)し、機能(function)をデザインする研究を進め、学生の一人一人が、合成→組織化→構造解析→機能評価、分光および散乱、顕微鏡観察まで、材料研究の「ひととおり」を一貫して経験しながら研究を進めます。分子集合体が、“並び”・“動く”ことによって発現する機能を、おもに“光”によって動くフォトクロミック分子を駆動力として設計します。ソフトマテリアルを分子(ナノスコピック)レベルからより大きな(メゾスコピック)レベルへの組織化・階層化やハイブリッド化を通じて機能を増幅、新たな機能を創発します。
当グループで一緒に研究しませんか?
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ブロック共重合体のミクロ相分離構造を光で並べる、動かす
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空気界面からの液晶高分子の光配向制御
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運動性が高く、低表面張力のポリ(ブチルメタクリレート)と光応答性分子であるアゾベンゼン基を持つ高分子からなるブロック共重合体(PBMA- b-PAz)を合成し、これを光応答性のない液晶性高分子に数パーセント添加した膜を用意しました。この添加膜を液晶性高分子の等方点温度の約120℃に加熱処理を行うと、PBMA- b-PAzのPBMA層が選択的に表面に偏析し、空気界面を覆います(スキン層)。液晶性高分子の単独膜では、液晶基は基板に対して垂直に配向(ホメオトロピック配向)しますが、興味深いことに、添加膜では水平配向(ランダムプレーナー配向)することが明らかとなりました。この添加膜に直線偏光を照射すると,アゾベンゼンの偏光応答性により液晶高分子の面内一軸配向を任意に制御でき,様々な描画が可能となります。また、このスキン層の形成は、インクジェット印刷を用いても行うことができます。高分子液晶膜にPBMA-b-PAzをインクジェット技術によりオーバーコートし、高分子液晶の液晶温度にて偏光を照射すると、塗布部のみ液晶の面内一軸配向を誘起でき、様々な描画が可能です(富士山を描いた図)。本技術によって、固体基板への配向処理は一切必要とせず、塗るだけで液晶光配向が可能となります。湾曲した部分や様々な基板に塗るだけで液晶配向が可能であり,「液晶配向インク」と呼べるプロセスを提案しました。
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表面偏析と液晶性による高分子ブラシ膜の自己集合形成
エレクトロニクス、再生医療分野の先端デバイス材料分野では、濡れ性や摩擦特性、生体適合性など表面特性はきわめて重要であり、目的に適した材料表面の物質組成やナノ構造を作り上げる技術が必要です。高分子ブラシ構造は、基板面に固定化した開始基から均一に重合成長することで、高分子鎖が表面に対して垂直方向に伸びた特異な配向構造を形成します。近年、高分子ブラシの構造に起因した力学的特性や生体適合性、分子配向特性などの特異な高分子特性が発現することが明らかになっています。
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高分子ブラシ構造は、これまで表面開始リビング重合技術を用いた多段階の合成プロセスが不可欠であり、また、基材もガラスのような無機固体に制限されていました。これに対して,我々は,最近,ポリスチレンなどの汎用性高分子と液晶性高分子をつなぎ合わせたブロック共重合体を、汎用性高分子に少量添加して加熱するだけで、ブロック共重合体が表面に偏析し、液晶の自己集合構造により主鎖が垂直に配向する現象を見いだしました。
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導電性高分子のアッセンブリングとニューロモルフィックデバイスへの展開
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これまでに金属ナノ粒子や有機半導体材料、強誘電性材料など、さまざまな材料系においてマテリアルリザバー素子が報告されており、脳内の神経ネットワーク構造を模倣したネットワーク状の情報伝達経路や非線形の電気特性(高次性や短期記憶など)が重要であることが示唆されてきました。しかしながら、これまでに報告されてきたマテリアルリザバー素子は、ランダムなネットワーク構造が用いられており、その構造と素子特性との相関はいまだ不明瞭であるという課題がありました。
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これまでに発表者らの研究グループは、水面を利用した独自技術である液晶混合展開法を用いることで、有機半導体高分子からなる単分子膜の形成やそのナノ構造(配向や膜厚など)を自在に制御できることを報告してきました。最近では、この液晶混合展開法を応用することで、脳の神経ネットワーク構造を模倣した有機半導体高分子の単分子膜ネットワークの作製を試み、そのネットワーク構造と電気特性との相関を詳細に検討しました(図1)。その結果、有機半導体高分子(立体規則性ポリ(3-ヘキシルチオフェン))とドープ剤(F4TCNQ)からなる単分子膜ネットワーク構造を作製し、その二次元膜密度やドープ割合、膜厚、分子配向といったナノ構造を精密に制御できることを示しました。また、そのナノ構造と電気特性との相関を系統的に調査した結果、二次元的に広がったネットワーク構造を示す単分子膜においてのみ非線形の電気伝導特性が見られ、二次元に制限されているネットワーク型の伝導経路が非線形の電気特性を発現するための重要な因子であることを初めて明らかにしました (図2)。さらに、調製した導電性高分子の単分子膜ネットワークは、非線形性や高次性、短期記憶といったマテリアルリザバー素子に必要とされる三つの特性を示すことも明らかにしています。室温にて、加湿など必要なく、動作する特性を持ち、ニューロモルフィックマテリアルとして期待できます。
本研究で用いた手法は、一般的に広く知られる様々な有機半導体高分子に適用することができる汎用的な手法であり、高分子材料ベースのニューロモルフィックマテリアル開発へ向けた強力な手法になることが期待されます。また、本研究は従来の構造制御がなされていないランダムなナノ構造を有するニューロモルフィックマテリアルとは異なり、用途に応じて自在に構造制御しうるニューロモルフィックマテリアルの新たな設計指針となり、本分野の研究を加速させることが期待されます。当研究室では、金ナノ粒子/半導体高分子複合体や自己ドープ型導電性高分子、イオン伝導性高分子など、新たな高分子材料系を用いてニューロモルフィックデバイスへ展開する試みを行っております。
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