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主要著書・論文概要紹介


専門書著作

『デジタルデバイドとは何か〜コンセンサスコミュニティをめざして〜』2001年1月、岩波書店
ITがインフラとして拡大するにしたがって、社会階層に大きな格差が生み出され、社会的富の分配、社会的機会の分配にまで、階層的な分断を引き起こす可能性がある。それは、単なる社会内の問題にとどまらず、国家間の問題にも広がりつつある。豊富な調査資料をもとに問題の本質を探究しながら情報ネットワーク社会を構想する。

『オンライン教育の政治経済学』2000年5月、NTT出版
本書は、変革期にある日本の高等教育に情報メディア技術がどう活用することができるのか、という単純な問題を出発点としながら、高等教育と情報メディア技術との関係、より一般化していえば、「教育の情報化」がもつ、きわめて複雑な社会文化的、政治経済的側面を解明する。つまり、「教育の情報化」は効果的な学習法・教育法という技術的な問題ではなく、「社会の情報化」と不可分であると同時に、教育がもつ知的資本育成の問題を視野に含まざるを得ない。このような問題認識に基づき、本書は、教育と情報メディア技術との関係性を考えることで、社会の情報化がもつ特質、21世紀における情報ネットワーク社会としての日本社会の方向性、そこでの知的資本が果たす役割を論じていく。

『ネットワーク時代の合意形成』1998年12月、NTT出版
ヒト、モノ、資本、情報の流通が世界的規模で拡大するにしたがって、多国籍企業など国家政府を規模として越える主体が出現し、国家政府の役割は相対的に低下してきているいま、私たちは国家政府に社会的問題を委ねるのではなく、自ら主体的に問題に関与し、合意形成を行う回路を構想するべきであろう。本書では、ネットワークを活用した情報公開法、プライバシーに関わる問題、問題となった通信品位法(CDA)など、アメリカにおける問題を事例として検討しつつ、新しいモデルとして「情報化先進国」の北欧の現状を紹介し、日本の情報化における課題を明らかにする。


普及書著作

『IT2001―なにが問題か―』(林紘一郎、牧野二郎、村井純監修)、2000年9月、岩波書店
「ネット・ガバナンスとは何か?」(49-64頁)
「インターネット・ガバナンス」とは、字義どおりに解せば、「インターネットをどのような主体がいかに管理・運営するか」という問だが、物理的ネットワークとしてのインターネットの管理、統治という問題ではなく、インターネットを基盤として生み出される「サイバースペース」という新たな活動空間をめぐる問題であり、従来の物理的時空間における秩序構造を根底から問い直す契機にもなる。この論考では、サイバースペースが生成することによる社会的組織化、構造化の原理的変化を「ガバメントからガバナンス」という枠組みで捉え、ガバナンス原理の可能性と限界を考察する。
「いまなぜドメインなのか?」(65-79頁)
「ドメインネーム」が何故経済的財と捉えられることになるのか、それは「サイバースペース」という従来の物理的時空間とは異なる構成原理をもつ時空間を構造化・組織化することが政治経済的に求められているからである。この小論では、ドメインネームをめぐる、政府、企業、市民の利害相克と、その政治経済的背景を分析する。


『第二世代インターネットの情報戦略』1997年11月、NTT出版
インターネットを原型とする次世代高度情報通信基盤と、その基盤の上に大きく発展すると期待されている社会的活動空間(「サイバースペース」)をめぐる、ビジネス、政策、制度、社会上の課題と今後の方向性を、欧米アジア各国の動向も踏まえながら包括的に議論する。

『文化・情報・心理』1998年、成蹊大学法学部文化人類学テキスト、紀伊国屋書店成蹊大学ブックセンター
成蹊大学法学部「文化人類学」講義用に書き下ろしたテキスト。文化人類学の概略、文化心理学(「文化」と「心の働き」と考えられる事象との関係に関する多様な理論的・方法論的立場の概説)、医療人類学、メディア人類学、の4領域について解説。


学術論文

(新しいものから順にリスト化しています)
「デジタルデバイド〜世界システムの総体的再編成と日本社会の選択〜」(単著) 2000年11月、『東京都立科学技術大学紀要』第14巻、1-6ページ、東京都立科学技術大学
これまでデジタルデバイドをめぐる議論の多くは、民族集団、学歴、居住地域、年代、年収といった要素による社会集団の、当該社会内における格差として問題とされている。だが、デジタルデバイドは一つの社会内(アメリカ社会や日本社会)における格差の問題にとどまらない。むしろ、デジタルデバイドは、世界システムにおける社会間の問題(システムのどの位置に現在いるかによって、その問題をいかにとらえ、どう対処するかは大きく異なるが)として捉える必要がある。この論考は、情報ネットワークがもつ特質が、どのように世界システム全体の再編成としてデジタルデバイドという問題を析出させることになるのか、その機序に関する素描を行い、日本社会に内在する問題を考える。

