宇宙グループでは、宇宙物理学・宇宙論といった研究分野において、理論的な手法を用いた研究が日々行われています。
私たちのグループの特徴は、一般相対性理論や修正重力理論といった重力の基礎理論に基づいて、宇宙物理学・宇宙論における研究対象へとアプローチしている点です。近年、こうした研究が推進できるグループとして、国内外でも有数の規模を誇るまでに成長しました。この強みを活かしながら、ブラックホールや初期宇宙に関する研究で世界をリードし、多くの研究成果が得られています。
また他大学の研究者との共同研究や研究交流が活発に行われています。
以下では、研究内容の紹介が見られます。
宇宙の「暗黒」を暴く(多田 祐一郎)
宇宙物理学ではしばしば「存在は確実視されているがその正体が不明なもの」を「暗黒」と表現します。
私はそのような謎のうち 3 大とも言うべき問題: インフレーション・暗黒物質・暗黒エネルギーの正体に迫るべく、
理論・シミュレーション・観測データを複合的に捉え研究を行っています。
インフレーションと呼ばれる初期宇宙の加速膨張仮説では、細かな量子ゆらぎが引き延ばされ大規模密度ゆらぎが生成、
これが星や銀河などの宇宙構造に成長すると考えられています。こうした宇宙構造の成長を促すのが、目に見えずしかし
重力源にはなる暗黒物質。これらは共に現在の銀河構造の存在に不可欠とされていますが、インフレーションにより
暗黒物質を作り出してしまう可能性も研究されています。原始ブラックホール (BH) 仮説と呼ばれ、
インフレーションにより非常に濃い高密度領域ができれば直接 BH が形成されそれが暗黒物質として振る舞っているとする説です。
こうした問題に挑戦するため、私はインフレーションに確率解析を応用し大きなゆらぎをも扱える理論を整備し、
またそれを発展させインフレーションのコンピュータシミュレータを制作、スーパーコンピュータ「富岳」を用い
インフレーションのシミュレーションを行っています。原始 BH 形成に伴う背景重力波なども私の研究対象です。
一方暗黒エネルギーは現在の加速膨張を引き起こしているとされる謎のエネルギー源です。
これまでは宇宙定数がその最有力候補でしたが、近年銀河構造や Ia 型超新星の詳細な観測により
暗黒エネルギーが時間変化している (定数でない) 可能性が示唆され、注目を集めています。
私は素粒子論の観点からこのような時間変化暗黒エネルギーの仮説を立て、観測データとの比較検証を行う研究も進めています。