「90年代後半における大学生の情報メディア環境変化」(単著)1999年11月、『東京都立科学技術大学紀要』第13巻、17-22ページ、東京都立科学技術大学
社会・生活の情報化に関する、大学生および一般の人々を対象にした社会調査をもとに、90年代情報化の特徴である移動体通信とインターネットについて、一般の人々と大学生との行動比較を行う。

「インターネット利用と情報リテラシーの関係性」(木村忠正、内藤孝一、島田達巳) 1999年10月、『日本社会情報学会第14回全国大会研究発表論文集』195−200ページ、日本社会情報学会
情報ネットワークの急速な広がりは、「情報リテラシー」として包括することができる一群の新たなスキル・知識とそれにともなう社会的問題を生成してきている。だが「情報リテラシー」は、抽象的には研究者間の合意が得られても、具体的には何をどう指しているのか明確ではない。そこで本報告は、(株)NTTデータ・システム科学研究所が実施した調査をもとに、情報を取り扱う能力・意識としての情報リテラシーを操作的に定義し、指標化できる概念枠組みを展開する。そしてインターネット利用と情報リテラシーとの関係について考察を行う。

「地方自治体における行政評価と情報技術戦略について〜ニューヨーク市の事例を中心に〜」(島田達巳、木村忠正) 1999年10月、『日本社会情報学会第14回全国大会研究発表論文集』、141-146ページ、日本社会情報学会
行政評価と情報技術戦略との関係について、ニューヨーク市での調査に基づき、その基本的な情報政策の枠組みと実施システムを分析し、日本の地方自治体にとってどのように方法論的に生かすことができるのかを考察する。

「『次の10件』に気づかない学生たち〜メディアの文法とネットワークへの受動的意識構造〜」1998年、『日本語学』(明治書院)第17巻第11号、188-203ページ
わたしが1995年から実施している大学生に対する情報化に関する調査をもとに、日本の大学生が示す情報化の方向性に潜むいくつかの大きな問題点を明らかにする。とくに、インターネットに対する意識と英語に対する意識が同様の構造をもっていること、そしてWWW(ワールドワイドウェブ)ホームページの「メディアの文法」とコンピュータネットワークへの受動的意識構造との関係について検討を試みる。

「体温の民族誌」1998年、『文化とこころ』(相川書房)第2巻第3号、34-54ページ
「発熱」という生理現象を「社会的経験」として解釈し、出来事として認知するものとして捉え直し、社会制度(保険・医療システム、教育制度など)、文化的装置(体温計、聴診器など)、発熱メカニズムや生理機能に関する心理モデルなどが織りなす多錯的関係性を分析。医療人類学における臨床知研究の一つであるが、「文化的認知モデル理論」という認知人類学的理論からアプローチを試み、その理論的枠組みに関しても比較的詳しく議論している。

「電子メイルを媒介とした社会的行為空間」1996年、『日本語学』第15巻第12号、12-26ページ
「電子メイル」をはじめとするCMCツールが、道具として人々の活動を媒介し「社会的分散認知」システムを創出するあり方を検討し、電子メールが組織における人間関係を解釈するモデルと現実の権力関係との矛盾を解決するものとして果たす機能を分析する。

「サイバーポリティクスとしての電子メイル」1996年、『社会言語学研究会予稿集』第5号、1-14ページ
組織における人々の行動・人間関係に電子メールがどのような影響を与えるかを、実際の組織内LANにおける電子メールの利用をフィールド調査することで、サイバースペースを含めた新たな「日常生活における権力作用空間」を構成するものという側面から検討する。

「社会的認知空間としての診察室」1995年、『「情報・メデイア・空間のデザイン」論文集』別刷、1-14ページ
医療を診察室という物理的空間配置を通して生起する社会文化的認知行為として捉え、「文化的認知モデル理論」という認知人類学的理論からアプローチすることを試みる。

「情報化による地域社会の変容と新たな政治参加形式」1995年、『NIRA政策研究』第8巻第5号、26-31ページ
インターネットにより拓かれる新たな社会的活動空間である「サイバースペース」は旧来の地域社会を変革しつつある。アメリカの政府・議会・政治家たちは、そうした地域社会の変化と新たな空間の生成に対応し、新たな政治参加形式を模索しつつある。その現状を考察。

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